創世神再誕(2)
『ギア・フィーネシリーズの連結を開始』
「了解。開始する」
ファントムの指示に従い、初期シリーズから連結を開始。
五人全員の意識が繋がる。
その時、デュレオの方から音源が変わる。
なにそれ、聞いたことのない曲のイントロなんですが?
『兵器として生まれた怪物たちに、同じ怪物の俺から歌の祝福を贈るよ。ねえ、“歌い手”たち?』
『はい。わたくしたちもこの日のために練習しましたのよ』
『絶対成功させて、帰ってきておくれ』
「わたしたちの心の声で、皆さんを守ります」
「レナ——」
四人の“歌い手”の歌声が重なり合う。
なんだ、これ、今までの歌と全然……桁が違う……!
「後続機シリーズの連結も開始」
『ギア・フィーネシリーズ、全機の連結を確認。俺とナルミもサポートで連結に加わる。始めるぞ』
「うん!」
ファントムとナルミさんの意識も繋がってきた。
ファントムは依代ともすでに連結済み。
後続機たちもギア4への到達——うん、確認。
拡がり続けるギア・フィーネから放たれる光。
神力の光。
“歌い手”たちの歌声と、連結したことによる繋がりで——数千キロ離れた場所にいるルーファスの六号機とランディの七号機と、繋がる。
神力の光が繋がったので、どんどん意識が一つに交わり始めたのがわかった。
ルーファスが今までどんなふうに生きてきたのか。
ランディの人生、結構楽しく生きてきてくれたんだな。
あ、ラウトとディアス。
……二人の人生を見て、感じて、あまりにキツくて吐きそうになった。
俺がこうして見てるってことは、他のみんなにも俺の人生が見られて感じられてるのかな。
シズフさんとトニスのおっさんとも重なった。
この二人の人生もキツイな。
シズフさんのは肉体的にしんどいが、トニスのおっさんも精神的な——殺しに慣れていく過程がキッツイもんがある。
ジェラルド——は、お前は本当に能天気に生きてたのか。
でも、ミレルダのことを守ろうとして一皮剥けたのがわかる。
ええ、どこまでもかっこいいなお前。
さすが俺のきょうだい。
みんなの人生、それぞれ大変でつらくて。
でも、それなりに支えがあり、幸せもある。
ラウトとシズフさんとおっさんはキツいのが多いけど。
『こっちへ』
ナルミさんの声に、意識を向ける。
依代への入り口だ。
みんなと半融合しているから、俺がみんなと依代の中へ潜るのか。
あまりよくわからないが、今のこの状況が——創世神級の状態なのか?
『早くクレアに会いに行こ』
「デュレオ。お前なぁ」
『いいじゃん別に。ほらほら、歌は歌い続けてあげるから』
デュレオが予定になく合流してきやがった。
まあいいか。
呑み込まれるように、下へ下へと流れていく。
白い光の滝の中を落ちている——そんな感覚。
『存外早いお越しだな』
『ヒューバートお兄さん……』
「迎えに来たよ、クレア」
そうして到達した永遠に祝福された地球。
世界の中心。惑星の地核。
そこにいる、二人の神。
手を伸ばすと、少しだけ困惑された。
ギアンになにも聞いていないのだろうか?
『僕もここで、新しい創世神の手伝いをした方がいいんじゃないかなって、思っていたんだけど……』
「大丈夫だよ。ギアンがやればいいし。そのつもりだろう?」
『まあな』
「ついでにラウトの権能も返してくれる? もう必要ないだろう?」
『えー、使えるしなぁ、コレ』
ごねやがる。
なら——。
「命令だ。返せ」
『っ——へ、え? ずいぶん言うようになったじゃないか。この世界に来た時は、あんなに——』
「二度は言わない」
『……返すよ』
力でゴリ押しした結果、ラウトに奪われていた結晶病の権能が戻る。
これで人に結晶病が発症することもなくなるし、結晶化した大地の結晶もラウトの任意で消すことができるようになるだろう。
これからは鉱物結晶を生やす場所を各国に作って、石晶巨兵のみで採集できるようにすれば結晶魔石は問題なくなる。
「よし。では、そろそろ擬似人格を移植しよう、ファントム」
『了解した。インストールを開始する』
「クレア、地上に帰ろう。俺はデュレオと君を連れて帰ると約束しているんだ。俺を嘘つきにしないでほしい」
『兄さんと……』
サポートの声は聞こえないから、デュレオが近くにいるのはクレアにはわからないと思う。
でも、もうクレアがこの世界のために生命力を犠牲にし続ける必要はない。
それはこれから、俺とジェラルドの神格を捧げて作った創世神が行う。
生育はギアンがやるだろうし、ファントムが俺たちの人格データを統合して作った擬似人格がギアンの思い通りになるわけがない。
「俺もクレアと、ゆっくり話してみたいって思ってたんだ。大丈夫だよ。クレアをいじめるやつがいたら俺が怒るし、デュレオが過剰報復しそうになったら止めるし」
『ちょっとー』
『やりそうですしねぇ』
でしょー?
ナルミさんもそう思うでしょー?
手を伸ばしながら、もう一度クレアに言う。
「一緒に帰ろう」