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VSファントム(2)

 

「……俺だって……」


 羨ましいって思うよ。

 ディアスも、ラウトも、シズフさんも、みんな強いんだもん。

 もちろん三人のあの強さが、悲しいことや理不尽なものが山のように築き上がった上を歩いてきた結果なんだろうというのは、わかってる。

 結晶化津波をたった三機で抑え込んだようなものなんだ。

 それを間近で見て、同じギア・フィーネシリーズの登録者なのに情けないと思ったよ。

 俺ができて、アベルト・ザグレブにできなかったことってなんだよ?

 わからんよ、そんなの。

 でも俺は死にたくない。

 あれに当たれば死ぬ。


「負けるわけには、いかない!」


 ギア2。

 モニターの端に上がったギアが表示された。

 途端に目の前がぐらつく。

 でも、今の……イノセント・ゼロなら——!


『ダメだ、ヒューバート! 今の君では!』

『なんでお前みたいな雑魚が、アイツの見たかった世界にいる!? 納得いかねぇんだよ!』


 四号機の登録者が、見たかった世界……?


「…………」


 ギア・フィーネ同士が手を取り合って、争いのない平和な世界を守る。

 顔を上げた。

 なんだ、今の、頭の中に浮かんだイメージは。

 あれがそうなのか?

 あれが……。


「お、俺だって、た……戦う覚悟なら……もう、とっくに……できてる!」

『!』


 石晶巨兵(クォーツドール)が戦争に利用されるのなら、俺はイノセント・ゼロの力を用いて潰す。

 それで守ると、あの日、レナの歌で石晶巨兵(クォーツドール)結晶化した大地(クリステルエリア)を浄化した時に決めたんだ。

 それを示せと言うのなら、やってやろうじゃないか!


『その気になるのが遅ぇと言っている! 舐めんなよ雑魚!』

「っ——!」


 今ギア2に上がった。

 だからより感覚が鋭くなったのを感じる。

 けど、たとえギアが上がっても、格が違いすぎた。

 そもそも実力の桁が違う。

 放たれた[ライオットサンダーアロー]を避け、ファントムへと突っ込んだら、ワイヤーを左手首部分にかけられて思い切り地面へ向かってぶん投げられた。

 マジかよ!

 しかもそのワイヤー、しっかり切断機能ついてる!

 イノセント・ゼロの左手が切り落とされた!


「うがあっ!」


 そして背中が地面に思い切り叩きつけられる。

 衝撃が操縦席にも届く。

 痛みに呻いている間に、操縦席を二本の刃が貫いた。

 両腕の刃で操縦席を貫こうとしてきたのか!

 ギリギリ、刃先だけが操縦席のモニターを破壊して引き抜かれていく。

 ……ギアが1のまま、操縦席の装甲が、もっと弱かったら——。


「…………っ」


 わかってたはずなのに、ギア2に上がっても手も足も出ない。

 これが千年前の世界で、他のギア・フィーネシリーズに一度も中破すら許さなかった『最強』!

 この人が三号機に乗れば、ディアスやラウトやシズフさんすら「無理」と言う。

 そんな相手に、俺は……!

 でも!


『ザード・コアブロシア!』

『チッ!』

「!」


 ビームがイノセント・ゼロの上を通過する。

 ギリギリでこちらに破損のない距離。

 ファントムだけを狙い撃った?

 それに今の声は、ディアス!?


『どういうつもりだ! お前がヒューバートを害するのなら、俺も黙ってはいない!』

『過保護がもう一人。……さすがに一号機を相手にするのは分が悪いな』


 地面に倒れたイノセント・ゼロを跨ぎ、オールドミラーを周囲に浮遊させたまま怒りを叫ぶディアス。

 俺を、守ろうとしてくれている。

 あ、やば……。


「ちが、ディアス、俺が……自力のギア上げができないから……ぶっ」

『ヒューバート!』


 頭が痛い。

 意識が、ブツブツと……これは……同調障害の症状。

 ああ、ま、また……。




 ***




「またぶっ倒れたのかぁ……」


 目が覚めたら夜!

 テントの中!

 息もしづらいし、鼻血だしたな、これ。


「自力のギア上げなどでここまで無理をする必要はなかろうて」

「うわ、面倒くせ。ちょっとどついただけで過保護すぎ」

「お前もなぜ止めない、ラウト」

「自力のギア上げ不足ならした方がいいと思った」

「脳筋だからねぇ、ラウトも」


 つけ加えるナルミさん。

 確かに。ラウトもシズフさんも脳筋だよね。


「ギア・フィーネに登録者の体調に影響を与える機能があったなんて……」

「心配していただきありがとうございます……でも大丈夫ですよ、シャルロット様。よい経験になりました……」

「ど、どうぞお休みになってください、ヒューバート様」


 両の鼻にティッシュ詰めてるところを、これほどの美少女に見下ろされる俺の気持ちよ……。

 震える〜〜〜〜。

 ディアスも激おこだしね。

 いや、ディアスは俺をフルボッコにしたファントムに対して怒ってるんだけど。

 ……優しい。


「でもまあ、通常時の同調率が16%に上がったし、効果はあったんじゃね?」


 地味すぎる上昇率……。

 なんか命懸けでやってその効果は泣けるんですが……?


「ご先祖様、ヒューバートがギアを上げた時の同調率はどのくらいなんですか?」

「ギア1の基準はおそらく50%」

「え」


 ジェラルドがこそ、と聞いた答えに、俺の方が声を出してしまった。

 ギア1が? 同調率50%……? マ?


「ギア2が65%、ギア3が80%、ギア4が90%。ギア5が100%だと思う。多分な。検証していないが、そこの雑魚がギアを1と2に上げた時の数値は予想通りだった」

「……つ、通常時の同調率と、差がありすぎるんですが……」

「だから今ぶっ倒れてんだろ。なに言ってんだ雑魚」


 …………納得☆


小ネタ


ファントム「つっても登録者一年で未だ鼻血出すのはガチで初めて見た。アベルトでさえ半年で出なくなったぞ」

ヒューバート「!?」

ジェラルド「アベルトさんが具合悪くなってた時は、ご先祖様が介抱してあげてたんですかぁ〜?」

ヒューバート「!?(それ聞く!? さすがジェラルド!)」

ファントム「…………。そうだな、色々興味深かったな……」ニチャァ

ヒューバート(絶対治療と称して観察されてるじゃんんん!)

ジェラルド「本当に仲良かったんですねぇ」

ヒューバート「ジェラルド!?」

ディアス(本当に、丸め込まれそうで心配だな)

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