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後続機実験

 

「正式なパイロットにしてもいいだろうな、これは」

「サボらせていたのが本当に惜しい……」

「でもあのおっさんマジで隠れると俺にも探し出せねぇんだよな」

「元暗殺者ですからね」

 

 トニスのおっさんの[隠遁]は俺の[索敵]にも引っかからん。

 あの人、悪意とか持ち合わせてないんだよね。

 完全に“仕事”だと思って割り切ってやってるんだろう。

 プロすぎて脱帽だよね。

 

「五体のギア・フィーネが神鎧化して、登録者が全員神格化したなら条件は揃った。六号機、七号機、八号機の“歌い手”ブースターありのギア上げテストを行う。どうせ暇だろうからデュレオ・ビドロでいいだろ。呼んでこい」

「あ、はい」

 

 かつて世界的なシンガーソングライターとして名を馳せた、現神様のデュレオを暇人扱いした挙句王子の俺をパシリに使う。

 もうファントムだからだよなぁ。

 

「ヒューバート様、自分が——」

「いや、いいよ。二人は準備を始めてくれ」

 

 一応パイロットスーツに着替えたり、するかな?

 まあ、着替えずとも乗り込む時間は必要だろうし。

 というわけで九階にある神様たちのたむろ部屋に行ってみる。

 俺たちの研究所だったはずの九階は、今やルオートニス守護神たちの憩いの場兼居住区になっている。

 別に望まれれば城なり神殿なりに部屋を用意すると言ったんだけど、研究塔は彼らが人として生きていた時代の建築物。

 馴染みが深く、カスタマイズも自由自在なので完全に居着いている。

 ディアスとラウトも城に部屋があるのに、最近は完全に研究塔の自室を作ってこっちで寝泊まりしているしね。

 ディアスは七階を自分の研究所にしてしまっているし。

 まあ、いいんだけど。

 

「デュレオ〜、ちょっと“歌い手”として手伝ってほしいんだけど……って、ウッワ! 汚っ!」

「あ〜、王子サマじゃん。なに、仕事ぉ? いいよぉ」

 

 デュレオの部屋はシズフさんの隣の部屋。

 シズフさんの部屋にはベッドしかなくて、それはそれでドン引きしたんだけどデュレオの部屋は四方がほぼクローゼット。

 ステージ衣装やら擬態した時用のサイズの違う服が詰め込まれている。

 で、それを散らかしているデュレオ。

 今は初めて会った時のような二十代後半の姿。

 

「散らかしすぎでは?」

「気づいたらこうなってるんだよぅ」

 

 なんとなくそうなんじゃないかなって思ってるんだけど、もしかして登録者って顔面偏差値と比例した生活能力のなさで選ばれてる……?

 デュレオは登録者じゃないけど。

 ジェラルドも家事能力はゼロだしね?

 俺だけでは?

 掃除洗濯料理ができる登録者。

 そういえばナルミさんが「四号機の登録者は本当に異質だよね。料理が得意とか」って言ってたけど、冗談抜きで結構ガチでは?

 

「俺が片付けておくから、八階の実戦用実験室に行ってくれる?」

「え、いいの? じゃあタダで歌ってあげようかなぁ」

 

 掃除とデュレオの歌が同額っていいのかそれ。

 と、思わないでもないが、できないやつからすればそのくらいの価値になるんだろう。

 

「俺っていうか、呼んでるのはファントムなんだけど」

「アイツ、俺のこと暇人かなにかと思ってない?」

「うーん、それは否定できないけれども……。でも、ジェラルドが神格化したっぽいんだ。条件が揃ったから、最終調整に移るんだよね」

 

 床の服を持ち上げながら、なんとなしに言った言葉にデュレオが息を呑む気配。

 顔を上げてデュレオを見ると、なんとも言えない表情になっている。

 

「じゃあ……クレアを迎えにいくの……?」

「うん。そうなるね」

「そ……そう。じゃあ……協力してあげようかな……」

 

 ベッドに放り投げていた黒い服に着替えて、そそくさと部屋から出ていくデュレオ。

 その姿に同じ兄としてなんとも言えない気持ちになった。

 デュレオにとってクレアは本当に、本当に特別なんだなぁ。

 

「さてと、とりあえずサイズごとに仕分けして片付けてやるとしますか」

 

 服の片付けのあとしっかり掃除しました。

 

 

 

 ***

 

 

 

 片付けが終わってから八階に行ってみると、すでにデュレオの歌が聴こえていた。

 ファントムも唯一「好き」って言っていた“歌い手”の歌だが、俺もデュレオの歌は好きだ。

 もちろんレナの歌も、シャルロット様とミレルダの歌も好きだけど。

 女性の歌声とは違う、力強くてテンポのいい曲調がデュレオの声質に合っている。

 ロック系で気分が上がるんだよね。

 

「ファントム、どう?」

「見てみ」

 

 デュレオの歌う横で数値を確認していたファントムの隣に立ち、ランディたちの同調率を見せてもらった。

 実験室から漏れる虹色の光に、ゾワっとする。

 

「……イケるね」

「ああ、エネルギーに問題はないな。サポートも十分だろう。問題はブースターアリのギア上げのあとの同調障害だな」

「そうですね」

 

 この中の誰か一人でもギア5に到達すれば、俺たち五人が融合する必要は完全になくなる。

 このまま五人だけで儀式を実行しても、俺は神格を返上して主格になるつもりなのでどうしても六人目のギア5が必要ってわけではないけれど。

 

「当たりだな。あのおっさんギア4に到達しやがった……!」

「っ」

 

 画面を見上げると、まるでトニスのおっさんに負けるのが嫌だと言わんばかりに六号機のルーファスと七号機のランディの同調率も上がっていく。

 同調率が急に上がるのは、終わったあとの同調障害が酷くなってしまう。

 ファントムが俺の方を見て頷くので、俺はすぐに[思伝]で七階にいるディアスに緊急できてほしいと頼む。

 これは間違いなく終わったあと全員ぶっ倒れる。

 

 

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