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「……っていうかあの言い方だと五号機の出力もっと上がるの……?」

「アレの八倍は上がると思え」

「ヒェ……」


 恐る恐るファントムに聞くと、そんなおっかない返事。

 今までもかなり震える威力だったのに、アレの八倍?

 それは一機体が出して大丈夫なの?

 衛星兵器級の威力が出るってことでは?

 や、やばすぎない?


「ねぇ、しばらく戦えないんだったら先にクレアのことを教えてくれない? 王子サマ」

「あ、えーと……」


 デュレオがソワソワしているので、先にギア4に到達した時の話をするべきだろうか。

 一応みんな揃っているしな。

 ここで相談してからしてから父上に話そう。


「ちょっと長くなるんだけど……」


 俺がギア4に達した時に王苑寺ギアンとクレアに聞いた話。

 この世界……結晶大陸(クリステル・アース)の前の世界……永遠に祝福された地球(ブレス・トワ・アース)が結晶の下に眠っている。

 それこそが“本来の”この世界……惑星の名。

 そしてその土台となっている永遠に祝福された地球(ブレス・トワ・アース)を維持しているのがクレアと、クレアの力を変換・制御しているのが王苑寺ギアン。

 しかしクレアだけでは“エネルギーを創り出す”概念の維持ができない。

 それを維持するためにクレアは自分の生命力を犠牲にしている。

 デュレオと同じ不老不死であるクレアは、いくら自分の生命エネルギーを消費しても死ぬことはない。

 けれど、そのクレアの生命エネルギーでも惑星一つのエネルギーを賄うことはできなかった。

 だから今生きている人たちを、ラウトが神格化した時に得た権能“結晶化”を用いて取り込み、エネルギーに変換して維持してきたという。

 それが侵食する結晶化した大地(クリステルエリア)であり、人を襲う晶魔獣の正体。

 このまま俺たちが石晶巨兵(クォーツドール)で結晶化した大地を癒し続ければ、近いうち“維持”に必要なエネルギーを上回る。

 クレアの生命エネルギー不足になれば、おそらくわかりやすい影響としてルレーン国の電気が停止するし大地に植えた植物が育たなくなると思う。

 ()()()()()()()()()()

 すべての“エネルギーの発生”が不可能になるのだ。

 クレアたちが維持しているのは、そういう“概念”だから。


「ずいぶん壮大な話だな」


 と、第一声はシズフさん。

 ……そういえばシズフさんとラウトは「今忙しい」ってさっさと現実世界に帰ってしまったんだっけ?

 つまりこの辺の話を、シズフさんとラウトは聞いていない。

 驚いているのは俺とファントム、ディアス、ナルミを除く者たち。

 ディアスとファントム、ナルミさんは知ってたんだな。


「ザード・コアブロシアは知っていたのか」

「ファントムだっつーの。……知ってたか知らんかったかというと知らんかったわ」

「え」


 床から立ち上がってソファーに座り直し、焼き菓子に手を伸ばすシズフさん。

 マイペースがすぎる。

 そのシズフさんがファントムに問うが、まさかの返答。

 それにしてはすごく冷静だったようですが!?


「当たり前だろう? “俺”がギア4になったのは千年前だぞ。千年後の事情なんて当時知るわけがない」

「では予測していたと?」

「正確には『百年後には滅ぶ』という推測を、王苑寺ギアンに聞いていた。だが、そのあたりのことは情報としてアベルトとアレンと共有していたから、あの二人がなんとかすると思っていたんだ。俺はただの人格データに過ぎないからな。あまり世界の未来に興味はなかった」

「ふむ」

「ディアス・ロスは驚いていなかった」

「俺もハニュレオでギア4になった時に王苑寺ギアンに聞かされていた。対処方法としてすべてのギア・フィーネの登録者が神格化し、ギア・フィーネを神鎧化させて全機を接続して世界と繋げるしかない、と」


 そうらしいのだ。

 ギア・フィーネがすべて神鎧化すれば、それでようやく創世神と同等になる。

 そのために五柱——神格化した登録者が必要。


「あ! じゃあアレンさんが言ってたのはそのことかぁ!」

「へ?」

「アレン?」


 その名前は確か、三号機本来の登録者。

 戦いを拒絶するほど幼い頃に登録者になり、ザード・コアブロシアという王苑寺ギアンの人格データに上書きされて戦後になるまで体の主導権を奪われていた人だ。

 案の定、反応したファントム。


「えっとね、ぼく、三号機に初めて乗った時にアレンさんの人格データがギアンさんの接触から守ってくれたんだ〜」

「!?」


 王苑寺ギアンの接触!?

 ジェラルドに!?

 そんなのあったの!?


「王苑寺ギアン……」

「っ」


 ゾワ、と背筋が冷える。

 あまりにもわかりやすい殺気。

 振り返るとファントムから漏れている。

 薄葉甲兵装(ウスハコウヘイソウ)のゴーグルで表情はわからないが、口許だけなら冷静そうなのに……。


「アレン・ザドクリフが人格データを遺していたのか。意外だな」

「誰だ?」

「三号機の本来の登録者だ。幼過ぎて精神崩壊寸前に追い詰められたため、王苑寺ギアンの人格データが肉体の主導権を代行して使用していた。それが“ザード・コアブロシア”だ」


 ファントム自らシズフさんとラウト、ディアスに説明してくれたけれど、この三人、アレン・ザドクリフのこと知らなかったの……!?

 千年寝てたし、仕方ないのか?




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