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思い出したくないのなら

 

「大漁ですね!」

「うん、国内流通半年分になりそうだ。かなりの収穫だな。レナもたくさん拾ってくれてありがとう」

「い、いいえ、そんな!」


 馬車に木箱の中に入れて積み込む結晶魔石(クリステルストーン)は、近年稀に見る大漁だ。

 中型の結晶魔石(クリステルストーン)もいくつかあるし、騎士団と魔法騎士団にはボーナスだな。

 おかげさまで聖殿騎士の方からの視線が痛ぇ〜。


「ヒューバート様!」

「!」


 背中から感じる痛い視線の方から女の子の声。

 ああ、きっとこれが——。

 ……振り返るのが怖い。

 もしも漫画通りに、浮気してしまったら……。

 いや、俺にはレナだけだ!

 意を決して振り返る。


「あの、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私、マルティアと申します。やっとお会いできましたね」

「あ、ええと、はい。初めまして……」


 オレンジ色の髪と青い瞳の美少女。

 キラキラした眼差しで俺を見つめてくるが、その目の奥には打算が感じられた。

 多分聖殿の方で俺に取り入るよう言われてるんだろうな。

 一見すると清楚そうな見た目だが、胸元が開いていて谷間がよく見える。

 男なのでつい、そこに目がいくのは仕方ない。

 でもすぐレナの方を見る。


「レナが可愛い」

「ひょえ、あ、ヒューバート様!? きゅ、急になんですか!?」

「いや、再確認を……」


 レナの方が可愛いな。うん。ハイ完結。


「っ……ところで、あの遺物すごいですね! 私も乗せてください!」

「わあっ!」

「ヒューバート様っ」


 腕に抱きつかれ、胸を押しつけられる。

 や、やぁらけぇ〜〜〜!

 だが俺は負けない!


「だ、ダメだ! アレはレナを守るために協力してくれてるだけだから」

「レナ様を? なんでですか?」

「それはええと」


 聖女だから、という理由を告げるとマルティアも当てはまる。

 かと言って“歌い手”とやらはよくわからんしな。


「お兄ちゃん!」

「おわぁ!」


 考えていると、反対側からラウトが抱き着いてきた。

 見上げてくる顔がいい。

 顔がいいな。

 え? 顔、良。


「ラウト、危ないだろう」

「ごめんなさーい。ねぇ、それよりもお腹空いた〜」

「ああ、昼食にしよう。携帯食で申し訳ないけど……」

「あ、あの、ヒューバート様!」

「ごめんね、お姉さん。ヒューバートお兄ちゃんは僕たちとご飯食べるから!」


 にこ、と微笑むと、マルティアが「あ、はい……」と頬を染めてラウトを見つめる。

 ジェラルドもどんどん美形になり、女生徒たちからこんな眼差しを向けられることが増えたものだが、ラウトの顔面も凄まじい。

 もはや顔面宝具では?


「ねぇねぇ、僕頑張ったの見てた? 魔法はまだ強いの使えないけど、ワイバーンを一匹落とせたんだよ」

「へぇーすごいじゃないか」

「えへへー」


 マルティアが完全にラウトに見惚れて動かなくなったので、その隙にジェラルドとランディに合流する。

 パティがお弁当を持ってきてくれたので、昼食休みだ。


「聖殿の聖女と接触しておられましたが、いかがでしたか?」

「あー、なんか間違いなく『篭絡せよ』って指示もらってそう」

「見抜かれてるの笑う〜」


 笑ってやるなジェラルド。

 そんぐらいわかりやすかったんだ。

 14歳の女の子も「男を誑かしてこい」なんて言われても、困るよなぁ。

 それを命じる方がどーなの……。

 ドン引きなんだけど。


「逆に取り込んで聖殿を丸裸にするのも一興かと思いますが」

「ラ、ランディ……」


 なんて悪いことを考えるんだ……!


「ラウトは〜? 町から出てみて、なにか思い出した〜?」

「えー? うーん、別に」


 次にジェラルドがラウトに話を振る。

 サルヴェイションを見ても、なにも思わなかったってことか?


「アレ見てもなにも思い出さなかったか?」


 気になってサルヴェイションを指差しながら聞いてみる。

 ラウトはサンドイッチを手に取って、もくもく食べながらぼやー、とサルヴェイションを見上げた。


「見たことはある気がするけど………………あんまり思い出したくない、ような……」

「そうか」


 長い沈黙のあと、表情を顰めるラウト。

 サルヴェイションがどこの所属かはわからないけど、敵対関係だった可能性もある、んだよな。

 そのせいかな?

 だとしたらかなりしくじったこと聞いちまったぜ。


「見たことあるといえばジェラルドの顔も見たことある気がする!」

「ぼく!?」

「ジェラルドを!?」


 千年前にジェラルドが!?

 そんなわけあるか!?


「でもなんか違うような?」

「え〜、なんか怖い〜」

「だ、大丈夫だジェラルド。きっと他人の空似ってやつだろ」


 千年前にジェラルドがいるわけないからな。

 ちょっとビビらせるのやめて〜。


「パティも知ってる人のような気がするんだよね」

「あたしも!?」

「そんな馬鹿な!?」


 ミラー家千年前にも存在してたの——あ、もしかして。


「先祖かな?」

「ぼくと姉さんの?」

「かな?」

「あ、なるほどー」


 千年前のラウトの知り合いの子孫。

 そう考えると、なかなか興味深いな。


「……まあ、けど、そもそもなんだけどさ、ラウトは、記憶を思い出したいと思うか?」


 それを聞こうと思ってた。

 ラウトは忘れた記憶を思い出したいのだろうか?


「……思い出したく——ないかなぁ。よくわからないけど、昔のことを思い出そうとするとお腹が切なくなるの」

「お腹が切なくなる……悲しい、ってことか?」

「うーーーーん。わかんない……でも思い出したくない」

「そうか」


 やっぱり思い出したくないのか。

 千年前の戦争は、ろくなもんじゃなかったんだろうな。

 まあ、戦争はなんだってろくでもないだろうけど。


「じゃあ、無理に思い出さなくてもいいのかもな。俺たちもラウトに『なにか思い出したか』って聞くのやめるよ」

「そうですね、思い出したくないのなら、このままでいいと思います」

「そうだね〜」

「思い出なら新しく、楽しいのをたくさん作ればいいだろうしな」

「……うん!」


小ネタ


ヒューバート「ラウト、マジに顔が良い」

ジェラルド「ヒューバートは結構面食いだよねぇ〜」

ヒューバート「…………」

ジェラルド「え? ぼくの顔になにかついてる?」

ヒューバート「いや、なんにも」


ヒューバート(ジェラルドの顔も大好きなので男女問わず顔が良いのが好きなのか俺は……面食いじゃねーか!)


自覚した。

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