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誕生日パーティー(2)

 

 ……ざわざわとした周囲の反応。

 俺とレナへのヨイショが五割、聖殿不満が四割、ジェラルドヨイショは一割って感じ?

 思ったほどの混乱はないみたいだな。

 この場には父が選んだ貴族が来ているはず。

 中立派と王家派以外にも、中立派寄りの聖殿派が多い。

 中には聖殿とズブズブの家もいくつかあったが、目を逸らして微妙な表情をして顔を見合わせている。

 多分、聖殿との距離を考え始めている顔。

 父上の狙い通りだな。

 特に聖殿との繋がりが濃い家の貴族を招くことで、現在の立ち位置を確認させているのだ。

 今回の一件は俺の思っていた以上の効果があったらしい。

 元々俺の我儘でレナを城に招いたことも大きい。

 まさか本当にレナが国どころか歴史にも類を見ないほどの聖女になるとは、誰も思わなかったのだ。

 彼女の功績は王家から離れていた貴族からの信用を取り戻し、今回の陸竜の一件で聖殿から引き剥がせた。

 みんなが“遺物”と呼ぶサルヴェイションを持ち帰ったこともでかい。

 陸竜を一人で倒してしまうジェラルドと、あんな見たこともない、わけのわからないモノとは敵対したくないのが本音だろう。

 わかる。

 俺も絶対敵対したくない。

 聖殿はいまだに動きがなく、今後どう動くのが正解なのか様子見しているのだろうとのこと。

 まあ、このまま黙ってるわけはないだろうね。

 母上としては、レオナルドの婚約者に例の新聖女マルティアを据えるよう要求してくるのではないか、とのことだ。

 ただ、レオナルドの母のメリリア妃が平民を受け入れるかどうか。

 あの性格では無理だろうなぁ。


「では引き続き励むがよい」

「「ありがとうございます」」


 父上の話も終わり、ジェラルドとその場を離れてようやく一息ついた。

 けど、油断はできない。

 一応名目上は俺の誕生日。

 それになにより、今のイベントでわらわらと擦り寄ってくる系が目を爛々とさせて近づいてくる。

 本当に調子いいよなぁ。


「兄上」

「!」


 だが、そんな目を輝かせていた連中を遮り、近づいてくる幼い少年。

 俺とは違う、赤みがかった金髪とオレンジの瞳を持つあれは。


「え? レオナルド?」


 あまりにも久しぶりで、知らぬ間に立派に成長した異母弟に、無意識に喜びが優った。

 マジ、何年ぶりだろうか。

 城の中でも全然会えなかったし、メリリア妃主催のお茶会や夜会にも招待されない俺は五年? 六年くらい会ってない。

 最初誰だかわからなかったほどだ。

 ええ、すごく大きくなってるな!


「お久しぶりです、兄上。お誕生日おめでとうございます」

「わあ、ありがとう! レオナルドが会いに来てくれたのがなにより嬉しいよ!」


 思わず駆け寄って、抱き締めようとするが思いとどまった。

 なぜならお互いお年頃なので!

 俺は今日13歳になり、レオナルドはもうすぐ11歳になる。

 来年には学院入学の歳だ。

 それなのに、いくら久しぶりに会ったからってハグはいかん。

 レオナルドが俺をどう思っているのか、全然わからないのだから。

 でも、俺としては本当に嬉しい。

 たくさん話したいことがあったのに、いざとなるとなにから話せばいいのか。


「……あ、あの、兄上。久しぶりなので、別室でゆっくりお話しできませんか?」

「え! するする! ……皆様しばし弟との再会を楽しんで参ります。どうぞごゆるりとお楽しみください。よし行こう!」


 王子だし、一応俺の誕生日パーティーなので主役らしく離席する際は挨拶しますよ。

 ジェラルドとランディ、護衛騎士が一人俺とレオナルドの後ろをついてくる。

 レナは……俺の代わりにパーティー会場に残ってくれるようだ。

 まあ、レナに話しかけるやつらはだいたい今まで聖殿に傾倒していた連中だろうけどな。

 控えの部屋の一室を借り、そういえばとレオナルドの周りを見る。


「レオナルド、護衛騎士は連れてきていないのか?」


 俺のように嫌われているのならわかるが、レオナルドはメリリア妃にそれはもう溺愛されている……イメージだった。

 それなのに護衛が一人もいないなんて。


「僕には、いません」

「そうなのか?」


 騎士団も人手不足だからなぁ。

 けど、それでも少し前の俺みたいに護衛が誰もいないのは気になるな。


「母と離別しようと思います」

「へ」


 座ってからの第一声に度肝を抜かれた。

 まさかどストレートに、最初っからブッ込まれると思わない。

 罠かと勘繰ったほどだよ。

 でも、レオナルドの表情はこわばっている。

 あたりをキョロキョロ気にして、護衛騎士と目が合うと俯いてしまう。


「いきなりだな……なにかあったのか?」


 と、聞きつつ毎日なにかしらトラブルには見舞われているだろうな、と半笑いになりかける。

 十三年にも及ぶ王子教育でなんとか耐えた。

 誰か俺にご褒美をくれてもいいのよ。


「……母が、マリヤに怪我をさせたんです」

「マリヤ?」


 絞り出すように告げられた名前には、申し訳ないが心当たりがない。

 どちら様だろうと思っていたら、レオナルドの乳母の娘さんなんだそうだ。

 俺で言うところの、パティみたいな感じか。

 そのマリヤさんは、メリリア妃に子育てを丸投げされており、家庭教師の手続きやら生活面のあれやそれやを一手に引き受けた母の健康を案じて、城に召し上げられた比較的年の近い女性。

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