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招待

 

 今日、シャルロット様がコルテレの東の結界を強化しに行ったのだって、晶魔獣の侵入を防ぐためだ。

 晶魔獣は未だに脅威のまま。


「そんなことを言われてもわからん」

「俺も悪魔だなんだと言われてきたが、力に無責任な神の方がよほど害悪なように思うな」

「ぐっ」

「まあ、人間が神になる——そもそも神ってなんだろうな? 体はそのままに見えるがそうでもないのか? 身長は伸びてるように見えねぇしなぁ」

「身長の話はやめろと言っている……!」


 本当に性格が悪すぎる。


「ファントム……お前が生身の人体に興味を持つとは……」

「ない。一切興味ない。ギア・フィーネの影響で変化した登録者には興味はあるが別に貴様と同じカテゴリの興味はこれっぽっちも抱いていない」

「そう言うな! 医学もまた興味深いジャンルだぞ! お前ほどの知的好奇心に溢れた人材が医学に興味を持ってくれたならば、医学の進歩に多大な貢献をしてくれることだろう!」

「ない! 本ッッッッ当に一切興味ない! 話しかけるな!」


 ゆらり、と俺の横から立ち上がったと思ったら、一瞬でラウトの横に立つファントムのところへ移動してグイグイ勧誘し始めるディアス。

 インテリ陽キャ怖。


「くっ! そ、そうだ。さっき壊した四号機の修復! 特別にこの俺自らやってやろうじゃねぇか無料(タダ)で!」


 逃げ道にされたー!?


「それなら五号機の整備もさせてやってもいいぞ」

「あ?」

「興味があるだろう? 神鎧化したギア・フィーネ」

「…………。ふぅん。それならついでに一号機もチェックさせろ。千年経ってりゃどこかしらおかしなところもあるかもしれないしな。あと、お前ら絶対まともに機体の整備してないだろう」

「「「…………」」」


 ギア・フィーネだと思って、全然そういうのは、はい、してないです。

 そして当然、そういうのが専門ではないラウトとディアスも思い切り顔を背けた。

 ラウトが時々五号機を整備してるのは見てたけど、あくまでも操縦者がやる簡易なもの。

 まともな整備、と言われると……。


「本当は全部一度バラして進化した点とか徹底的に調べ上げたいところだが、二、三日でどうにかなるものでもないし簡単なチェックと整備だけだな」

「もしかして、ご招待するのかい?」

「うちのお姫様が許すのならな」

「まあ、もちろんご招待に異論ございませんわ! ヒューバート様をこのままテントに寝かせておくのは、心苦しく思っておりましたもの! さすがに怒られるかと思いましたが、国守様がそうおっしゃるのなら遠慮はいりませんでしたわね!」

「遠慮はしろ?」


 急に立ち上がるシャルロット様。

 なにやら三人にしかわからない話をしているが、なぜだろう、変に嫌な予感を感じる。

 左手を掲げたファントムが、ニヤリと歯を見せて笑む。


「!」


 無詠唱で広範囲結界を展開し、ゴーグルの青い光が点滅すると、空間がずれ始めた。

 いや、ちょっと冗談じゃないぐらいに広範囲結界の広さが凄まじいぞ、なんだこれ!?


「っ……可動式人型量子演算処理のヒューマノイド体のくせに、これほど大規模な魔法を無詠唱で使うなんて——!」

「お前が作った量産型と違って俺が作って、カスタマイズしたオーダーメイドなんだ。あったり前だろうが!」


 そういえばナルミさんは魔法が非常に苦手だ。

 脳の処理を情報収集に使っているから、魔法まで手が回らないとか言っていた。

 そもそも、人工物のヒューマノイドは魔力を使うための器として不具合が多い。

 現代人の体を“加工”すれば、そうでもないとか恐ろしいこと言ってたけど……。

 だが、ファントムはそうじゃない。

 さすがに奇妙だ、と目を凝らすと両手首にしたブレスレットが光って空気中の魔力を急速に取り込んでいる。

 魔導具?

 でも、あんな強力な……いや、そもそも“体内魔力”ではなく“結晶魔石(クリステルストーン)の魔力”を使う魔導具なんて初めて見たぞ……!?

 結晶魔石(クリステルストーン)の魔力容量以上の魔力を使っている。

 あんなの、ありえない……!


「あ……!」


 夜だから暗い、とかではない、闇が降りてくる。

 ジェラルドに頼んで支えてもらいながら、はためくテントから出るととんでもないものが広野に現れた。

 真っ白な、空飛ぶ船。

 地面にゆっくりと着地すると、扉が現れて階段が降りてくる。

 まさかとは思うんだが、まさかとは、思うんだが——!


「エアーフリートではないか! 持ってきていたのか!?」

「ルレーン国の姫が徒歩で旅するわけねぇだろ、馬鹿かよ」

「……な、なるほど」


 口が悪い!

 いくらなんでもそれはひどい!

 ディアスに謝って!

 ……けど、これが伝説のギア・フィーネ運用戦艦『エアーフリート』。


「皆様をご招待いたしますわ。どうぞごゆっくりなさって」

「きっとすっごくびっくりするよ! 腰抜かさないでね!」

「ドヤってるところ申し訳ないけど、わたしとディアスは入ったことあるんだよね」

「「え!」」


 ああ、ナルミさんはミシアが瓦解した時に、シズフさんに救出されてエアーフリートに保護されたって言ってたな。

 ディアスも、反乱の時に登録者になってすぐ、行く宛がない時に助けられたって。

 ラウトの方は、難しい顔をしている。



小ネタ(千年前)


アーセル「アベルト、飯の時間だぞ。また機械いじりしてるのかよ」

アベルト「機械いじりじゃなくて整備だよ。自分のギア・フィーネぐらい、自分で整備できるようになりたいし」

ラグゼル「えー、でもこんなの専門家でもわけわかんないんだろー? いくら機械科専攻のアベルトでも無理じゃねーの?」

アベルト「いや! 絶対覚える! そんで、ザードに認めてもらうんだ! 登録者としても、メカニックとしても!」

アーセル「でもザードってプログラミングもできるじゃん」

ラグゼル「アベルト、プログラミングは苦手じゃん」

アベルト「うっ! でも、そっちも覚える! だいたい同い年だなんて聞いたら負けられない。口と性格以外全部完璧なんて、なんかこう、なんか一つくらい勝ちたいっ!」

アーセル「料理の腕は圧勝じゃん」

アベルト「そういうのじゃなくて! 男として? 顔とか声とかはもう遺伝子レベルで負けてる自信があるし、身長は今から伸びるとも思えないし……じゃあもう技術しかないじゃん! 仕事面でさ、絶対追いついてやるんだぁ!」

アーセル(あらぁ〜、アベルトってば)

ラグゼル(男の子だねぇ)

ザード「その前に操縦覚えろ。転ぶな。明後日の方向に走り去るな。味方に抱きついてきて動きを封じるな」

アベルト「……う……は、はい……」


※全員同い年

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