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終わりの式典(1)

 

 うちの神様たちは「多分撤退する」と見ている。

 向こうに戦争を続ける理由がもうない。

 いや、あるにはあるけど——デュレオとか——ここで無理してガチで構えるほどの旨みではないのだ。

 ファントムは新造ギア・フィーネにかかり切りで、「宇宙に行くならエアーフリート使えば?」とか投げやりだしね。


「ですが我が国は衛星兵器で攻撃された落とし前がまだですの。できれば、伝手など融通いただけないでしょうか?」


 にこり、という笑顔。

 シャルロット様も血の気が多くていらっしゃる。

 あはは、と笑ってごまかせ……ないよなぁ。


「そうですねぇ……俺としてもこのままなのは正直気持ちが悪いしなぁ」


 頭の上にいつまた攻撃をしてくるかわからないものがいるっていうのは、不愉快だ。

 衛星兵器は聖女の結界を平然と撃ち抜く。

 デュレオの案——宇宙にラウトかデュレオを派遣して、地上にちょっかいをかける余裕がなくなるくらいめちゃくちゃにするっていうのもアリかなぁ、とか思っちゃうくらいには不快なんだけど。


「でもその“伝手”は別に用途があるので、確実性が低い“伝手”になってしまいます。それでよろしければ一つか二つお渡しするのは別段。個人的にはやめた方がいいと思います」

「なぜですか?」

「切り捨てられるということは、彼らは地上で生きていくことになる。地上の情報は宇宙の者には魅力的でしょう。十年以内に彼らに接触してくるのは、目に見えている」

「はい」


 あ、ここまで言っても、誰もわかってくれない。

 ソードリオ王以外はキョトンとしてる。

 そうだよね、あんまりピンとこないよね……!

 宇宙の人間とか地上とか……数百年単位の引きこもりにはわからないよね!


「うちの国の情報だけでなく、ルレーン国の情報までくれてやることはない、ということですよ」

「あっ」


 軍事的な点は各国ぬるぬるだな。

 気をつけよう。


「まだまだ勉強不足ですわ……!」

「俺もナルミさんやシズフさんに聞いて『なるほどー』ってなってるので、千年前であれば当たり前なんでしょうね」

「では宇宙との交渉はヒューバート様が矢面に立たれますの?」

「そうですね。まあ、正直なところ宇宙の相手などしている時間が惜しいのが本音です」

「え?」


 悔しがるシャルロット様、かなり素が出ている。

 とはいえ、他の国の者たちもあまりわかってなさそうだしね。

 宇宙に関してはこれから説明しなければならないし。

 ……そう、宇宙の相手をしている時間が惜しい。とても。


「なので向こうから接触したくなるように仕向けます。わざわざ地上の民の因子を取り込んだのですから、文句などないでしょう。我々が千年晒された恐怖を分かち合えば、きっと分かり合えると思います」

「……は、はあ?」


 みんなわからんって顔をしている。

 それでいいよ。

 俺も一応王太子として、地上を繋いだ者としての責任がある。

 だから式典が終わって地上が平和になったら——。


「俺に任せて、ってことです」

「ぐぅ」

「……? スヴィア嬢?」

「なんでもないです」


 スヴィア嬢からカエルが潰れたような声が聞こえたんだが、聞き間違い?

 シャルロット様の方を見ると半笑い。

 なんで?


「スヴィア嬢、体調が悪いんでしょうか」

「ご結婚されてからヒューバート様には色気……あ、いえ、余裕が出たようですから、腹が立つのだと思いますわ」

「ええ……?」


 結構いつもパツパツで余裕ないけどなぁ、俺。

 でもそれに対して腹が立つってなに? 怖い。

 シャルロット様の笑ってない目の笑顔も怖い。

 心なしかレーナ姫は目をキラキラさせているし、なんか居心地が悪いな。


「……!」


 [索敵]魔法に悪意が引っかかる。

 まったくいないとは思わなかったが、城内だな。

 腕と足を組んだままつい笑ってしまう。

 俺も成長したものだなぁ。

 エリステレーン伯爵の町一つ覆うほどの広範囲を[索敵]できるようになったのだから。

 [隠遁]で隠れているトニスのおっさんに組んだ腕で隠した右手の指でサインを送る。

 数は増える一方。

 どうやら俺が石晶巨兵(クォーツドール)で来たから、上手く釣られてくれたらしい。

 いくつか手は打っていくつもりだったけれど、一番単純なところに引っかかってくれたのは嬉しいね。


「ヒューバート様」

「大丈夫ですよ。そのために今日はわざと連れてきてないので」

「ああ、姿が見えないのはそういう……」


 俺の機嫌のいい様子になにか感じ取ったシャルロット様が、じとりと睨んでくる。

 不安そうなので笑顔で対応すると、納得していただけた。

 そうですね、いつもなら側にいるランディもジェラルドも、神々の誰も俺の側にいない。

 それに思うところはあったんだろう。

 他の王族たちは、俺たちの会話にさっぱりついて来れていない。

 そういう意味ではシャルロット様はやはりすごいな。


「あ、でも国守様はマジで来てないです」

「帰りに寄らせていただきます」


 あの人だけ別枠でガチの不在である。

 でも、撒き餌に食いつく程度には“伝手”は役に立ってくれた。

 いやいや、申し訳ないなー、と思うよ?

 式典が無事終わる保障はなくなってしまったしね。

 でもセドルコの自業自得だ。

 とはいえ、他の国賓もいるし死人は出さないようにしないとね。




小ネタ


スヴィア(なに今のなに今のなに今の! カッコ良すぎて腹立つ〜! ずるいわよ、ずるいわよ、初めて会った時はまだ全然子どもだったのに、会うたびに格好良くなっていくのずるすぎるわよ! ランディもずっと自慢してくるし! わかってるけど、わかってるけど! こんなのいつまでも抱えてるのつらい!)

マロヌ(ああ……スヴィアおねえさまがつらそう……)

シャルロット(わかります。わかりますわよ、スヴィア様。今の「俺に任せて」は、わたくしでもくるものがございましたもの。ヒューバート様、無自覚に色気を振りまかれるようになって……スヴィア様お可哀想……。せめて側室を娶るおつもりがあればわたくしもお口添えするのですが……)

レーナ(ハニュレオの聖女様、まさか……!)察し



※男性陣誰も気づかない

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