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王に膝をつかれる者(1)

 

 長月の二十日。

 急足で準備していたが、ついにこの日が来た。

 会場が開くまでの間、こちらでお待ちくださいと通された客間は最低限で最高級のものが取り揃えられている。

 この国に残った文明品は少ないが、それらがここに集結している感じだ。


「ヒューバート様、お久しぶりですわ」

「お久しぶりです、シャルロット様。ランディとはいかかですか?」

「な、仲良くさせていただいております」


 照れ。

 あー、これは可愛い。

 ディアスが転移陣をルオートニスの首都とルレーン国の首都に設置してから、ランディは比較的頻繁にシャルロット様に会いに行っている。

 すでに学園も卒業済みなので、ルレーン国の歴史や文化を学んだりしているそうだ。

 真面目だよねぇ。

 いや、その分とても頼もしいけど。

 これを見る限りシャルロット様との仲も順調なんだな。

 政略結婚なのにこんなに照れ照れされてはなんとも言えない気持ちになってしまう。


「ミレルダや国守様にもお会いしたいのですが、本日の式典にはいらっしゃいますの?」

「ミレルダ嬢とジェラルドは強制参加ですが、ファントムは最近研究塔に缶詰めでして……なんなら外に連れ出そうとしても断固出ない、というか」

「ああ、あの方一度研究に熱中し始めるとそうなりますわよね」

「ルレーン国でもそんなことが?」

「ギア・イニーツィオを開発した時などになりましたわ。お食事も簡易流動食ばかりになりましたし、徹夜も……」

「式典が終わったら様子を見に行きましょう」

「ぜひ」


 ダメだあいつ早くなんとかしないと。

 俺も大概だけどファントムもワーカホリックだろ、絶対。


「ヒューバート殿下、お久しぶりです」

「お、おひさしぶりでございます」

「お久しぶりです、ヒューバート様」

「スヴィア嬢、マロヌ姫、ソードリオ王、ご足労いただきありがとうございます」


 礼をして迎えたのは今日からセドルコ帝国改め、新国の親国となるハニュレオ王族と聖女スヴィア嬢。

 色々押しつける形になったのだが、ソードリオ王が快く了承してくれて本当に助かった。

 それにしても、ソードリオ王は最後に会った時とは比べ物にならないほど元気そうになったなぁ。

 杖はついているが、自分の足でしっかり歩いているし背筋もピンと伸びている。

 顔立ちも肌も若々しくなり、受け応えにも以前のような辿々しさが微塵も見えない。


「ソードリオ陛下におかれましては、ご健勝そうでなによりです」

「いやいや、これもすべては医神様とそのお弟子であるミルト殿のおかげ。また、医神様とミルト殿を派遣してくださったヒューバート様のおかげである」

「ソードリオ陛下!?」


 いくら非公式の場とはいえ、ハニュレオ、セドルコとルレーン国、ルオートニスの護衛騎士がいる。

 それなのに俺に頭を下げるのだからマジでびっくりした。

 国王陛下が気安く頭なんて下げちゃダメだと思うんですが!

 さらに膝までつこうとするので、全力で止めた。

 あかんあかん、それだけはあかん。


「と、止められるなヒューバート様。我が忠誠は殿下にこそ捧げるべき! よもや本当に世界平和を実現されるとは! あなたこそこの世界を導くに相応しい、世界の王となるべき方!」

「ダメダメダメ絶対ダメです、いくら非公式の場とはいえ話がややこしくなるのでおやめください!」

「む、むう……」


 俺が泣きそうになりながら止めているのに、シャルロット様は手のひらで口元を隠して「ほほほ」と笑うのみ。

 スヴィア嬢とマロヌ姫もスルー。

 いっそ怖い。

 護衛騎士たちも見て見ぬふり。

 ここに俺の味方は一人もいないのか!?


「おお、これは……! ヒューバート王子殿下!」

「なんと、ヒューバート王子殿下よりも遅くなるとは一生の不覚……」

「え」


 扉が開いたと思ったら、なんかまた偉そうな人たちが入ってきた。

 三人のうち二人は見覚えがある。

 一人はミドレ大公。

 なぜかソードリオ王の後ろに並び、まるで舞踏会などの挨拶待ちみたいなことをしてある。

 すでに嫌な予感。

 しくじった、ナルミさんかデュレオかディアスを連れてくればよかった。

 ナルミさんに「そろそろ一人で外交にも慣れなさい」と言われたから「はーい」って来たけどやはり俺には早すぎたのでは!?


「ヒューバート王子殿下、お久しぶりでございます。お誕生日と聖女レナ様とのご結婚も誠におめでとうございます。ミドレ大公として参加いたしますが、あくまでもルオートニス王国傘下の者としての自覚を持ち、今回の祭典に臨む所存ですので何卒お許しを」

「あ、はい」


 やっぱりあかんかった。

 大公がなぜか膝を折って頭を下げる。

 その上でそんな挨拶。

 やばいって。

 誰か助けてって。


「ヒューバート王子殿下、覚えておいでではないかもしれませんので、改めてご挨拶をしたく。私はエルダー・ソーフトレス。戦後王位に就きました、ソーフトレスの国王にございます」

「待ってください、なぜ膝を折っておられるのですか」

「こ、この度の戦争において、ルレーン国を救い、調停依頼をお受けくださっただけでなく、石晶巨兵(クォーツドール)の技術を和平と不可侵条約という願ってもない好条件でお譲りいただいたご恩は返しきれぬものでございます。その上、食糧や戦後処理の支援までしていただき……」



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