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ルーファス・カナタ(4)

 

「そういえば貴様、元々右目は義眼だったな」

「うむ。母が研究していたダークマターを人工細胞に反映させて、遺伝子データを注入することで本人の人体部位とほぼ同じものが出来上がる。拒絶反応も出ない、まったくの新素材の研究だ。問題は着色ができなくて、どうしても奇抜な色になりがちなところだな。俺の場合は角膜の色が素の左目と同じにならなかったことだ」


 ちょっとマジでなに言ってるのかわかりませんね。

 ラウトの言う義眼、は俺もみたことがある。

 初めて出会った時のディアスは右目が紫、左目は青だった。

 今は神格化した時に肉体が完全に回復して、右目も左目と同じ澄んだ淡い青に戻っている。

 まあ、イケメンはどう足掻いてもイケメンなので片目の色がどうとか関係ねーけどな!

 それよりも、本人の目の前でこんな話する神経よ……。

 ああ、めちゃくちゃ睨まれている……!

 それはそう!


「えーと、答えは今でなくてもいいが、できれば一週間以内に——」

「甘い」

「……」


 話を元に戻そう。

 そう思ってルーファスに体を向けたら横から冷たい声で非難された。

 この声は、ラウト。

 甘いのはわかってんだよぉ。

 でも階級関係でこいつが一番適任でしょ〜?

 捕虜虐待反対。


「……っ」


 と、若干甘く考えていたらラウトの顔を見て体が固まる。

 金に光る目。

 まずい、普段のラウトではなく怒りで戦神化してる。

 なんで?

 そこまで怒ることあった?


「甘い。甘いぞ、ヒューバート。こいつはお前の甘さに感謝するようなタイプの人間じゃない。俺と同じ、お前のような“善人”を利用して平気で裏切るタイプの人間だ。重要な役割を任せていい人間じゃない」

「え、いや、でも階級的に……」

「関係ない。他の者にやらせろ。他にも捕虜はいるだろう。そちらの者たちに、昇進をちらつかせて書状を持たせるなりなんなりするがいい。()()()()()だ、絶対に」


 そう言ってラウトが檻の鉄格子を掴む。

 俺を睨んでいたルーファスの表情が、凍る。

 威圧感が溢れて、場の気温が下がっていく。

 あの目で、あの顔で見下ろされて、よほどの変態でない限り普通の人間は神の畏怖に心をやられる。

 多分何度もやられたエドワードは、自分に向けられたわけではないのに奥歯も全身もガタガタ鳴らして震えているではないか。

 可哀想!


「お前は俺と同じタイプだな。だが、お前と俺は決定的に違う。お前には守るべきものがある。そういう目だ。そのためならなんでもする。それを守るためなら、他人などいくら死のう不幸になろうが関係ない。……殺しても心がまったく傷まないタイプだ」


 自分に向けられていたらと思うとゾッとするが、ラウトが浮かべた笑みは本当に美しい。

 元が綺麗な顔だから、楽しげに笑うと目を惹かれる。

 問題はラウトが笑っている理由だ。

 ルーファスを見れば、さすがに直接的な威圧を向けられて震えている。

 それでも目が離せない。

 なぜなら、ラウトは美しいから。

 あのまま恐怖に呑まれて、自我を失ってもいいのではないかと錯覚するほどに——神という絶対的なものにひれ伏せるのは幸せであるとさえ思うほどに。


「ラウト、怖い」

「…………」


 なので、素直に伝えると萎えたような表情で振り向かれる。

 だって、ねぇ?


「俺はお前の方がたまに怖い」

「なんで!?」

「俺も〜。王子サマ鈍すぎて怖いわ〜。五号機の坊やの威圧って魔法的なものじゃなくて、生き物としての格の違いからきてる、生物的なものだよぉ? なんで通じないの? 怖」

「え、そ、そんなこと言われましても?」


 ファントムとデュレオに言われると、俺がおかしいみたいではないか。

 解せぬ。


「単純にヒューバートも人間離れしているんでしょ。私たちはそもそも人間ではないから効かないけど」

「え〜、王子サマが人外レベルとかクソウケる」

「俺もこの人外と一緒にされるのは心外です、ナルミさん」


 いや、デュレオのこともなんだかんだちょっとだけ尊敬はしている。

 歌に関してはマジですごいと思ってるし、上手い。

 レナに“歌い手”として色々教えてくれるのも感謝してるけども。

 だがしかし! それを上回ってくる性格の悪さ。

 不本意です、ナルミさん!


「いや、真剣に考えておいた方がいいよ、ヒューバート。ラウトの威圧が通用しないのは、それだけ人から離れている証だ。レナは大丈夫?」

「あ、は、はい……手が震えていますけど、自分に向けられたものではないので……」

「え……」


 振り返ると、エドワードほどではないが震えたレナ。

 あ、あれぇ!?


「だ、大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です。さすがヒューバート様ですね」

「いや、そんな……」


 え? マジで? 俺が特別鈍いとかではなく?

 自力のギア上げで、ギア3までなら上げられるようになったけど……それの影響?

 ギア5への到達は神への至り。

 地味に人間離れ始まってんのか? ええ?


「ラウトはすぐ威圧を使うから仕方ないな。ルーファス、体調に変化があったらすぐに言いなさい。ヒューバートの提案も、きちんと考えておくように。俺はあくまでルオートニスに身を寄せる身故、ルオートニスに不利になるようなことを画策するのであれば宇宙に協力はしないぞ。お前一人の我のために、宇宙全体の益が損なわれぬようによく考えなさい」

「っ……」


 さすがディアスである。

 とても優しい物言いだが、ディアスも神だからある程度の威圧はどうしても纏ってしまう。

 ラウトほどではなく、俺以上に言葉に重みが含まれる。

 あとはルーファス次第だろう。


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