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お見舞い聖女と(1)

 

「ヒューバート様、お加減はいかがですか?」

「ああ、怪我は治ってるから、だいぶいいよ」


 お茶会から五日経った。

 ビーに刺された背中の傷は、城の魔法騎士と医療魔法師により徹底的に解毒洗浄と治癒が繰り返されようやく痛みがなくなったばかり。

 いやぁ、セドルコポイズンビー、舐めてたわ。

 さすが暗殺特化毒蜂。

 しかも刺されたのが背中——脊髄の側だったので、危うく下半身付随になるところだったらしい。

 当然童貞の卒業も永遠にできなくなる。

 それを聞いた時、心の底から安堵した。

 今までで一番冷や汗かいたかもしれん。

 幸い場所が脊髄からずれていたのと、リーンズ先輩が適切な応急処置の解毒薬を適量飲ませてくれたので、後遺症も残らない、とのことだ。

 あとから聞いたのだが、リーンズ先輩が作った解毒薬はリーンズ先輩が五年前から研究していた『リリスの花』も入っていたらしい。

 リリスの花は解毒薬として一般的に使われる材料。

 リーンズ先輩の五年にも及ぶ研究で、解毒効果を二倍に高めたものが使用された。

 お茶会をした庭にはリーンズ先輩が研究のために、品種改良したリリスの花やデュアナの花、ソランの花などが植えられており、研究塔の外の普通の土でも問題なく生育可能か、効果が出るかなどが試されていたそうだ。

 この辺、学院からも裏が取れたのでマジ、俺強運。

 なにより植物に詳しいリーンズ先輩が、あの場に来てくれていたのが幸いした。

「お茶会がある」と招待しておかなければ、先輩はあの日あの場所の側のサンプルを確認しに来よう、とは思わなかったと言う。

 ジェラルドと俺、グッジョブすぎる。

 しかし、それでも刺したモノがモノだけに一週間は絶対安静を言い渡されてしまった。

 暇なのでめちゃくちゃ座学の勉強してたら、侍女たちに本全部没収されて暇していたところ。

 レナがお見舞いに来てくれて色んな意味で嬉しいです!


「レナこそ大丈夫か? なんかめちゃくちゃ光ったって聞いたけど」

「うっ。お、恐れ入ります……」


 俺もうろ覚えなのだが、レナが叫んで光ったような気はする。

 そしてそれは気のせいではなかったらしい。

 俺が倒れたせいで、レナはパニックに陥り、『聖女の魔法』を暴走させたそうなのだ。

 ジェラルドの話だと「光の柱みたいなのができた」ってくらいには派手に光ったんだって。

 なにそれちょっと俺、いろんなものを見逃している。


「でも、それがきっかけになったのか、広範囲治癒を覚えました。ヒューバート様がお休みの間、患者さんを一ヶ所に集めて一回で治癒できるようになったんですよ」

「え! 聖女ってそんなこともできるのか!? すごいね!」

「はい。歴代の聖女様にも類を見ない魔法と言われました。小さな村なら患者さんを移動させることなく、私が村の中心で祈れば治せるみたいです。……その分魔力が空っぽになるんですけど……結界の強化も同時にできるみたいなので、わたし、これからももっとたくさんの人を助けていきたいと思います」

「ワ、ワァ……」


 き、聞きしに勝るチート聖女……!

『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』でも、レナは国一番の聖女。

 なにしろ主人公なので、チート聖女だった。

 だが、それは18歳のレナの話。

 今、12歳だぞ?

 もう『救国聖女は〜』のスタート時点のチートっぷりを持ってるんじゃないか?

 それとも漫画の中のレナも、12歳の時点でチート聖女の能力に目覚めていたのだろうか?

 村一つを覆うほどの治癒魔法。

 それと同時に結界の補強まで行える、二つの効果を持つ。


「その魔法、名前はあるのか?」

「え? いえ、聖殿からは『そんな聖女の魔法はない』と……」

「ではレナだけの特別な魔法なんだな。だったら余計に、魔法名をつけた方がいい」


 その方が必殺技っぽくてかっこいいし。


「魔法名、ですか?」

「そう。聖殿の聖女との差別化も図れる」


 必殺技っぽくてかっこいいし。


「レナだけの特別な魔法って感じがするだろ?」


 必殺技っぽくてかっこいいし!


「わたしだけの……。では、ヒューバート様が名前をつけてください」

「俺!?」

「はい。これから何度でも使いますし、その度にヒューバート様のことを思い出せるように。ヒューバート様が側にてくれるようで、わたしはきっとすごく頑張れると思うのです」

「うっ!」


 心臓が!

 破裂したか!?

 今度こそキュン死したか、俺!?

 も、悶絶する可愛さ。

 手を組み、祈るようなまさに聖女の姿にうがががが、となる。

 漫画の中のヒューバートは頭がおかしい。

 こんなに可愛くて健気な女の子を、浮気して捨てるなんて。

 いや、落ち着け、ドアの横で気配を消していたパティが半目になって呆れた顔してる。

 その眼差し、俺を現実に引きずり戻すからやめてほしい。

 俺はまだその眼差しをご褒美と思えるほど成熟していないので普通に傷つく。


「……そ、そうだな……それじゃあ……」


 っていうか魔法名決めるの、よくよく考えてめちゃくちゃ難しいな。

 治療と結界補強。

 回復とバフって感じだよな。

 うーん、それじゃあ——。


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