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VSファントム(1)

 

「オラオラ! さっさと乗れ雑魚!」

「本当に口悪いなぁ! わかりましたよもおおお!」


 聞きしに勝る性格・態度・口の悪さ!

 イノセント・ゼロに乗り込んで起動させると、モニターが360度全体を映し出す。

 そこで見えたのは眼前に白銀の鎧がゆっくり浮上してくるところ。


『——データ未登録の薄葉甲兵装(ウスハコウヘイソウ)を確認。長距離砲、ライフル銃、近接戦闘用の四肢白刃。近接および長距離狙撃タイプと想定』

「あ、ああ、勝てると思う? イノセント・ゼロ」

『現状、戦闘能力が測れないけれど、ヒューバートがギア2を使いこなせれば勝利の可能性は68%』

「っ」


 勝てる確率はそれでようやく半分ちょっと。

 薄葉甲兵装(ウスハコウヘイソウ)というだけでその数値かよ。

 中身が三号機の登録者だった人なら、と聞くと『ギア3ならば』と返答が返ってきた。

 勝ち目なくていっそ笑うんだが。


『もし、ザード・コアブロシアなら』

「ん」

『今のヒューバートでは絶対に勝てない。君が殺すつもりで挑んでも無理。ザードは強い。アベルトが知っている登録者の中では、誰よりも。身も心もなにもかも。アベルトが言っていた。強くて憧れる。でも、だからこそもっと頼ってほしかったって』

「っ……」


 四号機の登録者、アベルト・ザグレブ。

 彼が憧れた、最強の登録者……!


「殺す気……」

『殺す気で戦った方がいい。どうやっても、ヒューバートでは殺せない』

「わかった」


 イノセント・ゼロにここまで言われてしまうのは切ないものがあるが、そのくらいの気持ちで挑まなければ一方的にフルボッコにされるんだろう。

 なら、掴んで鎧をぶち壊せば!


「はっ!」


 手のひらを浮かぶファントムへ向けると、さらりと腕沿いに避けられ接近された。

 目にも止まらない。

 その上、右肩のフレームを左足の白刃で真っ二つにされた。

 慌てて左手で捕まえようとするが、それも簡単に避けられる。

 は、速……はやすぎないか!


『おい、舐めてんのか? ギアも上げないまま俺と戦えるとでも思ってるんだったら——思い知らせるしかねぇなぁ!!』

「ひっ!」


 背中に回り込まれて蹴り飛ばされる。

 こんなに大きさが違うのに、首元を蹴られたせいでモニターが一瞬で砂になった。


『ギアを上げろ! そのための模擬戦だぞ雑魚!』

「ギア、上げ……え、ど、どうやっ……」

『それを体で覚えるんだよ!』


 ガァン!と二度目の衝撃は顎部分。

 からの脳天。

 さらに背中、脇腹、左手首部分をワイヤーで掴まれ、一気に引っ張り下ろされる。

 バランスを勢いよく崩し、そのまま地面に背中を叩きつけられた。


「ぐはぁ!」


 その衝撃は、しっかり操縦席に響いてくる。背中痛ぇー!


「いっ!」


 一瞬目の前のモニターがオンになり、砂は混じるもしっかりと凄まじいスピードで落下してくるファントムが確認できた。

 このスピードでこれは——操縦席が貫かれる!


「ぐっ!」


 身を捻り、両脚の白刃を避けた。

 その時、がち、という不可思議な感覚を覚える。

 これは、多分——


『やっとギア1かよ』


 笑った。

 俺っていうかイノセント・ゼロが避けたせいで、両脚の白刃は壊れたのに。

 そして兜で隠れて見えないはずのその笑みが、あまりに凶悪な気がして背筋がゾワっとした。


『まだまだ舐めてるよなぁ! この俺を相手によぉ!』

「ぐうぅ!」


 距離を、と後ろにジャンプしたのは失敗だった。

 モニターは回復したが、あの人は元々()()()()()()()()()()()()()()

 背中に装備されていたランチャーと思しき装備が外れて、両手に装備されたと思ったら——!


『! 高エネルギー反応感知! 薄葉甲兵装(ウスハコウヘイソウ)専用ビームライフルを模した魔導具だ!』

「嘘だろ!」


 手元に魔法陣が重なっているのが見える。

 マジか!

 千年前の兵器を模した魔導具!

 石晶巨兵(クォーツドール)を作った時から、いつか現れるんじゃないだろうかと思っていたが!


「くうううっっっそー!」


 威力が! パネェ!

 しかも精度がヤバすぎる!

 避けてるはずなのに、二回に一回は当たる!

 いや、一発目は多分誘導!

 俺が回避する先へ、わざと避けやすい方へ撃ってる!

 だから二発目が確実に当たってしまうんだ!

 一度バランスを崩せば、もうただの的だ。

 避けることもできない。


『エネルギーの終わりが、見えない!』

「っ!」


 両腕を揃えてガード体勢を取るが、容赦ない高熱弾の嵐。

 両腕の装甲が保たない。

 魔力がエネルギー源ならそりゃあ無限だろ!


『ッ……弱ぇ! この雑魚が! なぜだ! お前ができてなぜ——アイツができなかった理屈がわからん! ありえねぇんだよ!』

「!?」


 左手を掲げたファントムの、その頭上に現れる魔法陣。

 雷属性、上級魔法[ライオットサンダーアロー]!

 ただ、なにかに対して怒ってる。

 なんで!? 俺なにかした——?

 アイツって……。


「…………」


 四号機の登録者の憧れだった人。

 あの人にとって四号機は、“仲間”の機体。

 なのに、俺みたいな雑魚が次の登録者になったら、そりゃ腹も立つかぁ。


小ネタ


ヒューバート「そういえばそもそも魔法って結晶魔石(クリステルストーン)を杖に装着して、体内の魔力を通さないと魔法陣を描けないから、発動しないはずだよね……? 無詠唱で魔法陣バンバン描く人たちはいったいどーなってんの?」

ファントム「俺の場合は腕輪の魔道具が体内魔力と杖の役割を、両方担っている」

ディアス「一応剣が杖代わりだ。魔法陣は思い浮かべると出るな」

シズフ「なんかよくわからないが使える」

デュレオ「……シズフと俺は体内に聖女と同じく結晶魔石(クリステルストーン)があるから、杖がなくても直接魔力を取り出して展開できるんだよ……」

ラウト「俺は一応ちゃんと杖を使っているぞ」

ヒューバート「ア、ウン……ソッカ……そうだよね……ラウト……」


ほぼほぼ規格外。


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