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世界の様子(1)

 

 あれが人間の方にもダウンロードされて乗っ取られるってのは、ゾッとする話だけど。


「じゃあ、ヒューバート様にサルヴェイションを貸してくださったのは、デュラハンさん、なんですか!?」

「詳しい事情まではわからなかったが、“歌い手”の存在が確認できたという報告は受けていた。なので、借用という形でなら近い者に守らせることができると思ってな。それがヒューバートだったというだけの話だ」

「……そう、でしたか」


 じゃあ、あの日感じた『人を救え』という意志は、やはりこの人の。

 いや、あの日だけじゃない。

 何度も感じた、底抜けのお人好しっぷり。

 正義感と責任感、そして信念。

 あれは、きっと全部——。


「サルヴェイションが側にいてくれて、俺はずっと助けてもらっていました」


 石晶巨兵(クォーツドール)の制作にも助言をもらったし、城にいるだけで聖殿派の牽制となり、騎士や魔法騎士たちの心の支えになった。

 なにより、俺にもずっと『人を救え』という意志を与えてくれていたと思う。


「あの時、サルヴェイションを貸し与えてくれて、ありがとうございました」

「あ、わ、わたしも! あの時サルヴェイションのおかげで助かりました。ありがとうございます!」


 レナも俺と同じように頭を下げる。

 少し驚いたようなデュラハンは、すぐに微笑み返してくれた。

 ああ、めちゃくちゃ顔が良〜〜〜〜!

 もう、俺マジで遺伝子レベルの敗北〜!


「あれが助けになったならなによりだ。ルオートニス王国はかなり改革が進んでいると聞く」

「ど、どうなんでしょうか? 俺とレナが婚約した頃よりは、だいぶいいと思うんですが……」


 前世の生活に比べれば、やはりまだまだまだまだ。

 魔法がなければ「原始時代?」ってぐらい文明劣化してると思うんですよ。

 なにしろ調味料がない。

 言うて、未だに調味料素材に関してはまだまだこれからだけど。


「ふむ、石晶巨兵(クォーツドール)の話を聞いたらこちらが把握している世界情勢の話もしておこう。ルオートニスはそろそろ世界に目を向けるべきだ。その余裕が生まれつつある。帝国に食い荒らされる前に、お前はその辺りのことも考えられるようになった方がいいだろう。ジェラルド、アグリットと言ったな、お前たちは俺と来い。石晶巨兵(クォーツドール)について聞かせてもらおう。ヒューバートはトニスから世界について聞くといい」

「え、あ、は、はい? はいっ」


 世界情勢!? マジで!?

 立ち上がったデュラハンに勧められて、俺とランディ、レナは塔の下の方のテーブルでトニスのおっさんに現在の世界について聞くことになった。

 帝国に食い荒らされる、っていうのがものすごく不穏なんですが、どういうことなんでしょうか!


「あの、デュラハンさんに世界情勢を聞けと勧められたんですが」

「ああ、それはそうね。その話も時間があればしておくつもりだったのよ。オタクの国、今、結構〜やばいわよ」

「や、やばいの!?」


 聞けば帝国は国交断絶後も元気に国内でどんぱちやっていたらしい。

 それを勝ち抜いた現皇帝は高齢。

 当然後継問題が発生中。

 もうそれだけでなかなかのげろりんぬ。


「皇子たちは国民の生活を省みてないから、余裕で内戦も辞さない構えなんだわ。そこにつけてヒューバート王子の石晶巨兵(クォーツドール)なんてものが向こうさんに知られれば、標的がこっちになりかねない」

「おえぇ……」


 なるね、間違いなく。

 個人的には石晶巨兵(クォーツドール)で土地を増やして人民のために尽くせよ、と思うけど、話を聞く限りそんな殊勝な皇族はいなさそう。

 次期皇帝として有力なのは五人。

 第一皇女セラフィ——とにかく気位が高く、自分が女帝になるのは当たり前だと思っている。大派閥で、特に後宮は彼女の支配下も同然。

 第一皇子ステゴリー——こちらも自分が皇帝になるのは当たり前だと思っている。軍事方面牛耳っていて、弟皇子を何人も殺している。怖すぎて笑えない。

 第三皇子エドリッグ——文官たちを手篭めにして、政を支えているのは実質この人。脳筋のステゴリーと違って腹黒い雰囲気。

 第四皇女ステファリー——美貌の皇女で、文官武官関係なく信者のような者が多い。主に男の信者。貞操観念が緩いと言われているが、女性の中にも根強い新派がおり、腹黒い雰囲気ではエドリッグを上回る。

 第五皇子クリード——正統派に見せかけたクソゲス野郎。裏で奴隷商売を行っており、奴隷を愛好する層からの絶対的支持を持つ。


「っていう感じでクソしかいねぇんだわ」

「う、うわぁ……」


 ドン引きなんですけど。


「その下にはまともな皇子皇女は何人かいるんだが、上が強すぎて芽は出ないだろうね。なのでまあ、石晶巨兵(クォーツドール)を帝国に売るのはタイミングを見た方がいい」

「わ、わかりました」

「で、他の国だけど——」


 西のミドレ。

 あの国の国土はもう首都のみ。

 すべての国民が滅びを受け止め、自殺者が後をたたないという。


「せ、聖女はなにもできないのですか?」

「今いる聖女はあまり強い力を持っていないんだわ。だからジクジク侵食されててね。もし石晶巨兵(クォーツドール)を提供するならミドレは急いだ方がいいかな」

「っ!」


小ネタ


その頃待ってることになったラウトとパティ。


ラウト「ぶー、なんだよあの人〜。つまんなーい」

パティ「先におやつ食べちゃおうか?」

ラウト「いいの!? パティお姉ちゃんのクッキー大好き〜!」

パティ「ふふふ、いっぱいお食べ〜」


※確実に実の弟より甘やかしている。

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