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王に膝をつかれる者(3)

 

「どうかな? あなたの予定もあると思うから無理にとは言えないけれど」

「いえ! いえ! 是が非でもよろしくお願いします! ……っ……ああ、まさか……そこまで言っていただけるとは思わず……!」


 みんな腹芸下手くそすぎないか。

 いや、まあ、国交が行えるようになって一年程度ではこんな感じなのかなぁ?

 でも各国王族が俺に跪いて頭を下げるのはなんか違くない?

 当たり前のようにソーフトレスの新王とコルテレの王族が俺の前に跪いてるけどさぁ!

 おかしいよなぁ!?


「……エルダー・ソーフトレス王は、なにか言いたいことがありそうですね?」

「っ! い、いいえ。ですが、叶うのであれば我が国の者も殿下のお側に置いていただければと……」


 ふと目に入ったエルダー王の眼差しが、ずいぶん険しくレーナ姫を見ていたから笑顔で聞いてみたところ、怯えられてしまった。

 困ったねぇ、普通に聞いただけなんだけど。

 いや、普通には聞いてないな。

 彼女の立場を思えば俺が二ヶ月そこら面倒を見るのも、彼女の“敵”からすれば大層面白くない。

 ソーフトレスはさぁ、戦勝国ヅラしてるけど、別に勝ったわけじゃないんだよね。


「なぜ?」

「えっ」

「俺は別にコルテレを贔屓してるつもりはないよ。戦争の後処理というのはとても大変だろう? しかも血の繋がった他人が始めた戦争の後始末を、血の繋がりだけを理由に背負おうとする。俺はコルテレではなくレーナ・コルテレ姫という個人を尊敬しているから今回の提案をしただけ」


 口調を変える。

 跪かれたのなら、相応の対応をしようじゃないの。

 デュレオに言わせると俺もそれなりに“人間離れ”してるらしいもんね。


「それにソーフトレスは先王を監禁だけで済ませているそうですわね。塔に幽閉して、一日三食王族らしい食事が出されているそうな」

「な、なぜそれを——」

「へーーー?」

「っ」


 ここでシャルロット様からも援護が来た。

 さすがに西方事情は俺より詳しい。

 ソーフトレスの先王って、ルレーン国に難民に混じって密入国した挙句、戦争の責任を丸投げして自分だけは生き延びようと難民に金を払って順番を買い、コールドスリープに入って寝ようとしていたクソ野郎だろ?

 図太いっつーかなんつーか……。


「ま、まだ聞き出すことが多く、戦後の裁判も終わっておりませんゆえ……生かしておくことはご容赦願いたく」

「もちろんですわ。ですが食事の質は落としてもよろしいのでは? 国民に示しがつきませんわよ? それとも維持しなければならない理由でもあるのですか?」

「……そ、それは……その……」

「ソルドレット先王は戦犯の一人です。罪人として扱ってくださいませ。甘やかすようでは新王となられたあなたにも、ソーフトレスのためにもなりません」

「……はっ」


 聖域のお姫様の方がここは強かったな。

 俺が口を挟むのはこのくらいにしておくべきだろう。


「……あなたは……本当に……」

「ん?」

「なんでもないわ」


 なにか呟きが聞こえた、とスヴィア嬢の方を見る。

 フイっと顔を背けられてしまった。

 それを見てシャルロット様が眉根を下げる。

 なんだ?


「ヒューバート様、式典が終わりましたら新国に関する話し合いをするとお聞きしておりますが、わたくしも同席してよろしいかしら?」

「お忙しくないのであればぜひ。俺もシャルロット様にお話したいことがありまして……あ、国守様の件と繋がっているのですが」

「ああ、例の件ですわね。聞いておりますわ。わたくしの場合は西方の聖女不足の件のご相談です。レナ様もご同席くださると嬉しいのですが」

「式典のぎりぎり到着と聞いています。もちろん同席させましょう」


 西方の聖女不足は深刻らしい。

 元々聖女がいなくて、ルレーン国の聖女を奪い合ってソーフトレスとコルテレの戦争が始まったようなものだから仕方ない。

 なので、ルオートニス王国の聖女を何人か派遣してほしい、という要請があったのだ。

 うちの国はレナの補佐を行えるくらい、デュレオがしっかり育成しておいてくれたので優秀な聖女候補がたくさんいる。

 候補たちもソーフトレスやコルテレで正式な“聖女”になることもあり得るので、メリットはあるだろう。

 まあ、そんな野心のある聖女候補、いるかなぁ?って感じだけど。

 一応希望者を募ってはいますとも。


「それから——宇宙軍についても情報の共有をお願いしたいですわ」

「ああ、それもありましたね」


 いつまでも王と王族たちを跪かせたり立ちっぱなしにさせておけないので、俺とシャルロット様が率先して座る。

 すると、他の国の王族たちもそれぞれ席に座り始めた。

 言いたいことは色々あるが、座ってくれてよかったです。

 それよりも俺がなんてこともないように答えるものだから、シャルロット様が不満げに唇を尖らせるのが可愛い。


「でもまあ、正直微妙なんですよね」

「といいますと?」

「宇宙軍の捕虜たちは二十人ほどいるのですが、そのうち会話可能な者は自分たちが切り捨てられることをすでに覚悟している。セドルコ皇帝家の中で交渉が可能なステファリーはご存じの通り、長女セラフィに見捨てられています。宇宙軍との交渉に使える手札はあるのですが、宇宙側に交渉する気がないとなんとも」

「まあ……」



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― 新着の感想 ―
[一言] ま、ゆっくり滅ぶ様になりますな、意地のせいで。 何千名を無理やりに子を産ませたしても、変わらないその方法では未来はないな。 多分、分かってもどうしようもなくするが、まるでモルモットになった人…
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