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王宮勉強会(2)

 

 提案自体は魅力的なのだが、その魔法陣誰が開発してどうやって運用すんの?って話だわ。

 ディアスが「では今度企画書を作ってこよう」って相変わらずサラッと言うんだけど、俺の常識が通用しなさすぎて宇宙がずっと頭の側に浮いてるよ。


「そうだな……ひとまず師走の二年生進級試験も受けてからソーフトレスとコルテレに行くか……」

「それがいいわね。そういえば来月にデュレオ様のコンサートを行うとか、企画書が出ていたけれど……」

「ああ、うん。デュレオの歌の力が知りたいのと、純粋に聞いてみたい」

「んん? 母さんにもわかるように説明してくれる?」


 母上としては俺にお茶会を開かせたいのだろう。

 しかし、“美と芸術の神”のお披露目と言われると、それは断りづらいはず。

 聖女と同じ体質なのではないか、という検証も国にとっては重要だ。

 この検証でデュレオの歌が聖女の魔法と同じ効果を発揮したら、まさしく『神』として箔がつく。

 なにより、レナと同等の聖女の魔法を使う者が現れたことになる。

 スヴィア嬢もデュレオの指南で底上げされてはいたが、レナの歌声の威力はやはり他の聖女と桁が違う。

 そのレナでさえ「デュレオ様の歌がすごいです!」と言うのだ。

 世界トップクラスが歌うとなれば、王都の民全体のガス抜きにもなるだろう。

 娯楽は多いに越したことないし、デュレオは「お給金次第で歌う」と言ってるし、三ヶ月ごとにライブしたら結構楽しくない?

 それで“歌”という文化が復活したら、新しい産業にも繋がると思うし、弱りつつある聖殿の聖女たちの立場もまた上がるはずだ。

 聖殿を運営していたやつらはアレだけど、聖女候補はやはり国として育てていきたい貴重な存在だからねー。


「興味深いのね」

「そうそう」

「そう、ね。いいわ。男性が歌うというのも、わたくし興味があります。デュレオ様、本当に美しい殿方よね……。あの黒髪……あんなに美しい漆黒初めて見たわ。吸い込まれそうな黒い瞳も黒曜石のようで素敵だった。声もよく通る、聞き心地のいい声で……あのお声で歌だなんて……想像もつかないわ」

「…………」


 さすが俺の母上。

 面食い&イケボ好き。

 血を感じるなぁ……。

 確かにラウトよりディアス派だったもんね、うちの母上。

 髪と瞳の色が濃い方が好みなのか。

 でも俺は金髪碧眼もいいと思う。

 デュレオはもちろんだけどディアスもラウトもシズフさんも、みんな違った美しさがあって。

 あと、男が歌う文化……そういえば消滅してたんだよね。

 歌は聖女が歌うもの、っていうイメージが定着してしまったのだ。

 イケメンのイケボが歌う曲って、つまり超貴重なんですよ。

 そんなの普通に楽しみじゃん?

 レナがハニュレオで「聴きたい」ってデュレオに言うのも当たり前だよなぁ。


「俺としてはですね」

「ええ?」

「男性が歌を歌う文化を、これから根づかせていけたらと思うんです。デュレオの歌は千年前でも世界中に知られたものだったそうなので」

「まあ」

「きっとその歌声に憧れて、男性が歌うのも人々に受け入れられると思うんです。そういう男性の歌手を増やして、一つの産業にできないかと……」


 母上に顔を近づけ、耳打ちする。

 まあ、周りにデモンドたちがいるので全然内緒話にはなっていないけどさ。

 一応母上に話を通しておけば、今後やりやすくなる。


「産業に? どのような?」

「今回のデュレオのコンサートのようなものを、有料で行うようにするんです。そうですね、女性も、別に聖女でなくとも歌えるようにすればいいんですよ。人気が高まったら有料の会場を提供し、コンサートを開催する者には場所代を払ってもらい、場所代はお客さんからのコンサート料で賄ってもらい、お客さんはその歌手の歌を思う存分堪能できる……みたいな」


 いわゆる芸能である。

 音楽は娯楽として残ってはいるが、それをより発展させたいわけだ。

 デュレオという『美と芸術の神』がいれば、絵画や踊り、観劇などの文化も再び広がるのではないだろうか?

 土地と人口は着実に増えている。

 父上は東と南——セドルコ帝国とは隣接していない方向で、土地が戻っている部分に新たな村を五つも作った。

 これから発展させて町にする予定だという。

 そういうところに歌や踊りや絵画、観劇など、特産物といえばいいのか、町を挙げて発展させる文化があればきっと上手くいくと思うのだ。

 もちろん、それなりの価値になるまで育てなければいけないけれど。


「ま、まあ、提供——たとえばデュレオ様のお歌を心ゆくまで……ということ?」

「そんな感じです」


 俺もそのコンサートめちゃくちゃ楽しみですからね。

 あの男ならば失敗はしないだろう。

 そして話だけなのに母上のこの食いつき。

 やはりライブには力がある。

 投げ銭したくなる、推しへのオタク心!


「コンサートをみてみなければわかりませんが、考えとしては面白そうですね」

「でしょう」

「音楽の文化は民にもまだ残っていますから、普及しやすいかもしれません。民の娯楽を増やすのは良い考えですもの。期待していますよ、ヒューバート」

「はい」


 デュレオへのお給金、弾もう。



小ネタ〜アスメジスア基国の闇(後編)〜


ヒューバート「小ネタを三回に分けてる時点でもう小ネタじゃない気はするけど、自分の子どもを捨てる、みたいなの本当に歴代の王様がみんなしてたの?」

ディアス「まさか。ほとんどは家を与えて養父母を用意し、普通の生活を送らせていたよ。ただ王の子を後継に指名することはできないし、王は自分の子に名前をつけることはおろか、会うことも共に暮らすことも許されていない。子は爵位なども与えられずに必ず平民に落とされる。法でそう決まっているし、王であってもその法は変えられない。もし王の血筋に関する法に手を加えたい場合は、貴族院の満場一致を勝ち取らねばならない」

ヒューバート「うわぁ……厳しいんですね」

ラウト「王が優秀でも子が無能なことはよくある。ミドレ公国やハニュレオはもろにそれだっただろう? ソレイヴは平民から都市長に成り上がった、稀有な男だ。都市長には王に立候補する権利が与えられるから、本当に父親に復讐したかったのなら立候補すればよかったんだ。そうすれば確実に殺す機会を得られただろうに」

ディアス「リーマルドおじ上を味方にすることもできただろうな。あの人は“王家の血筋”の者にはもれなく甘かったから」

ラウト「……え、お前『黄金竜』をおじ上って呼んでるのか……?」

ディアス「伯父上とリーマルドおじ上は仲が良かったからな。家族ぐるみでつき合いがあった。もう一人のおじのような感じだな」

ラウト「気色悪」

ディアス「なんでだ!?」

ヒューバート(唐突に上流階級味を出すからじゃないかなぁ)


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