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side ジェラルド(1)

 

「ラル坊、オレは殿下の指示通り近隣の村や町に避難指示を出してくる。避難先は王都でいいんですかね、シャルロット姫」

「はい! よろしくお願いします!」

「シャルロット様、本当に王都でいいんですか?」

「はい。わたくしとミレルダで、王都を中心に大規模結界を張ります。そのあとミレルダとともに、ジェラルド様はヒューバート様のところへお戻りください。心苦しいですが、引き続きこの国を守るためにお力をお借りしたいのです」

「それは、もちろんいいですけど」


 トニスと離れ、シャルロットとミレルダを乗せたままの地尖(チセン)をルレーン国の王都郊外に走らせる。

 見えてきたのは美しい丘だ。

 ゆっくりと上り坂が続き、その先に城がある。

 まるで教会のような姿の城の城壁を、ジェラルドは魔法を使って飛び越えた。


「これは、[飛行]の魔法!?」

「時間がないからごめんね」

「この質量を一瞬で浮かせるなんて……」


 なぜかミレルダが悔しそうな表情をするが、そのまま城下町に着地してもう一度[飛行]で屋根の上を駆け抜ける。

 そのまま上へ、とシャルロットが指差した方角は、城の屋根の上だ。


「ミレルダ!」

「了解だよ! シャルロット!」


 中央の最も高い塔の屋根の上に着地する。

 頷き合った二人の聖女が手を組んで目を閉じ、一息吸い込んで唇を開いた。


「見て」

「ちゃんと見て」

「「私たちの姿を、目を、心を」」

「見て」

「ちゃんと見て」

「「まだ出会っていなくても、私たちは知っている」」


 それは二人の歌声が重なり合い、相乗効果で広がる凄まじい結界の出現。

 光の輪が幾重にも幾重にも空から広大な土地を囲んでいく。

 ジェラルドでも見たことのない、まさに奇跡の御技。

 思わず口を開いて空を見上げた。

 二人の聖女の歌声で、結界はどんどん広がっていく。

 これよりもまだ、さらに。


「はぁ、はぁ……これで、新たに入ってくることは、ない、はずです……」

「次は中に入った晶魔獣を倒さなきゃ……!」

「二人とも、魔力は大丈夫なの?」

「使い果たしましたが、やるべきことはまだあります。早くヒューバート様たちのところへ戻らなければなりません。ジェラルド様、中庭へ向かってください」

「え、地尖(チセン)に乗ったままで?」

「それで構いません!」


 シャルロットの指示に従い、城の中庭へと[飛行]で向かう。

 数名の兵が駆け寄ってきたが、外部への音声でミレルダが牽制してくれた。

 庭を荒らさないよう着地すると、シャルロットが操縦席から飛び出す。


「ジェラルド様もいらしてください」

「は、はい」

「……」


 ミレルダには睨まれたが、二人の聖女の護衛は自分の役目だろう。

 地尖(チセン)に[隠遁]魔法をかけてとりあえずは見えなくして、ズンズン進むシャルロットのあとをミレルダとともについていく。

 歩きながら左右のおさげを後ろに括りあげたシャルロットは、薄いピンク色の薔薇の石畳の上に立つとその上に手を置いた。

 なにをするのかと思えば床から『プリンセスの生態データと一致を確認。承認しました』という電子音。

 がこん、と音が鳴り、薔薇の石畳が一度下にずれるとシャルロットが石畳からどける。

 すると、薔薇の石畳が右にずれてそこから階段が現れた。


「っ、隠し通路……」

「さあ、早く参りましょう」

「ぼくも行っていいのですか?」

「国守様——ファントムはきっと、あなたに三号機を託したいと思っていると思います。だからどうか手伝っていただきたいのです。ファントムと対等に“技術”の話をしていたあなたなら、ファントムの言っていたことがわかると思うので」

「ど、どういうことですか?」


 わけがわからず、思わずミレルダを見ると「三号機はボクが乗りたいのに」と唇を尖らせるのみ。

 よくわからないまま地下へと降りていく。

 入り口が閉まっていくのに不安を拭えないけれど、杖は手放すことはない。

 ヒューバートのところへ戻りたいのは、ジェラルドも同じ。


「これです」

「!」

「ジェラルド様、あなたはなにかわかりますか? これを動かすために必要なものが」


 あまりにも大きな穴。

 そしてそれは機械でびっしりと埋まっている。

 下には大きな歯車が、無数に重なり合う。


「もしかして、これが軸発電機……?」

「はい。ファントムは同調率が高く、この軸発電機を動かした者になら三号機は乗りこなせるだろうとおっしゃっていました。ミレルダは見ただけで『無理』と諦めてしまったんですが」

「だって無理だよこんなの。使い方全然教えてくれないし」


 それでしきりに直接交渉をしていたのか。

 しかしファントムはそれを許さず、この設備の起動を行える同調率の高い者を探していた——ということのようだ、

 確かに、この施設が本格始動しなければ、三号機はどのみち動かせないだろう。

 そしてこの施設のことは、国家機密。

 口に出すことを三人ともしなかった。

 それなのに、シャルロットはジェラルドをこの場に連れてきた——その意味。


「……いいんですか? 三号機は、この国の護りそのもののはずなのに」

「ふふ、ジェラルド様も真面目な方ですわね。ヒューバート様にも申し上げましたが、我が国には言い伝えがありますの。『いつかギア・フィーネが世界に再び求められる時代が来るだろう。その時、ギア・フィーネは自ら主人を選び出す。その者を見極め、どうか守ってほしい——』と。ですから……あなた自身で示していただけるのなら、わたくしたちはそれを運命として受け入れます」

「っ……」




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