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人を辞める(1)

 

 煽りスキルレベル100なの?

 モニターに映していていいんだろうかってくらいに、歯茎を見せ目をかっ開いて叫んでいる。


「それに、そんなに必死に叫んでたらシワが増えちゃうよ? 皇〜女サマ♡」

『ギイイィッ!!』

『ひっ!』


 ガシャーン、とガラスの割れる音。

 先ほど飲んでいた酒のグラスを掴んで床に叩きつけたのだ。

 うわあ、マジでヒステリー。

 しかも相手が悪い。

 俺の前へ出てモニター越しにセラフィをおちょくっているのは、国一つをその擬態と口車で瓦解に追い込んだ人喰いの怪物。

 魅了の魔法を使っているわけでもないのに、人民の注目をほしいままにする魔性。

 舌舐めずりをするだけで男たちが頬を染め、劣情を煽られる。


『攻撃よ! 攻撃しなさい! なにをしている! この船も武装はしているのだろう! ここから壇上を撃ち抜け!』

『む、無理です! 船の制御が完全に奪われている!』

『きいいぃ! なら、先ほど撃ち落とされた二足歩行兵器というやつで町を破壊しろ! 妾に叛逆する者どもなど町ごと抹消するのだ!』


 いかん、デュレオの乱入は予定になかったけど俺がやるより早くあの命令出してくれたわ。

 さすがデュレオだなぁ。

 若干呆れてしまったが、見えてきた船影を隠すように三機のギア・マレディツィオーネと宇宙の二足歩行が三機、空へと浮かび上がった。

 ここからでも実弾ライフルを構えたのがわかる。

 あれは——三号機を模した機体か。


「なるほど、ラウトが怒るのもわかる」


 発砲音がこちらに届くより前に、その銃弾を空中に[隠遁]で待機させていたイノセント・ゼロが黒剣で切り裂く。

 町の側面ギリギリに飛んだ割れた銃弾。

 突然現れたギア・フィーネに動揺した瞬間を狙ってルオートニス国境付近にいるジェラルドの三号機が狙撃を行う。

 やつらが空中からの接近をやめて、地上に降り始めたのを見て俺もイノセント・ゼロを広場に下ろす。

 轟音と着地による風で、左側に垂らされたペリース風のマントが靡く。

 聴衆が驚いて後ろに下がるのは都合がいい。

 壇上から貴賓席のレナを振り返る。


「レナ、頼んでいい?」

「ヒューバート様が行かれるのですか?」

「ヒューバート殿下、自分が——」

「いや、俺が行く。今日、ギア5に到達したいんだ。だからレナ、お願い」

「っ……」


 せっかく向こうから連れてくれたのだ、利用しない手はない。

 微笑んでお願いすると、レナは立ち上がる。

 つらそうな表情。

 まあ、そうだよね。

 ギア5になるってことは……人間を辞めるってことだ。

 人としてのヒューバート・ルオートニスの死だ。

 でも必要なことなんだよ。

 このあと、世界を救うには、どうしても。


「レナ様、“歌い手”の力が必要なのでしたらわたくしが——」

「いいえ、シャルロット様。わたしがヒューバート様をお守りします」


 立ち上がったレナが壇上に登ってくる。

 手を伸ばし、隣に寄り添ってくれるレナを見下ろした。


「わたしもお側にいてもよろしいですか」

「うん。行こうか」

「……はい」


 レナを連れてイノセント・ゼロに乗る。

 二人でギア・フィーネに乗るのは、いやに久しぶりな気がした。

 本来であれば登録者以外が乗ると、脳波を阻害して脳を破壊してくる。

 でも“歌い手”は別らしい。

 それでも、“歌い手”がギア・フィーネの登録者になることはないのだから不思議だ。


「…… いらない子なんて いない

 わたしは愛してもらい 愛を知った」


 レナの歌声を聞きながら飛び上がり、町の外へと出る。

 駆け足で町に近づいていたギア・マレディツィオーネの一機、三号機を模したものがライフルを構えたのでギア3まで上げて距離を詰め、ライフルごと両腕を叩き斬った。

 ギアが上がるのが早い。

 それに、自分でギア上げするよりも楽だ。

 これが本来の“歌い手”のブースター……!

 機体を捻って剣先を下方へ向け、三号機を模した機体の両脚を斬る。

 ダルマにしてしまえば役には立たない。

 次は二号機を模した機体。

 素速いがシズフさんとディプライヴを見たあとだと、可変して戦闘機になったギア・マレディツィオーネはあまり怖くない。

 むしろ、一号機を模した機体の方が厄介だろう。

 イノセント・ゼロの両手のひらにある掌底銃口でギア・マレディツィオーネで俺を囮にし、町へと抜けようとした二足歩行兵器三機の頭を潰す。

 立て続けに両手両足も撃ち抜いて、こちらもダルマ完成。

 ビームソードを振り下ろされるが、ファントム製の黒剣で無効化できる。

 剣であり、盾でもあるのだ。

 マジとんでもねーもん作ってくれたもんだよ、あの悪魔。


「願いばかりが 駆け出して

 自分が弱くて 無力でも 歌はある」


 ギア4に上がる。

 初めて上げた時の苦痛はない。

 これが慣れ。

 脳波が90%同調状態になった証。

 コツコツ上げてきてよかったな。

 そしてここまでくると、たとえ二号機を模した機体であろうとイノセント・ゼロの動きにはついて来れなくなる。

 ああ、ラウトの言う通り敵パイロットの様子が手に取るようにわかるな。

 すごい動揺。

 マシンガンで足止めしようとしているが、ギア4に到達すると青い光がイノセント・ゼロを纏う。

 物理攻撃はほぼ通らなくなる。

 “ならし”にはちょうどいい。

 一号機の攻撃を避けながら二号機を掌底銃口で削る。



小ネタ


レナ「初めまして、レナ・ヘムズリーと申します」

レーナ「初めまして、レーナ・コルテレと申します」

レナ「レーナ姫様……」

レーナ「レナ様……」

ヒューバート「レナと、レーナ姫……」


ヒューバート(レーナ姫の預かり期間が短くてよかったなあ)


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[一言] これこそ!宇宙人にとってはNTーD!
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