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実動試験(3)

 

「そういえば、リーンズ先輩の研究で作物の生産数が伸びているそうですね。調味料になる作物の生産に着手したって、一昨日行った村の人が喜んでいました」

「そうなのか? よかった……やっぱりリーンズ先輩はすごいな」

「はい。肥料と土の改善、作物ごとの水の量や温度などを細かく調整したマニュアルを作ってくださったそうですよ」


 生花の着ぐるみ着てて見た目はモンスターだけど、やっぱりすげー人だな〜。

 石鹸と洗剤、消毒液も作ってくれたし、材料になるオリーブの木も畑を増やさないと。

 オリーブはいろんなものに使えるから、いくらあっても困らない。

 ああそうか、色々作ってたら確かに土地は足らなくなるのか。

 うーん、難しい問題だな。


「……こうしてみるとうちの国って平屋が多いな」

「え? はい、そうですね?」

「建物を縦に長くすれば、もっとたくさんの人が住めるんじゃないか? 人手が確保できれば生産量ももっと増やせると思うし、口減らしも減らせると思うんだけど」

「建物を縦に? 平民の建物もお城みたいにするんですか?」

「そう。城というか、塔みたいな?」

「な、なるほど!」


 俺は前世、土地の狭い日本に住んでた。

 密集地に縦に長い建物がたくさんあり、マンションや団地には多くの世帯が同居している。

 この高さから見ると、村や町は平家ばかり。

 裕福な家でも二階建てがせいぜいだろう。

 塔のような五階建て、十階建てが増えたら、入れる世帯も増える。

 横がダメなら縦に伸ばせ、だ!

 日本みたいに地震があるわけじゃないんだし、なんでもっと早く気づかなかったんだろう!


「帰ったら父上に提案してみよう」

「はい! そうですね!」

「よし、そうと決まったら今日はたくさん素材を持って帰れるようにしないとな!」


 開けた場所に出てきたし、そろそろいいだろうな。

 でも馬をびっくりさせるから、下を馬車で歩いているみんなに一応報告しておかないと。


「これより、二号機の実動、速度測定を行う。ジェラルド、頼む」

『了解しました〜、ヒューバート殿下〜』


 列の側面を歩いていた地尖(チセン)が前へ出る。

 ジェラルドがみんなに聞こえるように応えて、列から距離を取り、次第に走るスピードを上げていく。

 全長およそ十四メートル。

 それが本気で走ったら——。


『ヒューバート殿下、光炎(コウエン)も走らせてみますか?』

「いや、ランディ。全力疾走した光炎(コウエン)のスピードも気にはなるけど、思い切り動かせるのはジェラルドの魔力量があってこそだ。光炎(コウエン)は操作性に注力してくれ」

『なるほど、了解しました!』


 魔力量……そう、魔力量も課題なんだよなぁ。

 霊魂体(アストラル)化した結晶魔石(クリステルストーン)の大きさに応じて、蓄積魔力量は上がるんだけど、あんまりでかいやつは希少だし失敗した時消滅すると思うとおいそれと実験に使えない。

 かと言って小さい結晶魔石(クリステルストーン)だと、操縦者——使用者の魔力量に依存する。

 光炎(コウエン)地尖(チセン)も一メートルぐらいの結晶魔石(クリステルストーン)での霊魂体(アストラル)化を試してみたい気はするんだが、一メートル級の結晶魔石(クリステルストーン)……お値段にして約一千万ルク。

 ワイバーンの結晶魔石(クリステルストーン)が最大でも四十センチ、五百万ルクと思うと……ワイバーン二体を倒してようやくトントン。

 まあ、それでも大きさが足りないので使えないんですけど。

 一メートル級の結晶魔石(クリステルストーン)を持つ晶魔獣といえばバハームート、ベヒーモス、昼のワルプルギス、クラーケン、海竜、天空竜。

 それより大きいものだと陸竜、ヨルムンガンド、ムシュムシュ、夜の影竜、夜のワルプルギス、嵐竜、邪竜、邪樹竜、がしゃどくろ。

 いやまあ、この辺になると全部絶対遭遇したくない災害級だが……ジェラルドならやっつけてしまいそう。

 実際陸竜を一人で倒してしまったし。


『測定結果出ましたはいー! 約八十〜八十五キロですねー!』


 と、ギギから結果報告が届く。

 そんなものか、と思ったのと同時にそんなに出たか、とも思う。

 あの巨体が全力疾走でそれだけ出れば御の字だろうな。


「魔力消費量は?」

『ん〜、だいたい六百ぐらい。ちょっと疲れたなぁ〜って感じぐらい』

「そうか、少し休んで待っててくれ」

『はぁ〜い』


 ほらな、ジェラルドじゃなけりゃ無理だわ、この検証。

 俺ようやく魔力量ランク9だぞ。

 石晶巨兵(クォーツドール)に乗るようになって、かなり増えたけどさ……それでも全然足りないじゃん……。


「やっぱり魔力消費量は課題だな」

「ヒューバート様」

「なに? レナ」


 どうしようかな、と悩んでた時、レナがすごく興味津々な表情をして、俺を見下ろしていた。

 レナは俺が座ってる操縦席の隙間に片足を乗せて、背もたれに手を置いて立ってる状態。

 なので俺はレナに見下ろされてる状態なのだが。


「その魔力量ならわたしも持ってますっ! わ、わたしもワンちゃんの石晶巨兵(クォーツドール)、乗ってみたいですっ」

「…………。操縦方法を覚えてからね」

「はい!」


 ……まさかのレナが操縦者参戦、だと……。


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