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二年後の世界(4)


 愛を育む時間を与えられず、王家は王子を二人育てるのにいっぱいいっぱいの予算しか許されない。

 今はそんなことないから、思う存分愛し合えるんだろう。

 そういうのを悪いなんて誰が言えるよ?

 

「若干、俺とレナの子どもと自分の弟妹が同い年で生まれてくると思うとそれは複雑だけど」

「レオナルド殿下も早そうですから年子になりそうですね」

「ヒィェ……」

 

 披露宴が無事に終わると今度はまた着替え。

 次は祝賀パーティー。

 他の参加者は小宮殿のダンスホールで立食、中庭でお茶会が始まる。

 結婚式、披露宴よりもかなりのんびりとしたものになり、結婚したレオナルドを祝う目的の軽い宴会だ。

 夜はそのまま祝福の夜会——いわゆる二次会だよ。俺の時はそれどころでなかったのでナシになったけど——になるらしいが、祝われるレオナルドとマリヤ以外は出入りがラフになる。

 俺も祝賀パーティーはそれなりに早めに切り上げて、政務に戻る予定だ。

 その前に披露宴に参加できなかった中堅貴族たちが祝賀パーティーには大量に参加するので、今度はガチ目に釘を刺す。

 それにしても、日に六回は着替えることになるってつらいね。

 朝起きて小宮殿に来るまでの私服。

 私服から結婚式に出る正装。

 正装から披露宴の礼服。

 披露宴の礼服から祝賀パーティーのややカジュアルな礼服。

 祝賀パーティーから帰る時は別の私服に着替えるし、そこから風呂に入って寝巻きに着替えるから……六回でしょ?

 疲れるって。だっっっる!

 こういう時は聖殿派が幅を利かせていた頃の楽さが懐かしくなるわ。

 

「祝賀パーティーは長くとも四十分程度でお願いいたします」

「了解。レナのところに寄る時間はあるかな?」

「祝賀パーティーを二十分で切り上げていただければ、八分少々は時間が取れます」

「ぐぅ……善処する」

 

 昔は……冗談かと思っていました。

 分刻みのスケジュールとか、嘘だと思っていました。

 結構マジですね!!

 

「ご覧になって、ヒューバート第一王子殿下よ……!」

「祝賀パーティーにも参加されるのね」

「裏切り者のメリリアのご子息であるレオナルド様を重用しておられたり、兄弟仲がよろしいのは本当なんですのね」

「披露宴の時の礼服とも違って素敵ぃ」

「なんて幸運なのかしら……! はるばる領地から出てきた甲斐があるわ! ヒューバート殿下にご挨拶する機会に恵まれるなんてっ!」

 

 会場に戻るとだいぶ人が増えている。

 しかもだいぶ品位が落ちているな。

 中位・下位の貴族が増えた証拠だが、それだけでこれだけわかりやすく口数が増えるとは。

 貴族の教育機関も少し厳しくした方がいいんじゃないかなぁ。

 

「皆の者、本日は私の結婚を祝うパーティーへの来場感謝する! 先に多忙な兄上より皆に話がある! 心して聞くように!」

 

 おお、さすがレオナルド。

 お膳立て助かるわ〜。

 レオナルドの心遣いににこりと微笑んで壇上に上がる。

 果たして中位貴族たちの何人がレオナルドの表情に勘づいただろうな。

 披露宴にもいた貴族の何人かは残っているし、レオナルドの表情に気づいて「さっきの話か」と察している者もいる様子だ。

 目を輝かせている令嬢はともかく、中位・下位で羽振りよさそうなやつらはフォルティスにチェックさせておこう。

 

「祝いの席なので手短に済まそう」

 

 という前置き。

 俺が忙しいから用件だけ言って帰るね、という意味。

 

「披露宴にいた者たちにはすでに注意したのだが、最近他国の者へ我が国の貴族であることを誇らしげに語り、無理を強いる者が多いという話を耳にした。確かに他国の王侯貴族が“俺”と“守護神たち”に対して敬意を持って接してくださることがあるが、それをまるで我がことのように誇るのはやめるように。身分が高い者たちも、見かけたらやんわりでいいから注意するようにしてやってほしい。話を理解できる頭がある者なら、優しく言えばわかるだろう」

 

 威圧は放たないように、優しく笑顔のままに話す。

 言い方は務めてやんわりしたものだが、高位貴族たちの顔色は悪い。

 俺がすでに披露宴で同じ話をしているからだ。

 同じ話を中位・下位貴族の増えた今、行うということは主だってやらかしているのが中位・下位貴族だということを悟ったのだろう。

 そして俺の言葉の中に“自分たち”も含まれている。

 これからは中位・下位貴族のやらかしを注意、制止できないようなら場合によってはお前らも処分の対象だぞ——という裏の意味に気づいたのだ。

 一応優しく注意して“理解”しないようならお前らで処分してもいい、ともつけ加えておいたけれど。

 

「明日から七ヶ国の王侯貴族が集まる、初の大会議が我が国で開催される。粗相のないように、来賓たちへのもてなしには心を砕くように——」

「お言葉ですがヒューバート殿下! 殿下の功績は、世界の王として他国の誰もが認める素晴らしいものでございます! そのように下手に出ては足下を見られますぞ! ここは強く出て、我が国の立場を知らしめるべきではございませんか!」

「——」

 

 薄目で俺の話を遮った者を見る。

 えーと、西部の小領地を治めるダオーロラ伯爵か。

 ……元聖殿派だね。

 あーあ、俺の話を遮って主張し始めたもんだから、前の方に集まっている高位貴族たちが不愉快そうに後ろを横目で見てる。

 振り返らないのは壇上に俺がいるからだ。

 やはり身分が高い者たちは教養も気品もあるな。




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