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未知のロボット(2)

 

「! ヒューバート様、手が!」

「え?」


 レナ、歌をやめてしまった。

 え、でも、レナの言う通り手を見ると、末端が元に戻っている。

 レナは歌ってないのに。


「やっぱりこのロボットの中は……安全、なのか」

「もしかして、それでこの石晶巨兵(クォーツドール)みたいなものに?」

「まあ、あとあの馬型晶魔獣から逃げたかったから」

「そ、そうですよね」


 でも困ったな、どうするんだこれ?

 ボタンとかいっぱいあって、どこがスイッチだかさっぱりわからない。

 それに、エネルギーってやつ。

 普通ロボットって動かすのにエネルギーが必要だろ?

 千年前の世界ってなにをエネルギーにしてロボットを動かしていたんだろう?

 ……でも、やはりこのロボット、他のロボットとは違う気がする。

 ギギに見せてもらった『陸島』『彩雲』は、俺たちが集めてきた素材の中にその一部があった。

 破壊されて晶魔獣になっていたのが、倒されて元の鉄塊に戻っていたのだ。

 変な話だが、千年前の兵器が晶魔獣になって人類に襲ってくる。

 ある意味、未だに兵器は“人を殺すために”働き続けているのだ。

 でも、このロボットは違う。

 人を守ったのかのような姿のまま、晶魔獣にもならずに元の姿を保っている。


「ヒューバート様……」

「とりあえず結晶化が収まったのは喜ぼう。……このロボット、動かせないかな……」


 適当にぽちぽちボタンを押していると、突然上から目の前にモニターが降りてきた。

 文字がポツポツ自動で入力されていく。

 脳裏をよぎったのはギギが言っていた『クイーン』だ。

 やばい、もしもこのロボットがクイーンというAIのウイルスに侵食されていたら?


『現在地情報を取得しました。

 現在地情報より言語を大和に設定しました。

 歌い手の存在を確認しました。

 登録者より歌い手の保護を最優先命令に設定しました。

 登録者より借用許可が出ています。

 借用者登録をしますか?』


「…………。借用許可? と、登録?」

「ヒューバート様は文字が読めるのですか?」

「あ、ああ。なんとか、ギリギリ」

「す、すごい……」


 でもあんまりのんびりしていられない。

 下の方からあの馬の興奮した声が聞こえる。

 モニターの文字を数回確認するが、とりあえず——歌い手って、レナのこと、だよな?

 他に歌を歌う人間はここにはいない。

 レナを守るために、このロボットの持ち主がこのロボットを好きに使えって言ってる?

 ありがたいんだけど、操縦しようにも操縦方法もわからないし、なにより手足の長さが足りないんだよなぁ!

 大人用だろ、当たり前だけど!


「くそ、お、音声ガイダンスとかないのかよ!」


 叫ぶと、モニター画面が切り替わる。

 丸い波紋のようなものが大きくなったり小さくなったり。

 これ、音声を拾ってる?

 そういえばさっきモニターに『現在地情報を取得しました。現在地情報より言語を大和に設定しました』ってあったから、研究塔のように言語を検索してる、のかな?


「えっと、現在クリステル歴853年、弥生月の23日目。国名はルオートニス王国。王政。国王の名前は第四十八代目ディルレッド・ルオートニス国王陛下。俺はその息子でヒューバート・ルオートニス。一緒にいるのはレナ・ヘムズリー」

「ヒューバート様? 急にどうされたのですか?」

「多分、機械が言語を解析してるんだと思う。たくさん喋れば機械も解析が進むと思う」

「そ、そんなことができるんですか?」

『——————承*認し§マシ%。音≠ガ▼≒ンス※■変⇔—◆マス』


 逆に聞き取りづれぇ〜〜〜!

 でもやっぱり千年前の機械はすごいな。

 すぐにここまで解析して合わせてくる。


「ええと、現在俺とレナは近くに埋まっている要救助者を結晶化した大地(クリステルエリア)から救出するために国境の側まできて、救助活動を行なっていた——」


 とにかく早めにこのロボットと話ができるようにならなければ。

 ということで、これまでの経緯を整理して聞かせることにした。

 自分が落ち着くためにも必要だと思う。

 外はどうなっている?

 ジェラルドがいれば陸竜は問題なさそうだが、あのままだと俺、死んだことになりそうじゃん?

 早く帰りたい……レナが側にいても、結晶化しないロボットの中にいても、ここが結晶化した大地(クリステルエリア)の中にいるのがもう不安でたまらない。


「以上のことにより、我々は今ここにいる」

『——————』

「と、止まってしまいましたね。こ、壊れてしまったのでしょうか?」

「いや、多分解析中なんだと思う、ぞ」

『$ # ・* 〆 ≠ × ※ ‾ ∫ ∴ ▽ ——⁂ Å ◆%《 ⊃ ヽ 〓 〉▱』


 ……な、なんて?

 本当にぶっ壊れました?


『一部の解析データを応用し、人格データを引用。サポートガイダンスを開始します』

「ふぁ!?」

「きゃっ!」


 急にものすごく流暢に喋り出したぁ!?


『現状の説明を感謝する。大部分が機体の保有データと異なるため、相当の年月を休眠していたと推測。最新データへの更新に時間を要するものであるが、現在“歌い手”レナ・ヘムズリーとヒューバート・ルオートニスは危機的状況であると判断。ヒューバート・ルオートニスへ、登録者への機体借用を推奨する』




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