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王宮勉強会(1)

 

「か弱いの意味調べ直しておいでよ」

「私はお前みたいに不死じゃないんですよ」

「よく言うよ、ヒューマノイドの私的利用で現に復活してるじゃん。人格データが混同してて完璧って感じじゃないのが、いかにも()()()ケド」

「当たり前ですよ。人格なんて繊細なものを、データ化する技術を確立させたギアンが頭おかしいんです」

「それは全面的に同意するけどさぁ」


 同意するんかい。


「けどまあワタシを戦地へ連れて行くのなら護衛は多めの方がいいですよ。あの国はシズフにとって敵国ですし、デュレオを連れて行くのに不安があるのならシズフとデュレオは置いていきなさい」

「じゃあ、ディアスとラウトを連れて行く感じですね」

「それがいいと思いますよ。と言っても千年経ってますし、ダイグロリアのことはあの二人もよく知らないと思うので、誰を連れて行っても似たようなもんだと思いますけどねぇ」

「ええ……」


 所属していた軍事主要都市以外のことは、基本的にあまり知らないもんなのだろうか?

 まあ、こんだけ広けりゃわからんのも無理ないか?

 俺も前世、隣の学区のこととかさっぱり知らなかったし、そんなもんだろうか。

 一応ラウトとディアスとシズフさんとデュレオに聞いてみてから決めよう。

 シズフさんは——寝てるしねぇー!




 ***




「うっうっ、申し訳ありません、王妃様、ヒューバート様ぁ」

「あぁ、レナ……あなたが忙しいのはよく知っています。追試になってしまったのも仕方ありません。進級試験で追試なんて前代未聞ではありますが、それを合格すれば高等部一年として通ったと認められます。次の二年生への進級試験も頑張りましょうね」

「はうっ! ……はいぃ」

「…………」


 はい、レナとジェラルドが進級試験に落ちました。

 俺は合格したので、このほぼ一年間の授業出席日数不足は政務ということで免除。

 今は二年生への進級試験勉強を、城の一室で母上に見守られながら行っている。

 ジェラルドはディアスがものすごく丁寧におしえているのだが、ディアスが教えるとスルスル覚えていくのでジェラルドは心配ない。元々の地頭がいいもん。

 問題はレナである。


「レナ、そこはこちらの文法を使うんだよ」

「は、はいっ」

「焦ると間違えるから焦らないで大丈夫。君は知識というより焦りからする凡ミスで点数を取り逃がしている方が多い。だから問題を解く時は落ち着いて」

「は、はい!」

「あと力も抜いて」

「はい!」


 ダメかもしれない。

 ナルミさんに教わっているのだが、母上が見ている前のせいかガッチガッチなのだ。

 とはいえ母上としては、俺とレナの結婚話も進めたかったらしい。

 一応卒業してから、というのが今までの共通認識だったのだが、側室打診が三桁をゆうに越え、そろそろ四桁近いと聞かされた。

 宇宙猫である。

 理由を聞けば国内だけでなく、ミドレ公国の王侯貴族からのものが半数。

 多分国内は未婚の令嬢がいる家すべてだろうとのこと。

 なので俺の年上も年下も、なんなら生まれていないけど多分女の子だろうって無茶苦茶な打診まで。

 俺をなんだと思ってるんですか!

 そんな感じで、レナとの結婚を来年に早めようかと思っているのだ。

 側室の打診なので、減るとは思えないけどな。

 少なくとも母上は最近この側室打診のせいで、かなり政務に影響が出てるっぽい。

 専属の女官を増やすと決めたほどだ。

 なので、レナには頑張ってもらわねばならない。

 …………無理そうなんだけど。


「それで、デモンド。肝心のヒューバートの成績はどうなのです?」

「ヒューバート殿下は優秀でらっしゃいますね。師走に二年生への進級試験もございますが、この成績ならば問題はないでしょう。実技の方はミラー君に引けを取りませんよ」


 デモンド先生、それはジェラルドが手加減しているからです。

 ジェラルドが本気を出せば実技試験場所が全壊する。

 ちなみにこのデモンド先生は俺が父上と母上にお願いした、ハニュレオのマロヌ姫付きにする外交官候補。

 デモンド先生以外にも、教員資格のある数名の貴族がこの場にいる。

 俺とレナとジェラルドの勉強を見てもらう名目だが、実質的にハニュレオへの派遣外交官試験だ。

 デモンド先生は母上推しな。


「それにしても、うちのランディが他国の姫の従者を務めるとは驚きです。殿下の信頼をそこまで勝ち取っているとは——」

「ランディは大変優秀で、頼りになりますよ、スティールさん」


 そしてこっちは宰相からの推し。

 スティール・アダムス。

 ランディの兄の一人だ。

 優秀な文官で、俺と父、宰相と思想が近い。

 この人も有力候補……むしろこの人は決まりかなぁ。


「ヒューバート殿下はいつ頃次の国へと立つ予定なのですか?」

「んー、神無月か、霜月には出たかったのだが……」


 新しい書類を何枚か目の前に差し出してきたデモンド先生に質問されるが、ついレナの方を見る。

 いっぱいいっぱいっぽいんだよなぁ。

 やはり来年まで国内に留まって、足元の地固を行うべきだろうか。

 ミドレとの外交が活発化して、国内の様相もかなり様変わりしているはずだし今後はハニュレオとも外交が始まる。

 ディアスが「ハニュレオは距離があるからソーフトレスとコルテレが拠点として使えるようになるまで、転移魔法陣を固定して、そこで人や物資の行き来をしたらいいのではないか?」ってサラッととんでもねぇことを言いおるんだよなぁ。



小ネタ〜アスメジスア基国の闇(中編)〜


ヒューバート「っていうか反乱ってなんで起きたの? 国のなにかが気に入らなかったんだよね?」

ラウト「俺はアスメジスア基国が滅べばそれでよかった。ソレイヴ・キーマも国王——実父を殺せればそれでよかったらしい。ソレイヴの語る大義名分に踊らされた者は哀れだったな」

ヒューバート「めちゃくちゃ笑顔で哀れって」

ディアス「そうか。ソレイヴ・キーマが“名付けられなかった王の子”だったのか」

ラウト「貴様も知らなかったか。まあ、それも当然だろう。選挙王国制を守るために王の子は存在を消される。里子に出されてまともな人生はまず送れない。王の血、貴族の血を引きながら、だ。アスメジスア基国の闇の一欠片。クローディオス王は我が子に対して特に容赦がなかったしな。殺されなかっただけマシだろう」

ディアス「そうだな……」

ヒューバート(思ってた以上に話が重かった……)


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