誕生日パーティー(1)
どうも、13歳になりました。
『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』の悪役王子、ヒューバート・ルオートニスに転生した俺です!
今日は城で俺の誕生日パーティーが行われている。
万年金欠火の車王家のくせに、パーティーなんか開催しなくていいよ!
父上も母上も誕生日パーティーしてないのに、なんで俺だけ!?
それに今までまともにこんな大規模パーティー開催したことないじゃん!
いりません!
そんなお金あるのなら、民に回してください!
……俺はそう主張した。
だが父上に「いや、お前の誕生日パーティーはついで。名目上、お前の誕生日パーティーってことにして人集める。ジェラルドに勲章授与とか、褒美を聞かなきゃいけないから」って真顔で言い放たれたのでスン……と押し黙りました。
了解です父上、そういうことならやっちゃってください。
とはいえ、一応俺から何度も「ジェラルドー、陸竜討伐の褒美はなにがいいー?」って聞いたんだけど「研究していたいなぁ」とリーンズ先輩みたいなこと言い出したので、俺はすでに嫌な予感がしている。
「レナのドレス姿が眩しくて直視できない……」
「頑張って、ヒューバート」
「頑張ってください、ヒューバート殿下!」
エスコートは上手くできたけど、俺は何回ヤムチャればいいんだ?
パーティー会場でケーキを嗜み、嬉しそうなレナの可愛さが天元突破している。
なんだあの幸せそうな笑顔。
もう可愛いオーラがすごくて俺は目が何回も破裂していると思う。
心臓がもたない。
父上早くジェラルドに勲章あげて、褒美聞いて。もたない……。
「では、パーティーの最中ではあるが、先日の陸竜討伐に関して皆に紹介したい者がいる」
と、父上が玉座から立ち上がり、両手を広げる。
ま、待ってましたぁ!
「皆も知っての通り、先日我が国は陸竜が現れた。たまたま国境に視察に出ていた我が子ヒューバートが陸竜及び中型晶魔獣の討伐を指揮。その中で、陸竜を一人で倒した者が現れた! ジェラルド・ミラー子爵令息!」
父が「前へ」と頷くと、ジェラルドは思い切りサンドイッチを口に入れた瞬間だった。
嘘だろお前、この話の流れで自分が呼ばれると思ってなかったの!?
嘘だろ!?
あわてて咀嚼し、俺の礼服の裾を掴むと思い切り不安そうに見下ろされた。
え? 一緒に来てって言ってる?
……い、いや、でもよく考えるとジェラルドだって13歳になったばっかり。
13って言ったら、前世の中学生だもんな。
「わかったよ」
仕方ないなぁ、と一緒に前へ出る。
父の側まで来て膝を折って頭を下げた。
「素晴らしい功績である。我が国始まって以来の大偉業と言っても過言ではない! ここに褒美を取らそう! 望みをなんでも申すが良い!」
「ありません。その代わり、どうぞ我が主人を今後もお引き立てください」
「!?」
ぎょ、とする。
俺だけでなく、父上も母上も周りの貴族も。
「……我が息子を主人とし、その主人を引き立てることを願う、と?」
「はい。ぼくはかつて結晶病で死にかけ、ヒューバート殿下とレナ嬢に救われました。8つの頃です。……幼い8つの子どもにも関わらず、お二人は僕を救うために尽力してくださいました。あの日からこの命もなにもかもすべて、お二人に捧げると決めています。僕の成したことで人のため国のためになることはすべて殿下の功績です。ぼくの命はあの日、殿下たちのおかげで繋がったのですから」
「ジェラルド……っ」
そこまでの覚悟でいてくれたなんて。
でも……。
「いや、でもちゃんと望みを言わないと、それでなくとも王家の威厳がアレなんだから、王家が国を救った英雄の願いも叶えられないヘボだと広まるだろうがっ。なんでもいいからなんか言え、欲しいものとかしてほしいこととかっ」
思い切り小声で言うと、ジェラルドが「えー」と困った顔をする。
そんな顔してもダメです。
王家のためにも願いを言えええええぇ!
「あ、ええと〜〜〜、で、ですがその〜、い、今ぼくが殿下が研究塔で行なっている研究を、どうかもっとお手伝いするのをお許しいただければと〜……」
「例の研究か! ああ、あれは我が国のためになるものだ。そうか、よかろう。どうかこれからも息子を支えてやってくれ」
「はい、喜んで!」
満面の笑顔で答えられ、逆に俺がいたたまれない恥ずかしさに苛まれることになった。
父と親友のそういうやりとり、俺のいないところでやってもらえませんかねぇ!
「やはりヒューバート殿下は素晴らしいな。あの御年で、家臣にああも慕われて」
「ああ、レナ様も聖殿の聖女と違って毎日各地を回り、結晶病患者を治療し続けているという」
「そういえば聖殿の聖女の話はとんと聞きませんな。どなたか聖殿と仲のいい方、聞いておりますか?」
「いえ、自分は最近聖殿への出資を打ち切りましてね……やはり聖女はレナ様の方がいい」
「ヒューバート殿下の婚約者ですからね」
「ええ、それに殿下が見つけた例の遺物、レナ様を聖女と認めて現れたとか」
「なんと、そうなのですか!」
「私も聖殿への資金提供は打ち切りますかな……」
「それがいいですよ」