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国境の要救助者と暗殺者(3)

 

 西の国境付近。

 かつて西方諸国の入り口、ミドレ国はここより西にあり、結晶化が進んだことにより国交は強制的に断絶した。

 白や黄色やピンクの鉱石のように生えた儚い結晶。

 この向こう側に、かつての西方諸国がいくつ残っているのだろう。

 ところで、これを見ながら思うことが一つ。

 研究塔にあった、擬似歩兵前進兵器——彩雲。

 あれ、どう見ても飛行機の発展系兵器、だよな。

 鳥は結晶化を免れる、って研究結果を見たことがあるんだが、どうして飛行技術までなくなってしまったのだろうか?


「……浮かせばいいのでは?」

「殿下? そろそろ救出が始まりますよ?」

「あ、ああ、そうだな」


 さて、レナの話を聞き、どうやって結晶化した大地(クリステルエリア)内にある穴の中の結晶体の中にいる人間を助けるのか。

 まず、計画の要は当然だがレナだ。

 レナが穴の中まで魔法で浮かせた布とロープを持っていく。

 水晶の中から要救助者を助け出し、布で巻いて合図をすると、魔法騎士とジェラルド全員で要救助者を浮かび上がらせてレナに引っ張って持ってきてもらう。

 色々方法を考えたが、これ以上安全な方法は思い浮かばなかった。

 護衛騎士とランディは晶魔獣強襲に備え、俺はなんもしない担当である!

 嘘です、一応名目上は現場指揮です。

 でも多分なんの役にも立たねーよ。

 俺だぜ?

 あとは騎士団、魔法騎士団員を分割。

 片方には要救助者の容態を確認後、然るべき処置を行うため王都へ帰還。

 数名を残して、晶魔獣狩りを行う。

 目的は結晶魔石(クリステルストーン)

 小さなものから大きなものまで、とにかく魔獣にたくさん出てきてもらいたい。

 出てきてもらいたいが、怪我したら結晶化してしまうのでレナには近くで待機してもらう。


「というわけで作戦開始!」

「「「はい!」」」


 リーンズ先輩に用意してもらった結晶化耐性が微妙に高い、ソドルの葉を加工した布。

 結晶化耐性があるんですか!と、驚いたが「結晶化進行が気持ち遅い。一秒間くらい」という、本当に微妙なもの。

 でも、もしかしたらその一秒が命運を分けるかもしれないしね。


「レナ〜! 無理はしなくていいからなー!」

「はーい!」


 この計画はレナありきだ。

 疲れて動けなくなったりしたら、救出計画そのものが破綻する。浮かせる布とロープも結晶化しないように、魔法騎士団員たちが細心の注意を払いながら穴の中へ通していく。

 穴の縁に入れば、たちまちロープも布も結晶化してしまうからだ。

 レナの『聖女の魔法』で元に戻せると思うが、ロープを伝って結晶化が結界内にいる俺たちの方にまで届くこともあり得る。

 結晶病、改めてヤバすぎ。


「レナー! ロープと布は穴の上に待機させておくー! 先に中の人を結晶の中から出せるかー!」

「わかりましたー!」


 でも、具体的に結晶の中から人を取り出すってどうやるんだろうな?

 結晶の中に人間がいるってのも、どういうことだよって感じだけどさ。

 ……周りが結晶化しても人間が結晶化しないって、やっぱり耐性があるからってこと?

 じゃあ、中にいるのはやはり“聖女”なのか……?

 もし生きてて、聖女だったら『王家の聖女』認定しちゃおうかな……もちろん元気になってから。


「殿下」

「ん? どうしたランディ」

「なにか、変な音がしませんか……? カンカン、というか、コンコン、というか……とても小さな音なのですが……あちらの方から」

「え? んん?」


 ランディが言うので、指差された方向へ[索敵]魔法の効果範囲を広げる。

 五メートル、六メートル……十メートル。


「! 対魔法の効果……!」

「先行して確認して参ります! 三名ほどよろしいですか!」

「頼む!」


 俺が近くにいた騎士三人に目配せすると、ランディと共に俺が指差した方向へ駆け出す。

 だいたい十メートル離れた場所に何者かがいる。

 対魔法で気配を隠し、長距離魔法攻撃が飛んできても初級から中級ならば凌ぐことができるだろう。

 魔法に優れているということは、この間の自動防衛魔法持ちの賊か?

 だとしたらランディと三人の騎士だけでは少ないかもしれない。


「この前の賊かもしれない。誰か、二人ほどランディたちのサポートに回ってくれ!」

「自分が行きます!」

「私も!」


 魔法騎士二人……多分[浮遊]が使えない者たちだろう。

 助かる。

 感知したのは一人だから、四人の現役騎士とランディが行けば大丈夫だと……。


「? あ? え? なんっ」

「どうしたの〜、ヒューバー……なんか地鳴りしない?」


 慌てて馬車の御者台に飛び乗る。

 そこから[遠視]で見えたのは怪物。

 ワイバーンが小鳥に見える、超巨大な——陸竜。

 しかも、他にもウルフやボア、ベア、デール、獅子系の晶魔獣までおまけのようについてくる!

 あのでかいのと合わせると、五十匹近い!


「まずい! 大群だ……全員、救助作業中止! 陸竜を含めた五十近い晶魔獣が接近している! 迎撃用意!」


 [浮遊]で穴の上に待機させてあったロープと布を回収させ、出し惜しみなしで魔法騎士は先制攻撃!

 防御力の低いデール種やウルフ種はかなりの数を減らした。

 でも、足は遅くとも陸竜はマジでやばい!


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