ルオートニスの朝食会(3)
シャルロット様の覚悟は俺と同じ。
やはりシャルロット様は、他国の者の中では一番信用に足る。
「そのためにもルオートニス王国とは繋がりを強めておきたく思います。ヒューバート様、わたくしの親友ミレルダと、ジェラルド様の婚約をお認めくださいませんか?」
「はい?」
目が点になりましたよ。
え? 待って?
「ジェラルドとミレルダ嬢を!? えええええ!?」
思わず大声で聞き返してしまった。
しかし、それにミレルダ嬢は驚いた様子はない。
「その代わりルオートニス王国でヒューバート王子に近い人をシャルロットの旦那さんに紹介してほしいんだよね。できれば侯爵家以上の爵位がある人!」
「ミレルダ嬢は、え、い、いいんですか!?」
「シャルロットと離れるのは嫌だけど、ボクも貴族だから国のためになる結婚をするつもり。キミはレナちゃん一筋なんでしょ? 寝言でシャルロットを何度もレナちゃんと間違えてたもんね」
「ウワアアアアアアアアア!」
それは言わないでほしい、ものすごく!
まさかの暴露に礼儀もなにもなく立ち上がって、大声を出してしまった。
慌ててレナを見ると、真っ赤。
でも嬉しそうに俺を見上げている。
「そ、そうだったのですか? ヒューバート様……そこまでわたしを……?」
「あ、いや、それは、あの、ね、寝てたから……ね、寝てて側にいてくれたら、レナだと思うっていう……」
「そ、そうですか……」
とてもホクホク嬉しそう。
くっ、俺ではなく、レナの好感度を取りにきたのかミレルダ嬢!
「お、お待ちください! ジェラルド・ミラーはわたくしか、わたくしの妹の婚約者にしていただきたいですわ!」
まさかのここでソニア姫参戦!?
そうか、俺の体調を見に来るついでに、ジェラルドの婚約者の座を打診に来ていたのか。
っていうか、今ここで!?
「それならこちらはランディをアタシの婚約者に認めていただきたいわ」
「スヴィア嬢!? え、二人はそんな関係に!?」
「ち、違うわ。アタシはなんとも思ってないけど、国としてよ!」
「あ、なんだ……ビックリした……」
ランディがハニュレオにいる間に、スヴィア嬢とそんな関係になったのかと思った。
いや、半年くらい一緒にいてもそんな関係にならなかったのは、それはそれであれな気もするけど。
それでもスヴィア嬢はランディとの婚姻を望むのかな。
「い、一応本人と二人の実家にも聞いてみないといけませんので……。特にあの、ジェラルドの家は子爵家なので」
「え! あの子あれだけの能力があって子爵家なの!?」
ミレルダ嬢が本気で驚いている。
まあ、ですよね。
「ジェラルドが当主となった際は陞爵が決まっております。それでもミラー家は伯爵家。ザドクリフ嬢の実家は侯爵家とお聞きしておりますが、それでもよろしいのですかな?」
「ええ、構いません。私がジェラルドの家に嫁ぐ理由は、国同士のこと以外にザドクリフ家が受け継いできたギア・フィーネ三号機の登録者にジェラルドが選ばれたこと、そして我が祖、国守ファントムがルレーン国の秘宝である遺物エアーフリートをジェラルドに譲渡すると決めたからでもあります」
「え! そ、そうなのですか!?」
それも初耳なんですが!
ジェラルドは三号機だけでなく、エアーフリートも受け継ぐの?
え、それってやばくない……?
ルオートニス王国にルレーン国の秘宝中の秘宝を贈与するってことになるんだが?
「元々ザドクリフ家で管理していた三号機の登録者に、エアーフリートは渡すように言われていたの。だから三号機とエアーフリートはセットだと思って」
「ウッソ、マッジで……!? い、いいのですか? 本当に?」
「それが祖、アレン・ザドクリフの遺言なのです。ファントムも認めてしまったし、ザドクリフ家はそれに従います。ルレーン国女王陛下も、ファントムとザドクリフ家の意向を尊重してくださいました。だからこそボクとジェラルドの婚約は必要だし、認めてほしい」
「……なるほど……」
それほどの覚悟なのであれば俺からなにか言うことはできないし、うちの国は口出しができない。
父上に目配せでも同じように思ったのだろう、頷いてきた。
すまない、ジェラルド……お前にも拒否権はないぞこれ。
「わかりました。ミレルダ嬢をミラー家に嫁がせる旨は国としても個人としても了承いたしますし、俺が後ろ盾となりましょう」
「え? でも、そこまでしてもらうわけには……」
「いえ、ミレルダ嬢は命の恩人の一人でもありますし、そこまでの覚悟で来ていただくのならこちらも相応の対応をさせていただきます。……つまりあのー……一緒に、来るんですよね……? ミレルダ嬢のギア・イニーツィオ……」
「うん」
はい、ヤバいの追加されました。
「…………。では、ランディ・アダムスをシャルロット様にご紹介します」
「「えっ!」」
声を上げたのはスヴィア嬢とレナである。
レオナルドも同じように驚いた顔をしているが、シャルロット様にお前は無理だ。
歳の差はさしたる問題ではなく、単純に能力的な話。
「申し訳ない、スヴィア嬢。もしランディをそういう意味で気に入ってくださっていたのでしたら」
「全然そんなことはないけど!」
「ア、ソウデスカ……」
否定が早すぎる。