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研究塔(3)

 

「この施設は結晶化した大地(クリステルエリア)に呑まれた、太古の施設の生き残りだそうです。およそ千年から八百年前の物と推察されており、失われた技術——科学が国内で唯一、当時のまま残されているといいます」

「え! 当時って……千年から八百年前のものってこと!?」

「らしいですよ」

「ええ……!」

「すご〜いね〜」


 ほえー、マジか!

 完全に剣と魔法のファンタジー世界だと思ってたけど、結晶化した大地(クリステルエリア)に世界が呑まれる前の技術力って、前世よりも進んでたのか!

 うわー! 結晶化した大地(クリステルエリア)により一層夢が広がるなぁ!


「こんなに技術力が退化していたと思うと、この施設がまだ使えるのは奇跡だな」

「はい。国内でも最高峰の場所です——が……その、見ての通り現代の技術力とはかけ離れているため、学院内でも成績上位の者、および太古科学を研究する研究者にしか……そもそも入り方がわからないというか」

「え? ……まさか?」

「この研究塔を使う許可はいただいているのですが、実際九階に上がれたことはありません!」

「おいいいぃぃぃ!」


 ランディの腹立つ笑顔に脱力する。

 そりゃ父上もあっさり許可くれるよ!

「お前たちの研究は実に興味深い。もしかしたら研究塔を使えるかもしれないな。よし、許可を出そう! 頑張れ!」って、そういう意味かー!


「っていうか、でもつまり、この施設をもう使ってる人たちって——」

「塔の登り方を解読した人たちってことだね」

「なるほど」


 前世よりもさらに技術力の高い塔。

 けど、舐めてもらっちゃ困るぜ。

 実は一階に入った時からピーンときていたんだ。

 前世のSFロボットアニメにあるあるの、これ!


「俺に任せろ!」

「ヒューバート、登り方がわかるの?」

「多分まずはこれだ!」


 と、俺が指差したのはカウンターにある黒いモニターだ。

 ガラス……なのかな?

 素材はわからないが、それに触れると光の線が上下に動く。

 多分、指紋とかスキャンされてる。


「う、動いた!?」

「わー、わー! すごいや、ヒューバート! さっそく動かすなんて!」

『未登録です』

「!」

「「「「しゃ、喋ったーーー!」」」」


 俺以外の四人が叫ぶ。

 俺も、危うく叫びそうになった。

 今の……日本語?

 いや、少し訛りみたいなのがあったけど、前世の、日本語に近い言語。

 文字も浮かび上がるが、『未登録』と——形が崩れてはいるが日本語、だ。

 なんだか一気に心臓が冷たくなる。

 どうなっているんだ?


「……施設九階を、研究室として登録したい」

『了解。氏名を告げてください』

「ヒューバート・ルオートニス。他にも入室許可を四名の人間に出したい」

『入室登録者の氏名を告げてください』

「みんなの名前を、この機械に教えてあげて」

「っ……」


 みんなが固まって、目を見開いている。

 ああ、俺が日本語っぽい言葉を話したから、びっくりしたのね。


「父上にヒントをもらっていたんだ」

「そ、そうだったんですね」

「びっくりした〜」

「名前を言えばいいんですか?」

「そう」


 ……って言っても、俺が一番びっくりしてるよ。

 まさかこんなところで日本語っぽい言葉を聞くことになるなんて。

 全員がそこに手のひらの指紋と名前を登録すると、入り口から正面にあった一際大きな柱——エレベーターの扉が開く。

 その扉が開いた瞬間の、みんなの仰天ぶりよ。

 ぎゃーとかわーとか、レナのきゃー、はかわいかった。


「よし、行こう」

「こんな仕掛けがあったとは……す、すごい、殿下すごいです!」

「ヒューバート様、本当にすごいです!」

「これからもここに手をかざすと、この仕掛けが動くのかな?」

「そうだと思うぞ」


 全員が乗り込んだのを確認し、九階のボタンを押す。

 十階は管理系のフロアと聞いているけど、他のフロアを使っている研究者が調べたのだろうか?

 っていうか、現代人がこの塔の仕組みを理解して使いこなすって相当だぞ?

 ……もしかして、俺と同じ転生者、だったりして。

 研究者についてなにも聞いてないけど、休みに城に帰ったら父上に聞いてみよう。


「着いたぞ」

「っ!」


 ドアが開く。

 ドアが開いた瞬間真っ暗だったフロアが、唐突に明るくなる。

 目を見開いた。

 想像よりも、天井が高いし、すげー広い!


「うっわ」


 それになにより床と壁のか細い隙間が光っている。

 電灯などなく、それでより広く感じるのだろう。

 なにこれ、どうなってるの?

 なんか一番奥の部屋とか見えないんだけど……広大すぎない?

 どうなってるのこれ。


『オヤオヤ〜? 新しい研究者さんかな〜?』

「!?」


 さすがの俺も自分の生きていた時代よりも科学が進んでる時代とか、経験ない。

 混乱していると、聞き覚えのない声がしてランディが俺たちの前へ出て剣の柄を握る。


『ヤダヤダー、いじめないでおくれよー。ボクはこの施設の管理人だよー』

「な、なんだこれは!」

「落ち着け、ランディ。……お前がこの施設の管理人?」

『そうだよー』


 ……鳥型の、ロボットだ。

 多分鳥のモデルは鷹。

 デカいもん。

 でも羽ばたいて浮いてるわけじゃない。

 丸く細長いゴミ箱みたいなものに乗っている。


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