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魔王

 

「それより——ラウト、お前神鎧に到達してなんか変わったのか?」

「特段変化はないような気もするが、権能が権能として理解できるのは不可思議な感覚だな」

「結晶病の権能か。お前自身で操作できないのか?」

「千年前に使った時のものは無理だな。自分のものとは違うような、そんな感じがする。思い通りにできない」

「ふーん」


 本当はあまりラウトが結晶化した大地(クリステルエリア)の結晶病を操作できない件は、大っぴらに話すべきではない。

 ここにはシャルロット様とミレルダ嬢もいるし。

 けど、かつてザード・コアブロシアだったファントムなら、結晶化した大地(クリステルエリア)の結晶病のことを解決する糸口を、見出せるかもしれない。

 目を閉じて盗み聞きしていると、「シズフは?」ともう一人の神鎧に至った人物のことを聞く。


「シズフ・エフォロンはまだ権能が現れていないと思う」

「それは、多分おかしい」

「おかしい?」

「神鎧を纏うに至った時に、権能も発動していると思う。それがギア5の“効果”のはずだ」

「!」


 ギアを上げた時に起こる、機体効果のことか?

 確かギア1は機体の機能の全向上。

 ギア2、出力全向上。

 ギア3、機体全体に光の線が走り、周辺機械類へ影響を及ぼす。主に停止、阻害、故障、異常反応など。

 ギア4、機体の自己再生が可能となる。機体の背後に光の翼のようなマントのようなものが現れ、周辺機械類を完全支配下に置く。

 ギア5、登録者が神格化。

 ……そのギア5の、効果。

 発現してない方が変。なるほど。


「つまり——シズフ・エフォロンがそれに一切気づいていないということか」

「あり得そうで腹立つな」


 というか、そうだろうなぁ。

 シズフさんだし……。


「しかし、ラウトの権能の規模を考えると、シズフにも同等レベルの権能が現れていても不思議ではないということだよね? それなら、我々にもわかりそうなものではない?」


 この声はナルミさん。

 まあ、それはそうだな?

 しかし、世界に変わったところはないように思う。


「もしくは、まだ気づかれていないだけ——かもな」

「気づかれていない?」

「権能は一種の概念だ。世界に新しい概念が生まれて、それが常識になっている。……多分“魔法”もそうだ」

「え……」


 魔法!

 魔法もこの世界に根づいた、新しい概念?

 あれ? でも魔法は、リーンズ先輩が八百年前に『魔王』からもたらされたって聞いたんだが?


「そいつだろ」

「む?」

「ディアス?」


 ファントムが指差したのはディアス。

 俺も思わず目を開けて、ベッドの隣に座るディアスを見上げてしまった。

 テントの中の視線が、ディアスに集中する。


「俺は魔法を学んだ身だが」

「いや、時期的にお前しかいない。八百年前に生存していて、結晶化した大地(クリステルエリア)で眠りにもついていない、ギア・フィーネの登録者」

「い、いや。しかし俺は当時の記憶がないぞ? それに、神格化はしているがギア・フィーネはギア4だ」

「だったら半分神格化して、半分は人間だったんだろう。そうじゃなきゃ千年生き続けるなんて無理だ。いわゆる半神半人ってやつだろうな」

「半神半人」


 ほあ、なんて情けのない声を出すが、確かにディアスは初めて会った時から規格外だった。

 あの時からすでに人間離れしていたけれど、半神半人だったのなら納得する。


「記憶がないのも、ラウトの覚醒時と同じだろ」

「「む」」

「おそらく半分覚醒したから、無意識に世界に干渉していたんだ。世界の伝承に残る『魔王』は間違いなくお前だよ。というか、消去法でお前しかいない」

「む、むう……そう言われても……。だとしたら、俺の権能は“魔法”なのか?」

「そうだろうな」


 わ、わおう……。

 なんかとんでもないことが発覚した瞬間に立ち会ってしまったのでは……?

 ディアスが『魔王』!

 この世界に魔法をもたらした、ある意味世界を今の形に導いた者。

 まあね! 確かに『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』のタイトル回収だわ!

 だってしっかり『魔王』って出てるもんね! タイトルに!

 でも、俺の前世のイメージとはかけ離れている。

『魔法の王』で『魔王』って感じ。

 ……うん、それなら、ディアスらしいかも。


「全然実感がない」

「自分の力に実感ない神しかいねぇのやべーな世界」


 う、うん、やべーな。

 シズフさんの権能もすでに発現して、世界に影響を及ぼしているはずなのだ。

 けれど、それがなんなのか……まだ誰もわからない。

 ちょっと帰国したらちゃんと調べた方がいいですねぇ!


「ちなみにファントムから見て、晶魔獣になにか意見はある?」

「晶魔獣? ……お前の権能関係じゃねぇの?」

「俺では晶魔獣は作り出せない」

「……。マジ? でもあれ、間違いなくなにかの権能で生み出されてるよな? どういうことだ?」

「わからん」

「お前の権能を勝手に使って——誰かが晶魔獣という厄災を造り出しているってことになるぞ」


 ぞわっ、とした。

 ラウトの権能を、何者かが悪用している……?

 そんなことできるものなのか?



小ネタ


ジェラルド「ご先祖様はラウトとディアスさんのこと好き?」

ヒューバート(ジェラルドー!? 直球すぎないー!?)

ファントム「は? 嫌い」

ヒューバート(直球の血筋なの!?)

ジェラルド「ヒューバートの前の四号機の登録者の人とは仲良しだったのに?」

ファントム「は? 別にアベルトと仲良しなわけじゃねーよふざけんな。そもそもアイツは料理以外特筆すべきところとか全然なくてむしろヤツのせいで俺は色々危険に晒されまくったんだぞ。敵に囲まれる中突然操作ミスで抱きつかれて身動き取れなくなった時なんて、さすがの俺でもやられたかと思うわ。野郎の我儘のせいで何度も面倒な橋を渡る羽目になったし、ケーキ作れなかったら捨ててる」

ジェラルド「へー、四号機の登録者さんケーキ作れたんだ〜! すごいね!」

ファントム「ケーキは美味かったな」

ヒューバート(ど、独特な感性×2……)


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