平凡な顔面の俺の気持ち考えたことありますか?
「生活面も一度整える必要があるよなぁ」
「やること山積みだねぇ〜」
「本当になぁ」
と、話しながら研究塔に行こうとしたら。
「あれ、なんだあの人だかり」
「本当ですね、なんでしょうか?」
生徒がわさっと研究塔を伺うように集まってる。
なんだろう?
地味に嫌な予感がする。
人垣に道を作ってもらって研究塔へ進むと、なーるほどー。
「ナルミの住処とか最悪なんですけどー。もっといい部屋ないのー?」
「地下牢とか? お前でも出られない用のやつあるよ」
「本当にクソ」
「ヒューバート・ルオートニスか」
「あ、えーと……皆さん勢揃いでどうしたんですか?」
デュレオにナルミさんにシズフさん。
ディアスはソードリオ王のところに戻ってるとして……ラウトだけいないな、と思ったら、エドワードと城の騎士団を扱き下ろしてるらしい。可哀想。
ってかこの面々は絵面が強すぎだろ。
顔面宝具で人死が出るわ。
加えて美少女なレナと美少年のジェラルド。
この顔面に囲まれる平凡顔の俺の気持ちも考えてください。
「研究塔に入れようと思ったんだけど、キミの許可を貰ってからの方がいいと思って?」
「なるほど? 別にいいですよ?」
「王子サマさぁ、俺への警戒心なさすぎでしょー。研究塔でしかもこれ、ナルミが造った機密まみれのやつじゃん。そんなのに俺を入れるとか色々やりたい放題だよ?」
「とか言ってますけど、ナルミさん」
「大丈夫ですよ。デュレオには研究塔内で監視がつくようにしますから」
「…………」
とのことだが?
思い切り顔を背けられて、半笑いしてる場合か。
「シズフさんも研究塔に用事があるんですか?」
「ない」
ストレートォ。
「だが二号機はここに収容されたと聞いた」
「あ、はい。騎士団の訓練場では手狭になりましたからね。ギア・フィーネは全部こっちに収容されることになりました」
研究塔はチート建築物なので、許容範囲以上の物量が入るのである。
空間拡張機能っていうんだって。
この機能をもとに[空間倉庫]という魔法が作られたのだから。
「…………」
「な、なにか言いたいことがあるのなら言ってもらっていいですよ……?」
「いや……時代なのだろうと、思って」
どういう意味なの。
シズフさんってなに考えてるのか本当にわからない。
「軍事基地がないから驚いているんですよ」
「軍事基地、ですか?」
「千年前はあるのが当たり前だったからね。どれほど田舎であっても、小さな村にも軍関係の施設があったよ。軍関係の施設があるだけで、国から助成金が出たからね」
「あー、なるほど」
収入源になってたのか。
千年前の情勢を聞く限りだと、世界中が戦争に関わってたっぽいもんなぁ。
アスメジスア基国とカネス・ヴィナティキ帝国は軍事国家だったみたいだし。
「そうして『クイーン』が余計に拡散したんだからお笑い種だけどねー」
「な、なるほどね」
そんな村や田舎町にも軍関係の施設があったから、コンピューターウイルスがガンガン拡散しちまったのね。
「……学生か」
「え? あ、ああ、はい。ルオートニスの貴族学院内なので、学生はいますね」
こちらを見ている学生たち。
すごい目の輝き。
わかる。
俺以外の顔面偏差値エゲツなさすぎるよね……。
俺もあっちからこの美しい顔面の並びを眺めたいなぁ……間近だとちょっと威力が高すぎるよね。
「王子サマは人気者だねぇ。ハニュレオが頭おかしくなったのかと思ってたら、国内人気はそれ以上かぁ」
「当然ですね!」
「うんうん、ヒューバートは色々やったもんね〜」
「色々……そうだ、色々やらなきゃいけないことがあるんだった……。お茶会どうしよう。テストの結果次第では追試になりそうだから、レナとジェラルドの勉強も誰かに見てもらいたいし……」
「「うっ!」」
「結果悪かったのかい? ボクでよければ教えてあげるよ?」
「本当ですか!? ナルミさん!」
ナルミさん、勉強できそう! 助かる!
思わず頭を抱えてたけど、レナとジェラルドが無事に進級できたらそれでいい!
というわけで研究塔に入り、久しぶりにギギと再会。
リーンズ先輩を見たシズフさんが「珍しい装備だな」と一言。
もっと他に言うことない?
「新しい神々ですか。初めまして、アグリット・リーンズと申します」
「シズフ・エフォロンだ」
「俺はデュレオ・ビドロ。……なんで着ぐるみ?」
「ひ、人見知りなんです」
「それにしたって他にも選択肢はあっただろうに」
デュレオがまともなこと突っ込んでる。
もうすっかり慣れたけど、確かにそうだよなぁ。
「ところで俺までルオートニスの守護神にカウントされてるっぽいんだけど、どーゆーことなの? なに? 俺どっちかっていうと邪神じゃない?」
「邪神っぽいけど、父上と母上はデュレオのこと美と芸術の神だと思ってるっぽいよ」
「へ、へー……」
とてもまんざらではなさそう。
どうせ不老不死ならデュレオはルオートニス守護神、美と芸術の神としてカウントしてしまおう。
ナルミさんとシズフさんがいればおとなしそうだし、本人もまんざらじゃないみたいだし。
ラウトという荒神がいるんだから、邪神が一人混じってても問題なかろう。
「いいんじゃない? デュレオも聖女と同じ聖属性魔法が使えるしねぇ」
「え、そうなんですか?」
なんてこともないように言うが、ナルミさん、なかなかに爆弾ぶっ込んできたぞ。
小ネタ
ヒューバート「そういえばギア・フィーネの登録者、時々目が光るのはなぜ?」
ラウト「ギア・フィーネのGF電波と脳波が同調して起こるらしい。右目がギア・フィーネのカメラの色と入れ替わるんだ」
ヒューバート「マジで人間離れするのね」
ラウト「ギア・フィーネとの同調率にもよる。右目の色が同じになっている間は、比較的細かい指示も出せる。ギア2では離れた場所から自分のところへ呼び寄せて、コクピットを開く、とか。ギア3以上になると殴る蹴る、撃つ。ギア4ではギア・フィーネ以外の機械類への干渉。ギア4に到達すると、この能力を搭乗していなくても発揮できる。触れただけで意のままにコンピューターにハッキングしたり、な」
ヒューバート「チートすぎでは?」
ラウト「お前は悪用したりしないだろうから、大丈夫だ」
ヒューバート「あ、悪用したやつがいたの?」
ラウト「ザード・コアブロシアが」
ヒューバート「また三号機の人……」