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ルオートニスの朝食会(2)

 

 元々デュレオを結晶柱から助けられるほどの力を持っているマロヌ姫。

 プレッシャーで力が不安定だと聞いていたけれど、ランディが上手く指導しているみたいだ。

 石晶巨兵(クォーツドール)が活躍している話を聞くとニコニコしちゃうな〜。

 ……俺がいない間、どんな感じに改良が進められているのか気になって仕方ない。

 早く研究塔に行きたいよ〜!


「西方諸国の方にも導入予定とお聞きしておりますわ」


 とシャルロット様に話を振ったのはミドレ公国のソニア姫。

 正直、この人とまた会うことになるとは思わなかったよね。

 歳の頃はスヴィア嬢より二つ年上。

 婚約者もいるらしいが、今回はお一人で訪問された。

 なにかしらの目的はあるのだろうけれど……ミドレが今、なにを求めているのかわからん。

 食糧と物資、労働力の支援は続いているが、首都を残してほぼ結晶病に呑まれたミドレは“復興”の方が先で、大公が完全にルオートニスの属国になるのを望んでいるそうだ。

 自国だけでどうにかする、というのが、マジで難しい状況だから。

 国民全体もその空気が強く、併合の方向で話を進めるつもりだと父上が言っていたな。

 つまりまあ、ソニア姫も近々ルオートニス王家に貴族として降爵する予定。

 大公には新たにルオートニス王国公爵位が与えられて、ソニア姫他大公の娘三人は養女として俺の姉と妹になる。

 籍だけ入るので、ルオートニス国内に来るわけではないけど。


「ええ、ヒューバート様の体調が整いましたら、改めて式典を開いて大々的に導入を宣言する予定ですの。ソーフトレスとコルテレの終戦記念式典にもご招待の予定ですわ」


 それは初めて聞きました。

 そんな話になっているとは思いませんでしたよ、シャルロット様。


「西方諸国は千年前の兵器に似た兵器をお持ちだとか」


 さらにソニア姫の眼差しが細くなる。

 ああ、ギア・イニーツィオの話ね。


「ヒューバート殿下は世界平和をお望みなのに、そのような兵器を有しておられる貴国と果たして友好を結ぶことなどできるのでしょうか?」


 おお?

 いきなりぶっ込んできたな!?

 ご飯の味がしないよ!


「まあ、わたくしなにを隠そうその兵器の操縦者でございますわよ」

「えっ」

「我が国の敵以外と、戦うつもりはございませんわ。それはギア・フィーネ四号機の登録者となられたヒューバート様とて同じことかと」

「え、ああ、はい。そうですね。……今回は無茶をしすぎました。結晶化津波相手でしたから、シャルロット様とミレルダ嬢の助力は本当に感謝です」


 はい、ここは素直に乗っかっておきましょう。

 俺も千年前の最強兵器、ギア・フィーネの登録者だというのは隠し通せないしね。

 そう答えればソニア姫の驚いた表情。

 そのあとすぐに「結晶化津波なんて、恐ろしいですわ」と頬に手を当てる。

 話を逸らした……さすがだ。


「シャルロット姫は淑女に見えて、な、なかなかに荒々しい方なのかな」


 父上……ビビりすぎですよ。


「どうでしょう? ディルレッド国王陛下も、目の前で民が脅威に襲われていれば、剣を抜くと思います。守るための力です。ヒューバート殿下は——言葉ではなくすでにその力で示してくださいました。わたくしとて同じですわ」

「ふ、ふむ」


 そうですよ、と父上に頷いてみせる。

 実際宇宙の脅威はギア・フィーネだけでは対処できない。

 おそらく本格的に戦争になるのなら、シャルロット様たちのギア・イニーツィオにも戦ってもらうことになる。

 いきなりルレーン国の港町に衛星兵器でぶっ放してきたんだから、シャルロット様の内心は穏やかではないはずだ。

 この辺の落とし前もどうつけさせるべきか。


「シャルロット姫様、あの」

「はい。なんでしょうか、スヴィア様」

「ルレーン国は、宇宙から攻撃を受けたと聞きました……せ、戦争に、なるのですか?」


 ハニュレオの耳にも入っていたのか。

 他国の情報収集はしっかりやってるみたいでなによりだけど、ここで話す話ではないよスヴィア嬢〜!


「なるかもしれませんし、ならないかもしれません。宇宙の我々への行為は明らかな敵対行為ですが、幸いヒューバート様のおかげで人的被害は出ておりません。ルオートニス王国側も、襲ってきた宇宙軍は壊滅だったとか」


 はい。

 うちのシズフさんとデュレオが好き放題やらかしてくれましたので。

 ちょっとオーバーキルのレベルです。


「意気揚々、勝てると踏んで仕掛けてきて出鼻を挫かれた状況でしょう。相手の出方次第で和平に持ち込むことも不可能ではないかと思いますわ」

「そうですね」


 と、これに同意したのは俺である。

 千年前の状況でも衛星兵器とほぼ武装していない町一つへの攻撃。

 それをどちらも完膚なきまでに叩きのめして、全滅だ。

 なんなら敵旗艦は拿捕。

 捕虜はデュレオが大半を殺し合せ、食べてしまったのでたったの五人。

 彼らは今、城の地下で情報の聞き出しを行なってる。

 ただ、デュレオがやりすぎてまともに話が聞ける人間が一人しかいないらしい。

 やりすぎなんだよなぁ。

 俺はその辺に関わるの、もう少し元気になってから、ということを釘刺されてます。

 はい、プロに任せまーす。


「それでも話し合えないというのならわたくしの国も戦います。わたくしもこの命をかけて、民と国のために全力を尽くしましょう」


 ——たとえ、他者の命を奪うことになったとしても。

 言葉にされずとも目を見ればその覚悟が伝わってくる。




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