表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
360/386

リーンズ先輩のお見合い(1)


「ん?」

 

 じゃあ締めて帰るかな、と思った時、ジェラルド似の超絶美形が入れ違いで入ってきた。

 ば、ばかな……?

 面食いの俺があんな超絶美形の高身長イケメンを見逃していた、だと……!?

 あれ? でもそこはかとなく知ってるような……?

 

「だ、誰かしら? あんな方いた?」

「ミラー伯爵家の長男ジェラルド様に似ておられるような?」

「す、素敵……」

 

 長い瑠璃紺の髪を三つ編みにして垂らし、着崩した礼服が逆にワイルドな空気を醸し出す男のエッセンスになっている。

 不機嫌そうな表情なのに視線を吸い寄せるほどの美形。

 ——の、後ろにナルミさんと……誰? もう一人見知らぬ青年が泣きながらしょぼしょぼとイケメンの後ろについてきた。

 

「ナルミさん? どうかされたんですか? そ、そちらは?」

「おい、綿菓子王子まで顔知らねーってどういうことだよ」

「……は!? そ、その声、ファントム!?」

 

 なんと、不機嫌そうな表情のワイルドなイケメンからは、ファントムの声がした。

 普段つけている薄葉甲兵装(ウスハコウヘイソウ)のゴーグルをしていないから、素顔を初めて見たのだ。

 蛍光のような黄緑色の、キレ長い瞳。

 イケメンだろうな、とは思っていたけど想像の数十倍超絶美形で腰抜かすと思った。

 登録者イケメン揃いすぎだろ!?

 登録者条件に顔面偏差値絶対入ってるだろ!?

 千年前は千年前で乙女ゲーかなにかじゃありませんでしたか!?

 

「どうしてファントムがここに?」

「コイツのつきそい」

「コイツ……だ、誰?」

「アグリットだよ」

「え? アグ……リーンズ先輩!?」

 

 ファントムの後ろに隠れた鳶色の礼服、紫紺の髪は長く、特に右側の顔半分を覆う長い前髪、赤い眼鏡のよくよく見ればイケメンのこの人がリーンズ先輩?

 え、いつも花の着ぐるみを着ている、あのリーンズ先輩?

 リーンズ先輩!?

 

「リ、リリ、リ、リッ? リー? リーンズせ、せせ先輩? リーンズせんぱ、い、に、にんげんのかっこ……?」

「落ち着きなさい、ヒューバート。人前で狼狽えすぎだよ。確かに長い付き合いなのにも関わらず、着ぐるみじゃない姿は見たことがないだろうけれど」

 

 そうだよ?

 ナルミさんが落ち着かせてくれたけれど、リーンズ先輩が研究塔の外にいるのもびっくりしたし人間の姿なのも初めて見たし……どゆこと!?

 

「というより、ランディやジェラルドは無事に婚約者を見つけて結婚しただろう?」

「え? は、はい。しましたね?」

「レオナルドも今日結婚したしね」

「そ、そうですね?」

「その件に関しては後ほどお祝い申し上げるけれど」

「あ、ありがとうございます、ナルミ様」

 

 流れるようにナルミさんから祝福を受けるレオナルド。

 お礼を言って立ち上がって頭を下げるあたり、俺が頭が上がらないところを見ているレオナルドだ。

 

「婚約者もいない21歳引きこもりとはいえ、王宮植物研究員にして石晶巨兵(クォーツドール)初期開発者の一人。個人で男爵位を与えられているし、国への貢献度は高く伯爵家以下の爵位の貴族令嬢と結婚して子を残すようなら子爵家への陞爵(しょうしゃく)も検討されているよね」

「そうですね」

 

 リーンズ先輩の国への貢献度はジェラルドと同等度として扱われている。

 ジェラルドの家が陞爵して伯爵家になっている以上、当然リーンズ先輩にも同等の褒美が与えられて然るべき。

 なのだが、リーンズ先輩は実家と疎遠であり、先輩自身の強い要望で王宮植物研究員という今までない部署と名称を望んだ。

 しかし、その部署が石晶巨兵(クォーツドール)関係以外——ギア・フィーネ関係でも結果を出してしまった。

 魔樹の量産生育体制が比較的早く整ったのは、リーンズ先輩が長年魔樹を研究していてくれたからだ。

 もっと言うと、リーンズ先輩が俺の毒殺未遂事件で解毒薬を作って飲ませてくれたのも大きな功績になっている。

 あの時リーンズ先輩がいなかったら、俺はこの世にいないのだ。

 俺自身の価値が高まることで、リーンズ先輩の功績も大きくなっているということである。

 なので、正直もう男爵にしておけない。

 可能ならば身分が高い嫁をもらって子どもを作り、子が産まれたら子爵の爵位を与えたいって話なのだ。

 なので、お見合いの話はかなり大量にきていたと思う。

 全部返事がないと、ナルミさんがぼやいていた、が……。

 

「ヒューバートにもアグリットをお見合いやパーティーに参加させたいって頼んだじゃない?」

「そうですね」

「言ってくれていたでしょ?」

「一応言ってましたね」

「来ないでしょ?」

「……来ませんでしたね」

「祝賀パーティーは割と、アグリットにちょうどいい爵位の者が多いからね、ファントムに頼んで連れてきてもらったの」

「なるほど」

 

 ナルミさんの堪忍袋の尾が切れたんですね。

 

「無理です無理です、こんなたくさん人がいるところ恥ずかしいです、やっぱり返してくださいぃ」

「うっせーな、腹ァ括れや。テメェ、ツラはそこまで悪くねぇんだから上手く使え。ツラの使い方なら教えてやるから」

 

 ファントムが言うと説得力あるなぁ……。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】

4g5a9fe526wsehtkgbrpk416aw51_vdb_c4_hs_3ekb.jpg
『転生大聖女の強くてニューゲーム ~私だけがレベルカンストしていたので、自由気ままな異世界旅を満喫します~』
詳しくはホームページへ。

ml4i5ot67d3mbxtk41qirpk5j5a_18lu_62_8w_15mn.jpg
『竜の聖女の刻印が現れたので、浮気性の殿下とは婚約破棄させていただきます!』発売中!
詳しくはホームページへ。

gjgmcpjmd12z7ignh8p1f541lwo0_f33_65_8w_12b0.jpg
8ld6cbz5da1l32s3kldlf1cjin4u_40g_65_8w_11p2.jpg
エンジェライト文庫様より電子書籍配信中!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ