予定がミチミチ
そんなに頻繁に行く必要はないと思っていたのだが、セドルコ帝国側が軍を動かして国境付近に集結させているという情報が入った。
国の防衛のために結界を張る役割の聖女を派遣するのが国の方針。
候補たちもデュレオの指導でかなり強い力を持つようになっていると聞いているが、王家の聖女と聖殿の聖女のトップツーが両方国境に交代で結界を強化したまま維持しなければならないというこの状況は……セドルコ帝国がからの『圧』というかまって攻撃なのだろう。
他国との繋がりを得たルオートニス王国は、もはやセドルコ帝国にとっていつでも侵略していい隣国ではないということだ。
いや、そもそも侵略よくないこと。
蛮族かよって話だけど。
「殿下はセドルコ帝国に行く予定とおっしゃっておりましたが、その気持ちはまだお変わりないのですか?」
「タイミングが難しいとは思っている」
ランディと話をするのは楽しいが、そろそろ学院から出なければ。
わざわざ三年のランディが、二年の教室まで迎えに来てくれているのだから。
……あと学院で行う王子主催のお茶会の準備もしなきゃいけないんだよなぁ。
母上は「学生のうちに夜会の主催も経験しておいてほしい」って言うし。
でもそれは本当にそうだしね。
そんなわけで寮ではなく城に直帰ですよ。
「考えなければならないことが多すぎるけど、とりあえず今は結婚式に集中しよう。セドルコに行くのは卒業後になるかもしれないな。その時はランディに一度帰国してほしいかも」
「はい、もちろん!」
……なにが怖いって、セドルコに石晶巨兵を売り込みに行く時、シャルロット様とミレルダ嬢も楽しそうについてきそうなとこだよ。
そして、学院を出ると丸刈りからようやく毛が伸びてきたエドワードが頭を下げて迎えに来ていた。
ルオートニスに来てラウトに預けてから、人格否定を繰り返され、吐くほどヤバい訓練を日夜課せられ続け、なんならプライベートの時間すら与えられなかったらしいハニュレオの元王太子……エドワード・ハニュレオ。
現在は別人のように寡黙なポーカーフェイスの仕事ができる男風になった。
今のエドワードならスヴィア嬢も見直す、かもね?
……まあ、若干……ラウトの調教が怖すぎるけど。
「ランディは卒業してからいつまでルオートニスにいる予定なんだ?」
「そうですね……師走と新年が忙しいと思うので、卯月あたりを目指そうと思っております。先方の都合もあるので」
「そうだよなぁ」
だとしたら様子を見つつ来年の卯月あたりを目標に調整するか?
ランディがいる間にセドルコに行きたいんだよね。
もう少し情報収集して様子を見てからだけど。
セドルコ帝国は本当に面倒くせぇみたいなんだよなぁ。
さて、一応ここで皇帝候補たちをおさらいしてみよう。
第一皇女セラフィ。
話を聞く限りファントム並みの唯我独尊な性格で、自分が皇帝になることになにも疑問を持ってないようだ。
第一皇子ステゴリー。
自分こそが皇帝に相応しいと思っており、姉セラフィが目の上のたんこぶ。特に仲が悪いと言われているのがここ二人らしい。
第三皇子エドリッグ。
皆殺しにしてでも自分が皇帝になると豪語しているらしく、エドリッグ派の家臣には本当に殺された者もいるという。
第四皇女ステファリー。
多少強引な手は致し方ないが民のためにも自分が皇帝になるべきだと考えているらしく、比較的対話で他の兄弟を治めているクッション役。
しかし、だからこそ宇宙側からは傀儡にぴったりに見える。
第五皇子クリード。
上で潰しあってもらうのを待っている狡猾な性格との報告を受けている。
しかし、さすがに帝位の空白期間が長くなっており痺れを切らしつつあるようだ。
そんな状況で宇宙の支援が入ったとなると、クリード皇子の動きは今後要注意だろう。
下手したら台風の目になるかもしれない。
……そう、宇宙の介入による変化が未知数なんだよな。
導火線の近くにバーナーって状況だろうか。
めっちゃ怖い。
皇帝候補全員に宇宙の介入があると思うと、迂闊に接触できないんだよなぁ。
あと、見た感じ第四皇女ステファリー以外話が通じなさそう。
他の四人がキツすぎて選択肢が一択。
でも、見るからに宇宙側もステファリー皇女を傀儡にしようとしてそうなんだよな。
ファントムとナルミさんが「片手間でセドルコの情報抜いてくるわ」ってしれっと怖いこと言ってたから、もう少し待っておくのもいいかもな。
やはり、目下俺の目標はレナとの結婚式だな……!
でも、結婚前にレナとちゃんと向き合っておきたい……!
「ハァ」
日曜日、レナに空けてもらおうかな。
できるだろうか?
とりあえず手紙を出してみよう。
あ、そういえば……。
「なあ、ランディはファントムの試験は受けたのか? シャルロット様の婿になるには、俺を倒せるやつでないと認めないって豪語してたじゃん」
「あ、はい。時間のある時に戦う予定はあるんですが……お互いに忙しくて予定が合わなくて」
俺とレナのデートみたいな言い方してるけど決闘の話だよな?
怖いて。
「た、戦うんだ」
「はい。ファントムに認められれば、シャルロット様の隣で生きる自信がつく気がするので」
「なるほど。がんばれ」
「はい」
小ネタ
ヒューバート「感想欄で『王苑寺ギアンはなぜギア・フィーネを五機しか作らなかったのか』っていう疑問があったけどなんで?」
ファントム「メタやめろ、と言いたいところだが今更だな。俺で答えられる範囲になるけど、多分シンプルに材料不足」
ヒューバート「材料不足かぁ」
ディアス「あとはおそらく戦力バランスを考えてのことだろう。五機以上あれば登録者次第で世界が滅ぶ」
ヒューバート「あ……」
ファントム「俺を見るな」
シズフ「そういえば俺の生物学的な意味での父親は、ギア・フィーネを揃えて世界統一がどうのと言っていたな」
ラウト「それでミシアは中立地帯や中立国にも容赦なく侵攻して、未発見のギア・フィーネを探していたのか」
シズフ「ああ」
ヒューバート(戦争法とかないのかこの世界。無法地帯すぎじゃない?)
ファントム「新参者の共和主義連が大国とまともにやり合ってたのはギア・フィーネのおかげだったしなぁ」
ディアス「確かに共和主義連合やカネス・ヴィナティキにギア・フィーネがあったら、戦争はもっと長引いていたかもしれないな。三号機と四号機がどちらかの陣営に渡っていたらと思うと薄寒い」
ラウト「そ、それはそうだな」
シズフ「登録者にもよりそうだがな。ザード・コアブロシアとアベルト・ザグレブだったからこそ、中立を貫いたのだろうし。あの二人以下の実力であればさほどな脅威ではない」
ディアス「そうして拮抗した結果戦争が長引くのだ。……そうだな、ギア・フィーネが六機、七機あったら……当時の情勢を思うと世界は滅んでいたと思う。もちろん登録者の体調や思想にもよるだろうけれど」
ヒューバート「なるほど……」
なお、別世界なシリーズだと自己修復機能がないパターンもあるので五号機以降、壊れた一号機のエンジン以外を別の機体に載せて『六号機』としたり同様に二号機のエンジンを別の機体に載せた『七号機』もあったりしますけけどその場合前登録者は基本死んでるんでそのパターンの話の時はたくさん死ぬ。登録者も死ぬ。容赦のない地獄へようこそ。になる。
この世界は王苑寺ギアンの中に神様がいたのでこの惑星の素材を用いて自己修復機能付きになっているし、そのおかげで素材不足で五機より後続機は作られず、また世界バランス的に五機より多いとマジ滅んでた予想をしていたので世界エネルギーアレソレをギア・フィーネでなんとかする場合の最低限保証が五機だったので五機しか作らなかった感があります。