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番外編 戦神(2)

 

(むしろ初心者すぎて操縦もめちゃくちゃなヒューバートの方が、よほど動きが読めない)


 あれは、マジである。

 あまりにも予想ができなさすぎて、初めてアベルトと戦った時を思い出した。

 本当に、四号機の登録者は予想できないことばかりする。


(それに——癪だがブレイクナイトゼロが自分の体のように動く。ファントム……『神の手を持つ悪魔』の実力は聞きしに勝るな)


 オーバーホールで経年劣化した部分を総入れ替えしてもらい、洗浄とメンテナンスを行ってもらった結果、千年前の最終戦よりも思い通りに動く。

 タイムラグがない。

 鳥肌が立つレベルで、機体の性能が引き出せる。

 ブレイクナイトゼロがいかに整備不足だったのか思い知り、それはちょっと反省した。

 もちろん、彼がプロのメカニックだからだろうけれど。

 それにしてもここまで違うと、アベルトに一度も勝てなかった理由に整備士の腕も関わっていると思えてしまう。

 アベルト自身がどんどん操縦テクニックを上げていったのもそうだが、彼の隣に『神の手を持つ悪魔』がいたのでは最初から勝ち目がなかったのかもしれない。

 それほどまでに、機体の動きが違う。

 いっそ楽しくなるほどに、ただのギア2でギア4の時のような動きができる。


(これでギア5まで上げたらどうなるんだろう)


 もはや娯楽だ。

 一方的にギア・マレディツィオーネを甚振りながら、笑みを深める。

 ギア・マレディツィオーネのパイロットも、もう肌で理解しているだろう。

 ——遊ばれている。

 機体性能の差など些事。

 単純に、余力を残した状態のラウト・セレンテージという登録者に、実力で勝てない。

 なぜならラウトはギア・フィーネのギアを先程よりも一段階落としている。

 機体性能はほぼ互角のはずなのだ。

 完全に弄ばれて、その上で甚振られている。

 馬鹿にされている。

 感じ取れる、ギア・マレディツィオーネのパイロットの心情。

 今にも泣きたい気持ちで、大きくなる死への恐怖だけで抵抗している。

 腕に自信はあったのだろう、最新鋭機のパイロットの選出されて。

 千年前の、エースパイロットというやつだ。

 果たして戦場の経験はどれほどのものか。

『ハッキング』の影響が小さくなり、いくつかの二足歩行兵器が援護のために駆け寄ってくるのが見える。

 中には飛行可能なタイプもおり、そちらの方が速い。


 が——


『来るな! 来てはダメだ!』


 盾の先端を空へ向ける。

 ビームライフル搭載のそれで、近づく機体はメインカメラを撃ち抜く。

 アレらはまだ殺さない。

 殺す時は——世界の礎になってもらう。

 どうやらラウトの権能は、この世界のエネルギー変換機能もついているらしい。

 メインカメラを撃ち抜かれた程度で自分が負けた、戦いが終わった、などと考えるような腑抜けには、戦争というものがどういうものなのかをしっかり思い知らせなければならないだろう。

 寿命が短くなったことで宇宙もまた、久しく“戦争”を忘れていたと見える。

 落下してきた二足歩行兵器と、陸から駆け寄る二足歩行兵器に対して権能を発動させた。

 見るだけでいい。

 それだけで、敵機はたちどころに結晶化していく。


『わぁああぁぁ!?』

『なんだこれは!? なんで! ぎゃああああ!』

『助けて——!』

『ッ!』


 断末魔を聞いたギア・マレディツィオーネのパイロットの、息を呑む音。

 震えて軋む心の音までも感じ取れるようだ。

 ラウトは笑みを深める。

 戦うということ。戦争がどういうものなのか。

 しっかり理解してもらえただろう。

 後退るギア・マレディツィオーネに、ギア・フィーネ五号機がどう見えるのか、手に取るようにわかる。


「そろそろ理解したか? 自分たちがなにを侵略しようとしていたのかを。侵略しようとすれば、当然やり返される。千年前もそうだった。それなのにまだ人類は学ばない。“奴”に言われたんじゃないのか? 貴様らは馬鹿者以外の何者でもないな」

『っ、ぐっ……う、ううう!』


 力の差というものを、もう十分に理解しただろう。

 だからそろそろ、これの役目は終わりだ。

 ギア・フィーネのメインカメラとラウトの両眼の色が、入れ替わる。

 2から3、3から4、4から5へ。


『なっ……』


 純白の機体が黄金に色が変わり、無数の白い光が機体を駆け抜ける。

 白いマントのような光がオーロラの如く空へ広がり、あらゆる機械は支配下に置かれた。

 逃げ場などありはしない。


「全員殺す。祈る間も与えない。お前たちが俺に対して不快感を与えたのはこれで二度目だ。墜ちろ。民を顧みぬ王などこの世に必要ない」


 ランスを地面に突き刺して、右手を掲げた。

 ブレイクナイトゼロが手を振り下ろした時、成層圏をゆっくり落下するコースにいた衛星兵器が軌道を変える。

 あと三時間もすればセドルコ帝国、帝都に落ちるだろう。

 民も死ぬが、なにより無駄な血ばかり流す皇帝候補たちも誰一人助からない。

 帝都に住むすべての命は、その衝撃波と結晶化で狩尽くされる。


『な、なにをした!?』

「すぐわかる。お前は人の心配より自分の心配をしろ。なにと対峙しているのか、まだ理解していないのか? そもそも貴様は俺の逆鱗をとうに逆撫でしているんだぞ。その——俺のブレイクナイトゼロを模した機体で。存分に」

『なに!?』




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[一言] いきなり敵が終わった!
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