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対策会議(5)

 

 実際ディアスが作り、トニスのおっさんたちがかつて住んでいた[死者の村]は、各国が口減らしで結晶化した大地(クリステルエリア)に捨てた子どもたちを集めて作られたという。

 ミドレのように食べ物を作ることもできなくなった土地は、王侯貴族でさえ飢えていた。

 コルテレとソーフトレスのようにどんどん狭まる大地に、人々は生きるスペースを奪い合う。

 ミレルダ嬢の言う通り、これから土地は増えていく。

 大臣たちには「クレアに喰われた」という意味がわからないだろうけれど、土地が増えればエネルギーが生産される機会も増えるかもしれない。

 いずれ必ず、足りなくなる。


 “エネルギーを生み出す”という概念を維持するための生命エネルギー。


 デュレオの言う通り、宇宙のコロニーを地上に落としてクレアとギアンに“喰わせれば”時間は稼げるだろうけど、俺はそれをしたくない。

 三号機に宿っていたアレン・ザドクリフには、まだ会ったことはないけれど、彼は『犠牲を出さないために』自分の人格データを三号機に遺した。

 俺も同じ意見だし、それならやはりアレンさんに話を聞いてみるのもありだ。

 ジェラルドにあとで相談しよう。


「——未来的、ね。そう言われてしまうと納得するしかないな。いいでしょう。ヒューバート、では——正式にセドルコ帝国に和平を申し込みなさい」

「え」


 俺の意思を聞いて、ナルミさんが珍しく真顔で提案してきた。

 今回の件でセドルコ帝国は宇宙の戦力を借りているのがはっきりしたし、宇宙側も損失が大きすぎる。

 二度も“殲滅”を食らったのだから、当然だ。

 宇宙の全戦力がどれほどのものかわからないし、今までの攻撃が屁でもないにしても殲滅二回は字面が痛手だろう。

 宣戦布告して、戦争を仕掛けてきた側がこのようにフルボッコでやり返され、首都が壊滅とくれば戦意はガチボコに削り取った状態。

 少なくとも有力貴族も残っておらず、現在のセドルコ帝国はたとえ皇帝候補が全員生き延びていたとしても治世が回る状態ではない。

 また、その治世も回復するのには時間がかかる。

 辺境貴族が仮の首都を選定して、喧嘩を売ったルオートニスへの対応を検討するにしても、数日はかかるだろう。

 こちらはその間に和平を申し込み、戦争の責任と今回の帝都陥落の責任を、宣戦布告に同意したすべての皇帝候補たちに取らせるって寸法である。

 皇帝候補たちは生きていても、国の中で無傷では済まない。済まされない。

 帝都に住む国民の命もほぼ奪われた。

 貴族たちも黙っていない。

 彼らに従えば、次は自分たちが『神』の怒りに触れるのだ。

 皇帝候補たちは自ら皇帝への道を閉ざしたことになる。

 平和を申し入れ、その責任を皇帝候補たちに追及させるのが俺たち“被害国”の仕事ってこと。


「……ちなみにさ、皇帝候補って五人いたでしょ? 全員死亡だった場合は……」

「その時はセドルコ帝国で、一番爵位が高い者にまとめて責任を取ってもらう。皇帝候補たちの所在は確認できればいいけれど、実質どうでもいい。生きていても死んでいるようなものだからね。こんなことがあったのに、まだ自分が国のトップになれると思っているのなら、それは国民が許さないと思いますよ。たとえ貴族が旗印に掲げようとしても、内戦待ったなしでしょうが、この状況下で内戦する力もないはず。少なくとも国民にはそっぽをむかれます。そこにルオートニスが国力で手を差し伸べれば、武力など使わず瓦解させるのは容易い。あとはこちらにほどよくまだ力のある貴族を取り込み、優しくお世話をしてあげればセドルコ帝国はなにもせず消えます」


 にこり。

 俺の質問に数倍のセリフ量で返ってきた今後のご予定。

 セドルコ帝国終了のお知らせがエグすぎる。

 頭を抱えつつ、ある意味平和的でいいのかなぁ。


「……では、医者と医療品、食糧物資をかき集めよう。セドルコ帝国にはルオートニスの一部になってもらうとして、皇帝候補たちの生死と所在もできれば調べてほしい。拘束はさせてもらうが、殺す必要はない。彼らの処遇はセドルコ帝国の民意で決めてもらう。セドルコ帝国で今一番爵位の高い者が、代理政権を立てたのちにルオートニスから和平を申し込む。宇宙の者たちも含めて話し合いの場を設けたい、と。それでよいな? ヒューバート」

「はい、そのように」

「うむ。あとはこちらで上手くやろう。お前は世界の命運を考えなさい。話し合いの場が整ったら呼ぶ。まずは目の前のレナとの結婚式に集中しなさい」

「っ、あ、ありがとうございます、父上」


 え? 父上、神?

 ルオートニス守護神に父上を入れるべきでは?

 祀って然るべきだと思わん?

 本当にかっこいいよぉ!

 俺やっぱり父上みたいな王になりたいー!

 ……『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』の漫画では、俺の父上と母上は結晶病に侵されて死んでいたが……ラウトが結晶病の発症を抑えてくれるようになり、父上も母上も健在。

 多分今後症状が出てもレナや他の聖女候補が治してくれる。

 俺は俺だけでなく、俺の父上と母上の死亡フラグもへし折れたんだ……!

 それが一番、嬉しいかもしれない。


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