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ファントム(1)

 

「ヒューバート王子は、世界を救おうと活動してらっしゃる。わたくしたちは——いえ、ルレーン国はヒューバート王子をギア・フィーネ四号機イノセント・ゼロの登録者と認めても、大丈夫だと思っております」

「い、いいのですか?」

「クス……だってキミ、ずっと目をキラキラさせながら石晶巨兵(クォーツドール)っていう魔導具の説明してるんだもん。警戒してたボクたちが、なんだか馬鹿みたいに思えてきたよ。ね」

「ええ」

「え……」


 ミレルダ嬢がそう言うと、二人の聖女は声を出して笑い出す。

 お、おおぉう?


「ヒューバート王子は信頼に足るお方だと思います。それに、この石晶巨兵(クォーツドール)……()()()もきっと興味津々だと思いますわ」

「あの方?」

「はい。ご紹介しますわね」


 と、シャルロット王女が後方の木の上へ手を上げる。

 すると、その木の上からガサと人影が落ちてきた。

 え、俺の[索敵]にまったく反応がない!

 トニスのおっさんがよく使う、[隠遁]魔法か!


「だから言ったでしょう? ヒューバート王子は大丈夫ですよ」

「ごめんなさい、トニス様。わたくしも不要だと言ったのですが……」

「ダメだよ。ソーフトレスとコルテレは戦争中なんだ。そんな中で異国から人が来るなんて怪しすぎる。……気を悪くしたらごめんなさい。でも、ボクたちはシャルロットを守らなければいけなかったんだ」

「あ、ああ、そういうことか。いや、当たり前だと思うよ」


 暗がりから歩み寄ってくるのは、二人と同じように足下までマントで覆われた男。

 確かに女の二人旅は危険すぎるもんな。

 むしろ護衛の男がいるのは当たり前だろう。

 おっさんも知ってて黙ってたみたいだし、つまり俺は合格っこと?

 ハァーーー、生きた心地はしないけど、仕方ない。


「……」

「? ディアス?」


 だが、安堵の溜息を吐いた俺と違ってディアスとナルミさんの空気はさっきより冷ややか。

 なんならディアスは俺と聖女たちの間に割って入り、剣の柄に手をかけた。

 表情も、見たことがないほど険しいんだが?

 ナルミさんもいつもの妖しい笑みがない。

 え、なに?

 ディアスが剣を構えたのは——ラウト以来だな?


「ほう……やはり貴様らにはわかるか」

「その声……しかしどういうことだ? 貴様は死んだはずだが?」

「というか、その器……可動式人型量子演算処理ヒューマノイドじゃないか。どういうこと? これを完成させたのは、ワタシだけのはずですけど? いや、そんなことは()()に言っても無駄でしょうけど……まさかお前みたいなやつが、一国の守護神に収まってたとは言いませんよね?」

「え? え? ディアス? ナルミさん?」

「……ファントム? あの、こちらの方々とお知り合いなのですか?」


 俺たちだけでなく、シャルロット王女とミレルダ嬢も困惑。

 この三人、顔見知り?

 っていうか、ディアスとナルミさんが知り合いって、千年前の——関係者ってことでは!?


「ああ、お前らは“守護神”っていう形で現世に留まっているんだったか? まあ、今更神のふりをしてもな。俺はただの亡霊だ、気にするな。俺のことはファントムとでも呼べばいい」

「っ」


 フードをあっさりと取る男。

 でも、その顔の上半分は、青い光の線が走るSFモノに出てくるようなゴーグルに覆われている。

 藍染色の髪とナルミさんみたいな妖しい笑みと、耳が死にそうな声……この声、俺も聞き覚えがあるぞ。

 一度聞いたら忘れられない——この声は!


「さ、三号機の、登録者の声……?」

「…………。……へぇ……?」


 俺の呟きに、男は一瞬笑みを消した。

 しかし、すぐににったりと笑う。

 ゾワッと背筋が薄寒いモノに襲われる。

 え、なんだ、これ。

 こんな感覚初めてだ。

 デュレオが[精神誘導]を使っていた時とは違う……なんだ!?


「なかなか勘のいい坊主だ。いいぜ、お前らにはきちんと自己紹介しておいてやろう。可動式人型量子演算処理戦闘型ヒューマノイドの器に、三号機登録者『ザード・コアブロシア』の人格データをダウンロードして稼働している。活動理由はギア・フィーネ三号機の新たな登録者を探すこと。故に俺のことは“ファントム”と呼べ」


 ゴーグルは外さないまま、胸に手を当てた男が“自己紹介”してくれる。

 だが、あまりにも情報過多すぎる!

 可動式人型量子演算処理戦闘型ヒューマノイド!?

 ナルミさんと同じだけど、戦闘型!?

 それに三号機の登録者の人格データをダウンロードしたってことは、実質三号機の登録者じゃん!

 いや、それもだけど……。


「……三号機の……登録者捜し!? な、なんでそんなこと!」

「四号機が起動して、飛び去っていったんだ。登録者を見つけたと考えるのが自然だろう? ならばルレーン国の国守(くにもり)として、三号機の登録者を早急に新しく据えたい。ヒューマノイド体ではGF電波を受信できないからな」

「なっ……」


 しれっとマントの下からスナイパーライフルを取り出し、肩に担ぐ“ファントム”。

 あ、なるほど?

 木の上に隠れて、万が一俺たちと交渉が失敗した時はあれで撃ち抜かれてたんですね?

 じゃ、なくて!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回の章題に悪魔の亡霊とあったのでザード出てくるだろうなあ、と思っていたのですがやっぱりそうですね。
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