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愚王とファントム

 

『無論、本気で求婚している。ルレーン国の姫は俺と結婚し、俺と共にソーフトレスとルレーン国を併合したコルテレを治めていくべきだろう。聖女でもあるのだ、ルレーン国の姫は我が妻に相応しい』

「はあ? ずいぶん上から目線で語ってんなあ? だったら、シャルロットのために死ねる覚悟——この俺と戦う覚悟はできてんだろうなぁ?」

『ははは! 何者か知らんが今の俺に勝負を挑むとは愚かな! 俺こそがこのギア・イニーツィオの力を一番上手く使えるのだ! 思い知らせてやる!』


 あ、ああ……盛大にフラグぶっ立てたぞ、アイツ。

 ちょっとあそこまでわかりやすいフラグは俺も久しぶりに見たな……!


「上等だ。じゃあ見せてもら——」

『死ね! 俺に楯突いた“ゴミ”め!』


 ——ちょっと聞いたことのない音が聞こえた。

 金属を貫通した音は聞いたことがあるが、そのあとの音は遠すぎてよく聞こえない。

 数秒後に、ドシーンッという凄まじい音と振動が、俺のところまで響いてきた。


「え、なに!?」

「っ……ファントムが……コックピットを……貫いちゃった……」

「え!」


 俺からはよくわからなかったが、ミレルダ嬢が教えてくれた。

 コルテレ王オズワードが乗る機体の操縦席を、ファントムが貫いたという。

 確かにそのぐらいのこと、ファントムには容易かろう。

 ギア・フィーネの操縦者にすら届く刃を持つ、薄葉甲兵装(ウスハコウヘイソウ)を持つのだ。

 周囲からは凍りついたように静まり返っていた。


「今俺が話してんだろう。勝手に遮ってんじゃねえよ、()()


 心底蔑んだ声色。

 ファントム、まさか、マジでコルテレの王様殺した? まさか?


「まったくシャルロットに求婚したというからどんな男かと思えば、こんなやつのところにシャルロットを嫁がせられるわけがねぇな。死んで人生やり直してこいカス!」

「く、国守様! なにをなさっておられるのですか! オズワード王を、まさか、こ、殺してしまったのでは!」

「戦犯は処刑が鉄板だろ。公開処刑イベントの方がよかったか?」

「そ、そういう問題ではありません! 他国の王を害するなど、許されないことです!」

「はぁ? なに言ってやがる。俺の機体に勝手に乗って『俺こそがこのギア・イニーツィオの力を一番上手く使えるのだ! 思い知らせてやる!』とまで言ったんだぞ。まあ、こういうこと言って本当に使いこなせるやつ99%存在しねぇけど」


 確かに俺もそのセリフ言って本当に使いこなしていた人、前世で某ロボアニメシリーズ初代の主人公しか見たことない。

 そして多分ファントムの言う残りの1%って自分のことだろうな。


「戦うってことは生きるか死ぬかだ。そこに身分も許しも存在しない。俺を罰すると言うのならそれでもいいだろう。——殺せるのなら殺してみな。その代わり、俺は強いぞ」

「っ」


 遠くてよくわからないが、薄葉甲兵装(ウスハコウヘイソウ)を纏ったファントムは冗談抜きで強い。

 ギア・フィーネでもギア3以上が必要。

 多分一国の軍隊が剣と魔法を駆使しても倒すことはできない。

 剣と魔法で倒すのなら、シズフさんがディアスぐらい強くないと多分無理。


「…………。ミレルダ嬢、とりあえずオズワード王の生死の確認をお願いしてください」

「あ、う、うん」

「もし、死んでいたのならばこの場で『オズワード王は開戦の責任を負って、自害した』ということにした方がいいでしょう。他の二機に乗る者も、抵抗するようならこちらで制圧します。投降するよう呼びかけを」

「わかったよ」

「あ、操縦席を開くだけにして、ご遺体の確認はコルテレの人にやってもらってくださいね。シャルロット様やあなたにご遺体を見せるのは忍びない」

「……お心遣い、感謝するよ。見ないよう気をつけるね」


 ミレルダ嬢が俺の後ろからいなくなる気配。

 ファントムの目的が、シャルロット様に求婚したオズワード王の意思の確認だとしたらとんだ茶番からの大惨事なんだが……ファントムからしてみれば大事な戦友の子孫への求婚……黙ってられなかったのかもしれない。

 俺もたとえばジェラルドかランディが側にいない時、二人の娘さんにどこの馬の骨ともわからんやつが声かけてきたらしばく自信がある。

 なるほど、これはファントムが正しい。

 だからこそ、常識を当てはめてここでファントムを敵に回すのは得策ではない。

 あの男は千年前でさえ世界中を敵に回していたのだ。

 科学力も衰退した現代の一国軍など、相手にもならないだろう。

 コルテレには耐えてもらわねばならない。


「……オズワード王に間違いありません」

「これは、即死だな」

「よもやルレーン国の国守様へ喧嘩を売って即死とは……」

「レーナ姫になんと申し上げればよいのか」

「これはレーナ姫が成人するのを待って戴冠していただく他ないだろうか?」

「いや——」


「っていう話をしているね」

「そのレーナ姫とやらを俺の側室に〜的な話になったら断ってください」

「わかっているよ」


 遠すぎて俺に聞こえない会話はナルミさんに教えてもらう。

 なんとなくコルテレの偉い人たちの会話から不穏なものを感じたので、しっかり釘は刺しておきたい。

 残念ながらオズワード王は即死。死亡したそうだ。

 この場を丸く治めるために、オズワード王に戦争の責任を全部被せるのが一番平和的……。




小ネタ


ヒューバート「ギア・フィーネの登録者で一番怒らせたら怖いな、ファントム」

ファントム「そうかぁ? 俺はディアス・ロスが一番怒らせると怖いと思う」

ディアス「俺? ラウトではないのか?」

ラウト「俺もディアスだと思う」

シズフ「俺もディアス・ロスだと思う」

デュレオ「俺もロス家の坊ちゃんは怒らせたくないな」

ナルミ「ディアスは怒らせたらダメだねぇ」

ディアス「なぜ!」

ヒューバート「そもそもディアスって怒るんですか?」

ディアス「怒ったりするのは苦手だな」

ファントム・ラウト・デュレオ・ナルミ「「「「だからだよ」」」」

シズフ「ヒューバート・ルオートニスとラウト・セレンテージは本気で怒られないから大丈夫だ」

ヒューバート「???」

ラウト「なんで俺までその枠なんだ!」

シズフ「本気で怒られそうなファントムとデュレオとナルミは気をつけた方がいいと思う」

ファントム「うっせーよ!」

デュレオ「うるさいわ!」

ナルミ「そんなヘマしないよー」

ディアス「???」

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