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合流(1)

 

「えいせい」

『へいき……って? なに?』


 名前からしてヤバい。

 ヤバいのだが、ジェラルドは首を傾げる。

 まあ、これが普通の反応だよね。

 俺は前世の漫画とかアニメでなんとなく知ってる。


『衛星兵器は上空……今、雲が見えるところよりもさらに上に、建物ほどある兵器が逆さまに浮かんで地上を狙い撃ちしてくる——超広範囲の破壊兵器だ』

『え、そ、それってラウトのギア・フィーネみたいな……?』

『俺のブレイクナイトゼロのチャージ120%級だな』


 いや、衛星兵器と同等なのもヤバくない?

 こっわ……。


『ヤ、ヤバくない……? ヒューバート』

「あぁ、どうしよう……使われたら間違いなく戦況はコルテレに傾くよな?」

『そうだろうが……? 千年前、ザードが宇宙側からロックがかけたから、地上からの操作は受けつけないのではないだろうか?』

『ああ、何者かにロックをかけられたと聞いたが、ザード・コアブロシアがやったのか。では地上からロックを解除するのは難しいだろうな』

「ザード・コアブロシア……三号機の人か」


『神の手を持つ悪魔』と呼ばれた、三号機の登録者は天才メカニック。

 プログラマーとしても超一流で、その地力(じりき)の高さにギア・フィーネの機械支配能力が加わり、正しく『悪魔』のようだったという。

 その人が宇宙にある衛星兵器を、直接蛇口の元栓を閉めるように停止させているため、地上からの操作は受けつけないようになっているはず……らしい。

 それじゃあ大丈夫、かな?


「シズフさんがコンピューターウイルス『クイーン』も、ワクチンで消滅させたと言ってましたけど……それなら大丈夫ということですかね?」

『おそらく。ザードは“クイーン”が衛生兵器に侵入しないようにと、宇宙に上って直接遮断したはずだからな』

「なるほど……」


 確かに『クイーン』の悪名と悪行は凄まじかったようだ。

 そんなコンピューターウイルスが衛星兵器に侵入して、好き放題できるようになったとしたら……。

 ウッワァ……考えただけで地獄。

 むしろ、世界的にはトドメかもしれない。


「じゃあ、放置しても大丈夫、ですかね?」

『おそらく。……不安なら調べておくか? お前たちは先に例の聖女たちと合流し、保護するといい』

「え、ラウト、いいの?」


 話を聞くと怖い。

 ラウトが調べておいてくれるのなら、不安は減る。

 いや、別な不安はあるけど。


「その代わり山の基地を爆発させたり、ギア・フィーネで爆破したり、爆散させたり、蒸発させたり……人が死ぬようなのはなしでお願いしたい」

『チッ』


 舌打ちィ!


『わかった。ただし——衛星兵器の起動に手を出していたらそれなりの処置は行うぞ』

「うーん、まあ、うん、ルオートニスに迷惑にならない程度ならいいよ」

『ああ、了解した』

「よろしく! じゃあ俺たちは合流地点に行こう」


 この場はラウトに任せることにして、俺とジェラルドとディアスとナルミさんは空へと飛び上がる。

 そして両国の国境にある、小さな湖を目指す。

 トニスのおっさんの情報によると、湖の近くの平原で両国の最前線が睨み合いを続けているらしい。

 そこはもう砦が五つ以上建ち並び、中でも真ん中部分にあるデリセットとオルヴォッドが主な主戦場となっている。

 ただ、双方は元々互いの親族を婚姻させるほどに親密で、戦争が起こったことで互いの親族を人質にされているという。

 ……なお、人質にしているのは“互いの国の王家”なんだってさ。

 つまり親族を人質にして、最前線にいるデリセットとオルヴォッドを戦わせている——というクソのような状況なのだ。

 クソの上塗りである。

 だからデリセットとオルヴォッドの領主たちは、説得したら停戦には賛成してくれそうなんだよなぁ。


「お、あれか」


 小さな湖は、赤い。

 最初「なにあれ」と思った。

 ディアスがすぐに『千年前汚染されたのだろう。あとで水質を調べたい』と目をキラキラさせながら言うとる。

 もうご自由にしていただいて結構でーす。


「と……」


 着地して、ナルミさんの気焔(キエン)も下ろし、ギア・フィーネから降りる。

 すると地尖(チセン)から出てきたジェラルドに「ヒューバート、周りの状況も確認してないのに、降りないでよ!」と叱られてしまった。

 あ、ごめーん。


「でも[索敵]には反応なかったし」

「そういう問題じゃないよぉ!」

「本当にそうだよ。王太子の自覚足りなさすぎるんじゃないんですか?」

「戦時中の国に来ているのだから、慎重になりなさい」

「す、すみませんでしたー」


 くっ、全員に叱られた!

 これが平和ボケ!

 さーせん!


「どうもどうも、ヒューバート王子。いくらオレたちしかいないからって、本当にもう少し気をつけてください」

「あ、おっさん!」

「トニス、息災か?」

「ええ。旦那も来てくださったんですね」


 木の影にいたトニスのおっさんが現れる。

 おっさんはディアスに挨拶すると、「聖女たちは夜に来るそうです」と肩を竦めた。

 じゃあこっちはそれまで情報の擦り合わせだな。


「実際、現場を見てどうだ?」

「よくありませんね。民間の噂程度ですが、両国とも“遺物”探しに躍起になっています。コルテレが山の中でなにか巨大な“遺物”を発見して、それが戦争を勝利に導くのではないか——みたいな話を聞きますね。それで、ソーフトレスは『聖域』に侵入していて聖女殿たちが大層お困りのようですよ。元々両国は聖女殿たちを奪い合って開戦しましたからね」



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― 新着の感想 ―
[一言] 衛星だったんですね。てっきり全部の細菌やバクテリアを殺して生活環境を破壊したりするものかと。
[気になる点] すべて衛生兵器になっています
感想一覧
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