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研究塔(1)

 

 王家派と中立派からはかなりの拍手をもらった。

 片手を掲げて、反対の手で俺の背を支えてくれる父上を見上げると、微笑みかけられる。

 じんわりと、この優しく偉大な人の跡を継ぐのだと思うと今までの頑張りが報われるような気がした。

 でも、まだまだ頑張らなければ。

 世界は終末。

 気を抜けば結晶化津波に呑み込まれて終わってしまう。

 レナの負担を減らし、より多くの民を結晶病から救えるように——俺は父以上に頑張らなければならない。


 そのためにも——!


「おめでとうございます、ヒューバート殿下」

「ぜひ我が娘を第二妃に!」

「いやいや、殿下には爵位の高い第二妃が必要でしょう」

「どうですか、殿下、私の娘は」

「第三妃、第四妃もご検討ください」

「……す、素敵な娘さんばかりですね。さぞ、器量もよいことでしょう。こんな美人な方ばかり、嫁ぎ先には困らないでしょうね」

「そう言わずに!」


 怒涛のように押し寄せる見合い写真。

 [転写]の魔法で作られているんだろうな。

 中には絵師が描いたものもある。

 確かに、みんな美人だけど〜、俺にはレナがいるから〜!

 レナ〜、レナ〜! 助けて〜!


「…………」

「!?」


 も、ものすごく不安そうな顔してる!?

 やだ、まって、そんな顔しないで、俺絶対レナ以外の女の子を第二妃とか第三妃になんてしないから!

 浮気は絶対しないし、一生レナ一筋で生きていくって決めてるし!

 確かに写真や絵の子たち本当に美人だけど、俺にとってのナンバー1はレナだしオンリーワンだから!

 あ、もちろん今はレナの容姿だけじゃなくて中身も込み込みで好きだよ!?

 優しいだけじゃなく頑張り屋で努力家で、そのせいでちょっと無理しちゃうところは心配だけど……ジェラルドと一緒にたくさんの人を助けて幸せそうにしてるところとか、俺まで嬉しくなっちゃう。

 そんなレナの笑顔を、ずっと隣で見ていたい。


「だから嫌いにならないで、レナ!」

「っう〜〜〜! も、もう! ヒューバート様! ぜ、全部口から出てるんです! もう、もう!」

「ははは! 第二妃の見合いについては追々、息子が成長してから考えよう。今日の主役は新入生たちでもある。皆、ご子息ご息女の入学を存分に祝ってやってほしい」

「は、はい、陛下」

「はははは、ヒューバート殿下は婚約者殿に夢中なのですな」

「仲が大変よろしいようで、結構なことです」


 半分くらいの貴族は嫌味たらしいが、もう半分は本当に微笑ましいものを見る表情。

 頬をかきながら、レナの手を握って昨日のことを思い出す。

 ダンスの練習とも、エスコートとも違う。

 夜の庭を、手を繋いで歩いただけ。

 でも、王子と聖女ではなく、婚約者——恋人として、初めての触れ合いだったわけで。


「ヒューバート殿下、初めまして! 同じく本日入学したサラーラ・モーリンスですわ!」

「ちょっと邪魔よ! わたくしはアメリー・ソーラと申します!」

「退きなさいよ! わたくしはリカ・ペディアスですわ!」

「ヒィッ」

「レナ〜、危ないからこっちにおいでよ〜」

「きゃ、きゃっ」


 父上の方から離れても、今度は同じ新入生の令嬢たちからの攻撃!

 レナと瞬く間に引き離され、レナは転ぶ前にジェラルドが保護してくれた。

 パティが側にいない時は助かるけど、俺が助けたかった……いや、レナが転びそうになってるの俺のせいだけど!

 そして声かけてくるの見事に聖殿派の貴族令嬢ばっかりじゃん!?

 なんなの! 腹の中が透けすぎてていっそオープン!


「ヒューバート様……」

「レナはドンと構えてなきゃダメだよ。少なくとも王妃になるのは君なんだから」

「は、はい、そうですよね。でも、ヒューバート様……」

「あれは諦めよう」


 ジェラルドにアイコンタクトして、レナを遠くへと避難してもらう。

 前世では憧れていた、ハーレムに。

 でも、こんな肉食獣の目をした下心フルオープンのハーレムはイヤダァ!

 しかもこのハニートラップに引っ掛かれば——婚約破棄! 拷問! 結晶化で砕け死ぬ! 国も破滅!

 うわあああああぁ!



 ***



「地獄だった」

「お疲れ様です!」

「お疲れぇ」

「ヒューバート様、今日はもうお休みになられた方がいいのでは……」

「いや、例の試作品を確認してからにするよ。夕飯はレナと食べられないんだよね……」

「はい、女子寮と男子寮なので、食堂は別ですし……」


 しょんぼり。

 パーティーからようやく解放されたあと、俺とジェラルド、レナとパティ、今し方合流してきたランディは研究塔に向かっている。

 実は入学前からジェラルドと進めてきた研究が父に認められ、学院の研究塔のワンフロアを俺たちに与えてもらえたのだ。

 機密保持の結界と魔道具によるセキュリティーが施されたそこは、十階建ての八フロアがあるが、使用されているのは三フロアのみ。

 空きに空きまくってるので、規模が大きくなるのなら二つくらいフロアを使っていいとお許しを得ている。

 いよいよ本格的に計画が動き出しているので、俺のワクワクは止まらない。


「ここだな」

「結構森の中にあるんだねぇ」


 城と貴族街よりは郊外寄りにある学院内の、さらに端の方。

 研究塔はそんな外れにあった。

 今日からここが俺たちの秘密基地なんだと思うと、さっきの地獄も報われる気分——。


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