無茶振りがひどい
王苑寺ギアンとクレアが世界を維持させるために、暴走してラウトの制御を離れた結晶病を利用し結晶化した大地を広げて人や動植物を取り込みエネルギーとしていった、この千年。
ゆっくりと終焉に向かう世界に、俺という異物が石晶巨兵を生み出してしまった。
石晶巨兵はギア・フィーネを目覚めさせるきっかけとなり、ギア・フィーネが目覚めたことで王苑寺ギアンが仕込んでいた一つの計画が実行可能になる。
五機のギア・フィーネの神鎧化と、神格化した五人の登録者を連結させて創世神化させる計画。
神は一人では足りず、神鎧化したギア・フィーネのエネルギーとそれを扱う“核”となる登録者を連結させて初めて創世神と同等の“神”が生まれるのだ。
わかりやすく言えば、連結させて一つにさる……融合、だろう。
「……それは……ヒューバート様たちが……い、いなくなるということですか……?」
「そうだね」
レナの震えた問いかけに頷く。
ジェラルドは「アレンさんが言ってたのはこれかぁ〜」としゃがみ込む。
どうやらアレンさんは、それを知っていて「犠牲の出ない方法」を模索してもらうために人格データを遺していたらしい。
優しい人だ。
「手っ取り早い方法はそれだろう。しかし、お前たちと一つになるというのは拒否だな」
「同じく」
「俺も嫌だな」
「ぼくも〜。みんなのことは好きだけど、みんなを好きって思うのはぼくが“ぼく”ってことだからだし〜」
「……そうだよねー」
ラウトを筆頭に、全員が拒否!
笑う。でも、ジェラルドの言う通りなんだよなぁ。
それに、個人的に王苑寺ギアンの思い通りになるのがむかつく。
俺が笑いながらジェラルドに同意したら、レナが安心して泣きそうになっている。
「でもまあ、そういうことだけど、じゃあどうする?」
と、ナルミさんが目を細めて問いかける。
そう、それだよ。
悩ましいんだけど、神鎧化したギア・フィーネ五機と神格化した登録者五人が必要なレベルの神——創世神をどうやって作る?
そもそもそれは作れるものなの?
「単純計算でギア・フィーネがもう二、三機あればいいのではないか? ファントム、お前はギア・フィーネを造れないのか?」
「シンプルな無茶振りがきたな。肝心のGFエンジンの構造がまるでわからんから無理だな」
「GFエンジンというのは……あの真っ黒い球体か」
「ああ」
オーバーホール中の五号機の中身を全員で見上げる。
中央に鎮座する、どでかい真っ黒な球体。
ブラックホールみたいな、そこだけ切り取られたかのような黒。
あれがGFエンジン。
……でも、なんか見たことがある気がするんだよなぁ、あれ。
どこだっけ?
「…………やはりディアス・ロスの剣と同じ素材ではないか?」
と、シズフさんがディアスの腰の剣を指差す。
ディアスの剣?
「あ! そうか、どこかで見たことある気がしてたけど、ディアスの剣だ!」
「はあ? 剣?」
「これか?」
と、腰から引き抜いた剣をファントムに差し出すディアス。
ドン引きした表情になるデュレオ。なんでだよ。
「…………なんだこれ」
「鉄に結晶魔石を砕いたものを混ぜ合わせ、高温と魔力で焼き上げ、雷魔法で打って形を整えたものだ。剣の作り方は知らなかったので、それっぽく形は整えただけだが」
「……鉄と結晶魔石を、混ぜる?」
ファントムがドン引きしているんだが?
「どうしたらそんな発想に……いや、待てよ。ナルミ、結晶魔石の外皮素材と中身の毒素の成分は?」
「外皮素材は多分含有率的にエアールミスリルとニッケルだろうね。ギアンが宇宙で見つけてきた謎素材。中身はデュレオとクレアに使われた、Bタイプの精霊結晶の粉末と水」
「いきなりファンタジー素材……」
精霊結晶ってなにぃ?
世界観変わりすぎてビビるんですけど!?
「精霊結晶は御菊名・イヴ・ルナージュが不死の素材を求めて地核付近まで掘り、発見した結晶のこと。あまりにも美しく、欠けても翌日には同じ形に復活していたことから奇跡の石として、あのゲス女の野望に用いられた。あれがなければあの女も不老不死なんて妄執に取り憑かれることは、なかったかもしれないね」
「そんな不思議な石が……」
「精霊結晶か……さすがにそんなものは手に入らないから——」
「「!?」」
スッ、とファントムがシズフさんに向き直る。
なにをする気だ、と思ったら。
「吐け」
……すごい無茶振りキターーー……。
「なにを」
「ケチケチするな。お前の権能『結晶魔石生成』だろう?」
「それはわからない」
「じゃあとりあえず吐け」
「…………」
こ、困った顔でこちらをチラ見されましても!
確かにちょっとヤバい当たり屋みたいな無茶振りされてるけど!
一昔前のヤンキーに絡まれてカツアゲされてるみたいな光景だけれども!
ラウトとディアスとデュレオまでドン引きしてるし!
「あ、あの……結晶魔石がほしいなら、貯蓄分を持ってきますけど」
小ネタ
ヒューバート「ディアスは秩序・善、シズフさんは中立・中庸、ラウトは混沌・中庸、ナルミさんは秩序・悪、デュレオは混沌・悪、ファントムは混沌・善って感じだよね」
全「???」
アグリット「突っ込みませんよわたくしめは」








