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二年後の世界(2)


 ムーンノーティスとマーズノーティスは元々アースノーティスだったが、月と火星に拠点を持って枝分かれしたそうだ。

 彼らは永遠に祝福された地球(ブレス・トワ・アース)を完全に捨てて、宇宙に一大国家を築くべき、という主張をしている。

 はい、その一大国家を指導するのが自分たちであるという、そういう主張ですね。

 それを聞いた時は思わず「人間って宇宙に出てもやること同じなんだね」と言ってしまった。

 なお、ルーファスも「……そうだよ」と目を背けて言ってくれたので割とみんな思ってるっぽい。

 と、いうわけで宇宙は時折武力衝突もあるぐらい、不安定な情勢が続いているのだそうだ。

 宇宙に昇り、科学が進歩しても人間とは争いがやめられない生き物らしい。

 そして、そんな宇宙の人類は思い知る。

 これまで地上を犠牲にして得てきたエネルギーの限界。その対価。

 バベルがセドルコ帝国の難民を五千人近く囲ったことで、隔離していたにも関わらず宇宙でも結晶病の発症が始まったのだ。

 それに気づいた時にはすでに人流に乗ってすべての勢力内に蔓延しており、接触者でなくとも突然発症するようになったという。

 この報告を受けたルーファスたちは、今まで俺に対して懐疑的な態度を残していたのをクルリと一転させた。

 まあ、ルーファスだけは相変わらず地味に態度が悪いけど。

 なんとかしてやりたいのは山々なのだが、結晶病の治療は宇宙でできない。

 なぜなら聖女を派遣しても、宇宙には魔力が存在しないから聖女も魔法を使えないのだ。

 そのため金のある層は元セドルコ帝国北部に作られた、宇宙の民専用の領地の治療院に自費で降下し、治療を受けるようになった。

 クレアの言う通り、ギアンは宇宙に積極的に結晶病を発症させて永遠に祝福された地球(ブレス・トワ・アース)の“エネルギー発生の概念”に変換しようとしているのだろう。

 接触の機会がなく、宇宙はギアンにとって手つかずの宝の山のようなもの。

 戦争をするぐらい人口が増えているのだからと、笑いながら手を伸ばしたに違いない。

 本当にくそ。

 なので宇宙はもう、結晶病そのものをなんとかするしかないのだ。

 宇宙に広がる結晶病は、ラウトのものではなくギアンがラウトから奪った権能の一部。

 ギアンが結晶病を使うのは、クレアに“エネルギーを生み出す概念”を維持させるため。

 つまりギア・フィーネと登録者を使い“創世神”を作り出すしかないのだ。

 そこまで説明して、ルーファスたちもようやく俺の言っていたことを理解してくれたのだと思う。

 そして、俺がルーファスに依頼したことの意味も。

 

「結婚式のあとの披露宴で、貴族たちにお説教入れたいと思うんだけど大丈夫か?」

「他国の貴族への迷惑行為への牽制ですね。平民たちへの教育が進めば貴族たちの優位性は崩れますから、引き締めは必要不可欠ですよね。もちろん、兄上のおっしゃることなら」

「本当は祝いの席でやるものではないんだがなぁ……」

「次に国中の貴族が集まるのは父上の誕生日ですか」

 

 結局祝いの席だなぁ。

 他国の者がいない時が好ましいが、王族主催の行事でなければ他国でやらかしている中堅が集まらない。

 しかしやはり弟の披露宴であまりやりたくはないしね。

 

「まあ、やんわり威圧する程度にしておくよ。お前の結婚披露宴だしね」

「は、はは、は、はい」

「え、どうしたの?」

「い、いえ。兄上も神格化されておられるので、兄上の威圧もかなり、その……」

「き、気をつけるね」

「よろしくお願いします」

 

 そ、そうかー。

 あんまり自分ではわからないけど、自分で思うより影響がでかいんだろうな。

 

「最近ギア・フィーネに乗って戦ってばかりだから、自分じゃよくわからない。教えてくれてありがとう、レオナルド」

「いえ、必要なことですからね」

「うん」

 

 そうなんですよ、俺は最近ギア・フィーネでジェラルドとルーファスと戦ってばかりなのだ。

 目的はジェラルドの神格化とギア・フィーネ三号機の神鎧化。

 ルーファスはギア・フィーネ六号機の試運転が大きい。

 ファントムにより製造された、新造ギア・フィーネ六号機、七号機、八号機は最終調整に入っている。

 六号機はルーファス、七号機にはランディ、八号機にはクロンが乗ることになった。

 後続機三機は登録者機能が外されており、登録者以外が乗って死ぬことはない。

 が、ギア上げを行うと同調障害が激し目に出てしまう。

 誰か一人でも俺たちと同じく神格化と神鎧化に辿り着ければ、ギア・フィーネの登録者五人が融合化して創世神化する必要はなくなるという計算が出た。

 なので、同調率が高い者を据える予定ではある。

 で、今のところ一番同調率が高いのが六号機とルーファス。

 ファントムの計測だとすでに32%に到達している。

 ランディと七号機もそれなりにいい数字を叩き出しており28%。

 問題は八号機。

 ギア・マレディツィオーネのパイロットとしてエリートである彼に頼んでみたものの、同調率は芳しくなく5%。

 なお、同調率が成長している様子もないので近々降りてもらうことになった。

 本人の体調にもよくないしね。

 ルーファスは他の部隊仲間の中でクロンの次に同調率が高かった、アイランという子に頼んでみると言っていた。

 自力のギア上げと俺たちとの模擬戦闘で同調率が上がるようなら、そのまま伸ばして行ってもらえればと思う。




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