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“歓迎”パーティー(4)

 

「ぐっ! くっ……わ、我々は貴様らには屈しない! 我々はすでに地上の人間とは違う、高次元の存在になったのだ!」

 

 ほえー。

 主張がすげぇ。

 と、思ったらラウトが唇の端を吊り上げた。

 

「面白い。では本体にはそのまま崇高なる己を貫いてもらおう」

「なに、を、ぎゃ、ぎゃあああああああああっ!」

「ひいぃ! て、手が! 手が結晶化した!?」

「どうなっている!?」

「え、なになに?」

 

 サイボーグたちが騒ぎ始める。

 俺たちからはなにも変化がないけど、もしかしてリアルタイムで遠隔操作してたのかな?

 遠隔操作ならラウトにも可能だ。

 ラウトは視認した相手に結晶病を発症させることもできる。

 目の前には偽物とはいえ当人たちの影武者。

 同じ顔、同じ姿ならラウトが“本人”と認識した相手に病が届いてしまう。

 それもまた、彼らの敗因の一つ。

 

「影武者を通して本人に結晶病を発症させた。治癒したければ地上に降りてくるしかない。進行スピードは速めに設定しておいたから、急いだ方がいいぞ」

「くっ、くううぅ!」

「悪質ぅ♪」

 

 デュレオは楽しそうだね。

 

「しかし本人たち来るかねぇ? プライド高そうだったし、意外と死を選んだりするかも?」

「「「「「絶対ない」」」」」

 

 ファントム含めた守護神全員が真顔で否定してて草。

 

「プライドが高いことと高潔さは別物だ。敵地に自ら乗り込み、指揮を行って失敗すれば責任を取って死ぬようなタイプはそもそも身代わりなど使わない」

 

 ラウトの言うことはごもっともだよなぁ。

 

「自棄になって八つ当たりとかしてくるかもしれないけど、助かる時間がまだあるのなら大丈夫かな。明日あたりには聖女の治療院に現れるんじゃない? その時なら穏便に話もまとまるかもね」

「それはもう脅しなんだよなぁ」

 

 やつらが俺たちルオートニス王家にしたことと同じだよ。

 それはちょっとね。

 デュレオはニヤニヤ「俺はそれを推奨するよぉ」と笑う。

 ナルミさんにあとで突き出すかこいつ。

 

「まあ、でも……それならそれで宇宙の頭もすげ替えてしまってもいいのかもね」

 

 デュレオの見識から彼らもそれなりに敵が多そうだ。

 ルーファスたちに後釜を育ててもらえれば、宇宙もある程度落ち着くだろうか?

 

「ま、明日来るならちゃんと会議に参加してもらえればいいか」

「とことん甘いな、お前は」

「まあまあ。父上はそれでも構いませんか?」

「ああ、もちろん。宇宙の王たちにもしかと参加してもらわねば、地上の各国王侯貴族が集まってもらった意味がない」

 

 ですよねぇ。

 

「では、そのように。皆、いきなりのことに驚いただろうに、冷静に見物してくれて助かりました。ありがとう。また明日はこの世界の運命——いや、新時代に向けた大切な話し合いを行う。どうか未来の子どもたちのために、忌憚のない意見を出してほしい。期待していますよ」

 

 そう言って、手を振って退出する。

 レナの顔色が悪くなっているから、心配になったんですよ。

 まあ、さっきのあれ見たら顔色も悪くなるよね。

 

「レナ、大丈夫? 城に戻ろうか」

「ヒューバート様こそ、本当に大丈夫なのですか?」

「うん。無傷!」

 

 満面の笑みで答えるよ。

 実際無傷だしね。

 

「先程の話の流れから、明日宇宙の長たちが聖女の治療院に来られるようなことを言っておりましたが、レナ様がおられなくても大丈夫なのですか?」

「デュレオが鍛えた聖女が集まっているから、大丈夫じゃないかな。無理そうならスヴィア嬢が行ってくれると思うし」

「必要ならボクも行くよ?」

「そう? まあ、連絡が来たらでいいんじゃない?」

「わかったよ」

 

 あまり興味なさそうなシャルロット様。

 守護神全員に「生き汚い」認定をされた宇宙の偉い人たちまで心配してあげるなんて、本当に優しいな。

 ミレルダは国境の辺境伯、ジェラルドの妻だからギア・イニーツィオを飛ばせば余裕で間に合う。

 ジェラルドが転移魔法を使えるしね。

 

「本当に心配いたしました」

「ごめんね。でも本当に大丈夫なんだ」

 

 騎士も数名、護衛でついてくる。

 フォルティスも。

 レナの肩を抱き寄せながら、馬車乗り場にゆっくり歩く。

 

()()()になると魔法も物理的な攻撃でも、死なない。ラウトの加護がなくても、大丈夫」

「それは——うかがっておりましたけれど、でも……それとは別で、やっぱり心配なものは心配なのです」

「うん、ごめんね」

 

 ()()()になってからもレナは俺の身を心配してくれる。

 もはやどうやっても死ぬことのない体だというのに。

 俺としてはやつらがレナを標的にしなくて本当によかったと思う。

 レナにまで銃口を向けるようなら、生かして捕らえた兵たちも多分殺していた。

 人の命を、とても軽いものに思えるようになってしまった。

 いや、正確には——“補強”に使う“素材”。

 礎となる生命は少ない方がいいと思うのだが、素材になるなら積極的に素材にしよう——と。

 これが神の視点というやつなのだろうか。

 自分のことなのにちょっと怖い。

 

「でもそれなら俺はレナに自分を大事にしてほしい」

「え?」

「多分俺の人間性って、レナが中心だから。レナがいなくなったら、俺は、多分……。だから、お願い」

「……はい」

 

 デュレオの言葉が本当に刺さる。

 人じゃなくなるって、怖いね。

 


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