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羊の返り血(1)

 

「やったー! 耐久実験、百点満点だぜー!」

「わ〜い!」

「お兄ちゃんやったー!」

「さすがはヒューバート殿下!」

「おめでとうございます! ヒューバート様っ!」

「やりましたね! ヒューバート殿下!」


 翌日の放課後、ジェラルドの地尖(チセン)に猛ダッシュしてもらって南の国境に来てみると、光炎(コウエン)はそのままの状態で残っていた。

 つまり、結晶化していない。

 結晶化耐性、あり!

 それが立証されたわけだ。


「これで父上にいい報告ができる……もとい、予算がもらえる……!」

「すごい生々しい」


 そうは言うけどな、ラウト。

 王家の予算はびっくりするほど少ないんだぜ。

 レオナルドの養育費なんて、半分くらいメリリア妃の実家から出てるぐらい。

 でもこの石晶巨兵(クォーツドール)が普及すれば、結晶化した大地(クリステルエリア)から結晶魔石(クリステルストーン)を大量に採集できるようになる。

 魔石が増えれば魔道具も増やせる。

 人々の生活は豊かになるから、それすなわち物流と物価に多大な変化……要するに儲かる!

 石晶巨兵(クォーツドール)が量産できるようになれば縦長い建築物を増やして、その中に温室とか畑とか作って食糧生産とかして……え? これは色々イケるのでは……?

 リーンズ先輩大活躍の予感——⭐︎


「よっしゃあ! せっかくだから地尖(チセン)も置いて、光炎(コウエン)結晶魔石(クリステルストーン)採掘して帰るぞ! 石晶巨兵(クォーツドール)の素体数を増やして実験に使う素材にしてくれる!」

「わあ〜! 賛成賛成〜!」


 ジェラルド、複数の結晶魔石(クリステルストーン)や大きめの結晶魔石(クリステルストーン)石晶巨兵(クォーツドール)作りたいって言ってたから、大賛成してくれてる。

 というわけで狙うのはそこそこでかいやつ。

 晶魔獣じゃキッツイやつも、採掘となれば話は別だろう。

 魔法で少しずつ削り出せばきっと上手くいくはずだぜ!


「よーし、[探索]魔法ででっかい結晶魔石(クリステルストーン)を探すぞー!」

「おーぅ!」


 ジェラルドはノリノリだが、他のみんなはあまり乗り気でなさそう。

 なんで?


「殿下、それは後日にいたしましょう。お夕飯に間に合わなくなりますよ」

「ウグゥ……そ、そう言われると……」

「そうです、ヒューバート様! 明日も授業があるんですよっ」

「ううう」

「寝坊して遅刻したら、品行方正なヒューバート殿下の評価に傷がつきますよ! それに、そんな無様な遅刻理由を、レオナルド殿下が耳に入れたらがっかりしてしまうかも!」

「ウグワー!」


 ランディとレナもど正論だったが、パティの一撃が一番効いた。

 せっかくいつでも会えるようになったのに、レオナルドに軽蔑の眼差しで見られるのはイヤだー!


「わかった、今日は大人しく帰ろう……」

「え〜っ」

「ジェラルド、お休みの日にまた来ような。あ、次は東の結界外に行ってみよう、な?」

「東側かぁ。東は確かに行ったことないもんね〜」


 よかった、落ち着いてくれた。

 あーあ、魔石ガッポガッポで大儲けする計画も先延ばしかぁ。

 ん?


「みんな待て」

「「「?」」」


 最近暗殺者も仕向けられないな、と思っていたが、俺の暗殺を諦めたわけではなかったらしい。

 馬車が凄い勢いで近づいてくる。

 殺意と敵意の詰め合わせだぜ……やだなー。


「追いついたぞ、悪魔どもめ!」


 しかしまあ、馬車は急には止まれない。

 なかなかの大きさである馬車は、六頭の馬を繋いでようやく走らせているタイプ。

 ゆっくり停車し、中から若干馬車酔いしている。


「はぁ、はぁ……さ、探しましたぞ、ヒューバート殿下」

「えーと、誰かな?」

「お、お、お初にお目にかかりますかな? ヨレーン・コモードルでございます」

「ヨレーン・コモードル……伯爵か」

「はい!」


 コモードル伯爵といえばバリバリの聖殿派。

 後ろに乗っている数名の者は私兵らしいな。

 ええ? そんなわかりやすい作戦上手くいくとか思ってる?

 いや、勘ぐりすぎかもしれない、落ち着くんだ俺。

 いくら[索敵]魔法にバリバリ敵意と悪意が反応しまくっているからと言っても、さすがに俺たちを迎えにきたふりをして馬車に乗せ、私兵を使って拘束、殺害して結晶化した大地(クリステルエリア)に馬ごと突っ込ませて証拠隠滅とか——そんな雑な作戦、さすがに子ども相手でも舐めすぎだろ。

 ありえないありえない。


「えぇと、それで、伯爵はなぜここに?」

「ええ、それはもちろん、殿下がお出かけになったと聞きお迎えに参りました! 実は、聖殿の新聖大教皇帝閣下が、ぜひ殿下とお夕飯をご一緒したいとのことで!」

「……しんせいだいきょうてい……」


 やばい、また聖殿のトップの名前が新しくなってる。

 足の引っ張り合い好きすぎだろお前ら。

 挨拶したってすげー速度で頭がすげ変わるんだから、いちいち覚えていられねーよ!


「申し出はありがたいのだが、これから帰寮しなければならない。明日も授業があるので、日を改めてもらえないだろうか。聖殿の新たな長にご挨拶する分には、こちらとしても願ったりだがなにぶん急すぎる」

「お夕飯だけでございます! ささ、殿下こちらの馬車へ!」

「いや、だから——」

 

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