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羊の返り血(4)

 

「思わなくはないが、光炎(コウエン)結晶化した大地(クリステルエリア)で一日過ごして無事だったのは確認済みだ。もっと安定したらセドルコ帝国にも技術提供するつもりだったし別に問題ない」

「ええええええっ!? ど、どういうことなんすかねぇ!? オタクの国、セドルコ帝国には何度も侵略戦争ふっかけられてるでしょうよ!?」


 まあ、そういう歴史もありましたようですねぇ。

 最近は国交断絶してますしねぇ。


「それが気に食わない」

「え」

結晶化した大地(クリステルエリア)は今も少しずつ迫っている。結晶病は、全人類の問題だ。誰一人目を背けていい問題じゃない。人類が一丸となって向き合い、打開しなければならないはずなのに。全員他人事じゃないんだ。情報を出し渋ってる場合じゃない。だから俺は出し惜しみしないよ。……石晶巨兵(クォーツドール)が取っ掛かりになればいい、とは思うけど、まだ結晶化した大地(クリステルエリア)を普通の大地に戻す方法は見つかっていないしな」


 情報がほしい、一つでも多く。

 石晶巨兵(クォーツドール)はまた作ればいいけど、情報は簡単には集まらない。

 別の技術で作られたヒントがあるなら、俺はそれが喉から手が出るほどほしい!


「……戦争になるとはお考えにならないんですかい?」

「セドルコ帝国が石晶巨兵(クォーツドール)を求めて、侵略してくるって? さすがにそこまで馬鹿じゃないんじゃない?」

「わかりませんよ。今の皇帝はともかく、皇子、皇女はなかなか血の気の多い自分勝手なやつが多いですから。あの国は元々侵略国家です。オレは元々あっちを主な活動地域にして、皇族も何人か殺しましたからね。お恥ずかしい話、しくじったのはヒューバート王子が初めてですよ」

「……ふぅん」


 確かに手口はセドルコ帝国の蜂だったりと、あっちに寄りけりだったけど、マジでこの人暗殺者なのか。

 というか——。


「おじさん、セドルコ帝国にも行ったりできるの?」

「おや、他国の情報は高いっすよ〜?」

「なるほど。じゃあそれは追々」

「……本当に肝の据わった王子様だね。オレは高いっすよ?」

「だろうな。でもそれでもいいよ。あと一年か二年もすれば、新しい食糧生産の目処が立つ。そしたら俺の懐も少しは潤うと思うし、石晶巨兵(クォーツドール)の設計図を他国に持ってくのはその後でもいいかなって思ってる。最終的に石晶巨兵(クォーツドール)結晶化した大地(クリステルエリア)を聖女の魔法のように浄化して普通の大地に戻せたらいいとは思ってるけど、まだまだ見通しは甘い。利用できるものはなんでも利用するし、俺はそのつもりだから、光炎(コウエン)を今セドルコに持って行っても二、三年後にはもっと改良されて優秀なやつを売りつけるつもりだから意味ないと思うよ」

「むう」


 しかし、セドルコ帝国の世代交代か。

 確かに陸続きだから警戒しておくべきだろうな。

 レナの結界でも、馬や人間、魔法攻撃は阻めない。

 相手は軍事国家だし、食糧生産の目処が立ったらその情報も売って逆に儲けるか?


「殿下、暗殺者をあまり信用されるべきではありません!」

「そうだよ、ヒューバート。こいつはヒューバートのこと二回も殺そうとしたんだよ」

「まあ、けど失敗したから解雇されたんだろ?」

「ですよ。あれで死なないとか嘘でしょって思いましたよね」


 それはそうだろうなぁ。


「じゃあいいよ、もう。それより俺は晶魔獣を操る魔道具のことを知りたい」

「器がでかくでらっしゃる。ええ、いいですよ。そんなら。でもあの人型魔道具はいりません」

「え、いいの?」

「でかいし動かせる自信がありませんからね。その代わり、王子殿下のご依頼を例の魔道具の製作者に聞いてみます。殿下の最終目的が結晶化した大地(クリステルエリア)を大地に戻すことなら、きっと協力してくれると思いますよ」

「本当か!? ありがとう!」

「あり……」


 ヒクッ、と顔を引き攣らせたおっさん。

 俺なんか変なこと言った?


「ちなみに、ヒューバート王子は結晶化した大地(クリステルエリア)を普通の大地に戻してどうするとか、考えてるんですか?」

「そうだなぁ、結晶魔石(クリステルストーン)の資源として多少は残すべきだと思うよ。でも、人が飢えて死ぬ現状は変えたい。なによりこのままでは、すべての大地が結晶化に呑まれて消えるだろうしね」

「……なるほど」


 そして俺も!

 無事に回避できるかわからないから、可能性は少しでも減らしたいんだ。

 マルティアを見て「可愛いな」程度で済めば御の字。

 でも、もしも物語の強制力とかがあって、俺のレナへの気持ちが冷めたりマルティアに向いたりしたら……ヒィィィィイイイィ!

 生き残りたい。


「ではそのように伝えます。そうですね……半月ほどお待ちください。半月後にまた王子殿下の御前に見参いたしますよ」

「わかった。よろしく頼む」


 できればこのおっさんとの繋がりはこれ以降も継続したい。

 外国の情報はほとんどないから、密偵として。

 でもお金かぁ〜。

 お金……どの世界でもお金は大事だね。


「……本当によかったの〜?」

「うん。それより次はこいつらだな」

「ひっ!」


 おっさんが突如消えて、次に考えるのは馬車の中のコモードル伯爵たち。

 怪我人もいるし、まずは治癒してから城に届けるとしよう。


「羊の返り血のおっさんの方がよっぽど怖かったなぁ」


小ネタ


レナ「ヒューバート様、最近暗殺者に狙われた、などのお話あまり聞きませんけど大丈夫ですか?」

ヒューバート「ああ、毎朝毒は盛られてるけど、お陰で毒耐性レベル5に上がってた! 最近調味料みたいで美味しく感じるようになってきたよ」

レナ「は?」


このあとめちゃくちゃ怒られた。

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