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魔王デュラハンと死者の村(2)

 

「……嘘を言っているようには見えないが……まさか、本当に?」

「ほ、本当ですよ! 結晶石の中にいたのを、俺とレナが助けたのですが、目を覚ましてからずっとこんな感じで……性格も幼児後退してるみたいで、名前以外の記憶はないんです」

「…………確かに……若返っているようだが……待て、なぜ若返っている? どういうことだ?」

「お、お兄ちゃんっ」

「す、すみません、わかりません!」


 ラウトがすっかり怯えてしまった。

 デュラハンは困惑が拭えないままだが、一応は剣から手を放してくれる。

 いきなり微妙なことになってしまった、どうしよう、これ。


「まさか、到達したというのか? ギア5に……?」

「え?」

「いや、だが、記憶がない? ……、……わかった、一応そちらの言い分を信じよう。取り乱してすまない。だが、しばらくこちらの者を監視につけさせてほしい。姑息なことをする性格ではないのは知っているのだが……いや、せめてあとで話をする時間を設けてもいいだろうか?」

「え、あ、は、はい……まあ……」


 剣は手放してくれたが柄の先端に未だ手のひらが乗っている。

 それほどまでに、ラウトに対して警戒してる……?

 ジェラルドとパティにラウトを預けて、ひとまず俺とレナとランディ、リーンズ先輩と護衛騎士三名で彼らの住む村の中へと進むことにした。


「旦那、あの坊やとお知り合いで?」

「説明しづらい間柄だが、友好的な関係ではなかった。隣にいた青髪の男も知り合いにとてもよく似ていたが……」

「ジェラルドのことですか?」

「ジェラルドというのか? ラウトと仲がいいように見えたが」

「は、はい。気が合うようで」

「気が合う」


 綺麗な顔が引き攣ってる!

 なんだそのこの世の終わりみたいな顔!

 俺そんな異常事態口にしたぁ!?


「……あの少年ともあとで少し話をさせてもらえないだろうか? 乗っ取られていないか確認したい」

「ど、どういうことですか……!」

「すまない、あまり詳しくは話せない。関わるとろくなことにならないからだ」


 それは詳しく聞きづれぇ!

 でも——!


「いえ、でも教えてください。ジェラルドは俺の乳母兄弟。本当に血の繋がった兄弟同然なのです。ラウトも、俺が助けた責任があります。助けた以上、俺はあの子を守る義務がある」

「ヒューバート様……それなら、わたしも!」


 レナが前に出る。

 強い眼差し。

 俺も負けていられない。

 これだけは譲れないと、態度で示さなければ。


「……わかった。あとで話そう。だが、まずは自己紹介だろう。そういえばまだしていなかった」

「あ」


 そ、そういえば。

 村の真ん中、広場があるところでデュラハンは振り返る。


「俺の名はデュラハン。理由はこれだ」

「!? ひっ!」

「きゃああああっ!」


 レナが叫ぶ。

 俺もランディも護衛騎士も息を呑んだ。

 デュラハンは首を——外したのだ。

 漫画で見た時も衝撃だったけど、目の前でやられるととんでもない。

 うぉ、うえ、おううう、言い表せないこの恐怖とか嫌悪感とか色々……おううううおぉぅ。


「ど、どうなっているんだ……それは……!」


 俺の代わりにランディが指差しながら聞いてくれる。

 デュラハンは首を元に戻す。

 すると、首にあった傷跡がわずかに光った。


「部分結晶病だ。俺はかつて爆発に巻き込まれて死んだ。死んだはずだった。……だが目が覚めたらこうなっていたんだ」

「部分結晶病……!? 結晶病なのか、それは!?」

「自分でもどうなっているのかはわからない。色々検査はしてみたが、進行はしないらしい。身体中に同じような亀裂があるし、外しても元に戻せる」

「ええええぇ……」


 信じられないよな。

 俺も漫画で知ってたけど、実際目にすると信じられない気持ちの方が上回る。

 この世界で十四年生きたから余計かもしれない。

 デュラハンの首、そして全身には部分結晶病によりくっついたり取れたりする亀裂がある。

 バラバラのデュラハンの体を繋いでいるのが、結晶病の結晶なのだ。

 おそらく、この世界で結晶病に生かされるたった一人の特別な人物。

 それがデュラハン。


「自分の体を研究しながらこの村を作った。結晶化した大地(クリステルエリア)に浮遊する村——ここは死者の村。口減らしなどで結晶化した大地(クリステルエリア)に足を踏み入れた溢れ者たちの村だ」

「……っ!」

「ヒューバート・ルオートニス。お前は結晶化した大地(クリステルエリア)を元の大地の姿に戻そうとしているのだろう? それは俺の悲願と同じだ。こちらの情報——研究成果も差し出そう。だからそちらも研究成果を見せてほしい。このままこの世界を、終末に呑み込ませるのを止めるために」


 手を差し出される。

 さっき剣を掴んだ手。

 でも、不思議と慣れ親しんだような感覚に襲われる。

 あと、デュラハン、こいつ。


「わかった。俺もあなたと同じ目的を持っている。協力しよう!」

「ありがとう」


 手を握り返すと、微笑む。

 うん、やっぱりだ。


 顔と声がいい! すごく!!


 さすが『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』の正ヒーロー!

 めちゃくちゃ顔がいい! 声もいい!

 これは男の俺も腰が砕けるぜ!

 自分が面食いなのは知ってたけど、声にも反応する性癖だったとは恐れ入る!

 これが正ヒーローのヒーロー力か!

 素直に負けを認めるぜ!


小ネタ


デュラハン「そういえばヒューバートは石鹸や消毒液などを病院に普及させているのだそうだな」

ヒューバート「はい! 病院の衛生環境は大切ですから」

デュラハン「とてもよくやった」撫で撫で

ヒューバート「!? あ、ありがとうございます……?(え、なにこれめっちゃ照れる)」

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