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国境の出会い(1)

 

 さーて、休日です。

 入学から五日。

 本日は平民たちの護衛と称して結晶化した大地(クリステルエリア)に面する、西の国境付近にやってきた。

 ぶっちゃけ、国境付近にここまで近づいたのは生まれて初めて。

 結晶化した大地(クリステルエリア)を、ここまで間近で見たのも初めて。

 ひとたび足を踏み込めば、瞬く間に人体は結晶化して死ぬ。

 まさしく、死の大地。

 と言っても、危なすぎるので百メートルくらい離れた場所にいまーす。


「どうだ? ジェラルド」

「興味深い素材がたくさんあるよー!」


 ホクホクっといつになくいい笑顔のジェラルド。

 結晶化した大地(クリステルエリア)の辺りには、討伐された晶魔獣の死骸がほうちされている。

 それらは時間が経つと、素体になったモノに戻るらしいのだ。

 で、ギギの話を聞いてもしや、と思っていたがやはりそうだった。

 ジェラルドが集めている金属片は——ロボットの破片だ。

 指先や、武器の一部、今拾ったのはロボじゃなくて戦車の大砲の部分だろうか。

 今ではもう、それがなんなのか誰もわからないんだろう。

 俺は前世の知識があるから、なんとなくそうなんじゃないかなって思うけど。

 現物を見たことはないから、正直自信がないんだが。

 それでも、SF漫画やアニメや映画に出てくる武器とか兵器にそっくりなんだよ!

 ——ギギが言っていたな。

 この世界は、この国があった場所は、戦争をしていた。

 敗戦して、ギギがいた研究塔は停止されていたのだと。

 兵器や武器の残骸は、“タイワ”という国のものか、それとも攻め込んできた敵国のものか……。


「…………」

「ヒューバート様、どうかされましたか?」

「あ、レナ。いや……ちょっとギギが言ってたことを思い出してたんだ」


 平民たちは少しずつ結晶化した大地(クリステルエリア)に近づき、晶魔獣を探している。

 俺とレナもそれについていき、サポートをする役目。

 まあ、俺らの前、平民たちの後ろには近衛騎士が二名と騎士団から五名の騎士、魔法騎士団からも二人の魔法騎士が派遣されているので危険はない。

 さっきチラッと小さいネズミやヘビの晶魔獣が現れたが、秒殺だった。

 得られた結晶魔石(クリステルストーン)は、晶魔獣発見者のもの。

 まあ、全然足りないんだよ。

 デカいのが一匹出てくれれば、結晶魔石(クリステルストーン)を砕いて全員に行き渡らせることもできるけど、あんまり危ないのはねぇ?

 それに、今日倒してもデカい素材が手に入るのは数日後。

 うーん。


「そういえば、ギギはウイルスがどうとか言っていましたよね……」

「うん……」


 それもあるんだよなぁ。

 ギギが言うにはコンピューターウイルスの(たぐい)

 あの兵器の数々……俺の前世よりも科学技術が進んでいたのも鑑みるに、兵器は当然AIやコンピューター制御に頼っていたはず。

 それがウイルスに冒されていたのだとしたら、どんなにすごい科学力を誇っても、ウイルスに侵食されて乗っ取られたらひとたまりもない。

 戦争していた? なにと?

 もし、そのウイルスをばら撒く“クイーン”とかいうAIだとしたら?

 便利な生活に慣れきった人類が、その技術力を捨てることと滅びることを天秤にかけたなら?

 ……ヤバい、マージでSF映画の世界設定じゃん……。

 けど、それならこの結晶化現象はいったいなんなんだろう?

 “クイーン”とかいうウイルスを封じ込めるための処置?

 いや、どうやって?

 それに、聖女の魔法——歌で結晶化が治ったり阻めたりするんだし、無関係かも……。

 んーーー……、いや、でもまあ、ギギの言うウイルスに気をつければ、過去の兵器素材を再利用するのは別にいい、よな?


「それにしても、ジェラルドのやつ手当たり次第に[空間倉庫]に放り込んでいくな」

「ふふ、楽しそうですね」


 [空間倉庫]は無属性の魔法で、ジェラルドが開発したチート魔法。

 異世界チートモノにありがちな、『なんでもいくらでも入るし時間が止まっていて食べ物を入れても腐らない』アレだ。

 五メートルくらいありそうな鉄塊も、ぬるん、と入ってしまう。

 素材集めが捗っておられる。


「はぁ……けれど、わたしが聖女に認定されていれば、結界の修繕もできたのですが……」

「構わないからやってくるといい。手柄なら聖殿にくれてやればいいんだから」

「! よろしいのですか?」

「だって結界は国のために必要不可欠だし、レナは“王家の聖女”なんだから問題ないよ」

「あ……ありがとうございます! 行ってきますね!」


 事前投資、事前投資〜。

 レナが結界のところまで駆けていくのを、手を振って見送る。

 結界が強化されたら強い晶魔獣は襲ってこれなくなるだろうけど、ドラゴンみたいなデカいやつが現れたらシャレにならないし、別にいいだろう。

 俺?

 俺は絶対結界に近づきたくないぜ!

 自分の死因が目の前にあるんだからな!

 死にたくない!

 生き残りたい!


「あれ」


 だが、俺の判断は遅かった。

 レナも結晶化した大地(クリステルエリア)から聴こえてくる鳴き声に気がついたのだろう、立ち止まる。

 騎士たちが陣形を支持し合い、ジェラルドが[空間倉庫]を閉じて立ち上がった。

 凄まじいスピードで、空から強襲したのは図鑑に載っていたドラゴン種——ワイバーン!


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