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落とし前(2)

 

「えっ。アレって素材が足りないって言ってませんでした!?」

「ディアス・ロスの場合その“素材”から作ってるんだわ。無自覚の天才は本当ムカつくよなぁ」

「……!」


 ディアスマジか。

 本当にすごいんだ、ディアスって。

『神の手を持つ悪魔』でさえ開発できなかったGFエンジンの外装。

 それを素材から作り上げるとか……。


「え、えーと、じゃあこの黒い剣は……まさか」

「そうだ、ディアス・ロスの持つ剣と同じ素材で一から作れるか試した。成功だな。研究塔地下で脳みそも育成中。元々拡張済みの脳だから、慎重に肥大化させなければいけないがな」

「っ」


 あの三人か。

 ナルミさんが一体使っているから、あれの残り。

 人型の人形。

 人間の遺伝子を用いた“ヒューマノイド”という人間に限りなく近い不死性を強制されたなにか。

 その始祖がデュレオ・ビドロ。

 そして最高傑作と言われるのが不死でありながら老化と若返りも持つ、クレア・ビドロ。

 それを模した彼らを人ではなくモノとして運用しなければならないのは、俺としても気分が悪い。

 でも、そうしなければ世界を救う方法がない。


「と、いう感じで副産物のようなモノだからとりあえず使ってみ。使い心地は調整していけばいい」

「あ、はい」

「それと、今回の攻撃の要は宇宙のDエリア。ラウトが“拾って”きたパチモンからアクセスしてハッキングしたが、地上からでは手が出ねーな」

「じゃあ片っ端から落ちてくる殺戮兵器を破壊するしかないんですか?」


 それはさすがに途方もないのでは。

 ……ハッキングはとりあえず聞かなかったことにするとして。


「ディアス・ロスとラウトがマジにやればできないことはねーんじゃね?」

「い、いえ」


 できそうだけれども。


「まあ、でもお前の思っている通り宇宙から殺戮用ドローンを降下させるのに、地理情報と処理状況を転送している中継地点がある。いくつかはルオートニスの結界上空に調査用ドローンとして点在しているが、その調査用ドローンを遠隔操作している機体を二機確認した。こいつらを潰せば宇宙側はリアルタイム情報を目視で確認することになるから、落下地点にズレが生じるだろう。ただ、そろそろ聖女たちの結界でも耐えきれない量の殺戮用ドローンが降下して結界上に溜まってきている。まずは結界上にこびりついている、殺戮用ドローンを先に始末した方がいいだろう」

「お、おお……」


 どういう原理かわからないが、ファントムの手元にルオートニスとセドルコ帝国のミニチュアのような3D地図が浮かび上がる。

 その上に結界が薄らとした白で表現されて、その結界に黒いインクが広がっていく。

 小さな赤点が宙に点滅しているが、おそらくこれが調査用ドローン。

 そして、調査用ドローンより大きな点滅しない赤点が——調査用ドローンを遠隔操作している機体か。

 どちらもルオートニス全土を旋回するように動いている。

 移動しているのは厄介だな。


「一機は俺が直接叩き潰してもいいですか?」

「…………。へえ? なんで?」

「結婚式を邪魔されたんで、八つ当たりです!」

「なるほど。下手な建前よりわかりやすくていいな。じゃあもう一機は俺にやらせろ」

「わかりました」


 ファントムならラウトほどやりすぎないだろう。

 なぜならこの人、宇宙の作った二足歩行兵器を回収して調べたいだけだからだ。


「一応言っておきますけど、パイロットも殺さないでくださいね」

「ああ、そういやぁパイロットの体も調べたいって言ってたっけな、ディアス・ロスが」

「えぇ……」


 多分変な意味ではない。

 ディアスのことだから、寿命が短くなっている宇宙の人類の遺伝子を調べたいんだろうな。

 長い年月デュレオの食人細胞を原料にしたナノマシンを、投与し続けた人類の結果。

 俺もできれば宇宙の人類のその悩みを解決できればと思う。

 まあ! それは向こうが落とし前つけたあとだけどな! がははははは!


「ジェラルド、聞いていたな?」

『聞いてたよ〜。結界に乗っかってる宇宙の兵器はこっちで始末しちゃっていいの〜? 本当に〜?』

「もちろん。っていうか、ギア・フィーネでも時間かかるんじゃないか? この量」


 国土全体に塗りたくられたように増えていく、宇宙から落ちてくる殺戮ドローン。

 一機でも侵入されれば民に被害が出る。

 さすがに広範囲すぎるのでは、と思ったが通信端末に出たジェラルドは不思議そうに首を傾げた。


『え〜、余裕じゃないかなぁ? っていうか、本当にやっちゃうよ? ラウトが手加減するのやめちゃうよ?』

「まあ、今回は人間乗ってるんじゃないし」

『そっかぁ。じゃあ今結界に乗ってるやつはこっちで全部始末しちゃうねぇ?』

「う、うん?」


 あれ?

 量と撒かれた距離を考えると清掃にはそれなりの時間がかかると思っていたんだが、ジェラルドは笑顔で「おっけぇ」と手を振る。

 ……もしかして俺、また誤指示やっちまったか?


「ハッハー! 面白れぇ! 千年前にはできなかったギア・フィーネ同士の共闘! 『ハッキング』の本来の使い方——『思考共有』と『思考加速』の連結か! いいぜ、やってみな! ベースはお前だぜ、ジェラルド・ミラー!」



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