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テストのあとで

 

「っあー、つっかれたー」


 背筋を伸ばして教室を出る。

 久しぶりの登校は懐かしいよりも疲れる。

 帰国後、父上と母上に報告を行ったが俺の心配は現実のものとなっていたのだ。

 メリリア元妃が何者かの手引きで塔を抜け出し、逃走中。

 もうなんの力もないとはいえ、絶対面倒ごとを引き起こす未来しか見えない。

 それにおそらく手引きした何者かは、セドルコ帝国の暗部だろうとの見解だ。

 やはり帝国はルオートニスの内政に干渉しようとしている。

 俺が出かける時に来た使者たちは、ナルミさんがどうやったんだか知らないが、逆にルオートニス守護神教の信者に仕立てあげて追い返したらしい。

 いや、本当どうやったの?

 怖くて聞けないけどね?

 当然石晶巨兵(クォーツドール)のデータは渡しておらず、メリリア元妃を手引きした者たちにもデータの引き抜きは許していないようだ。

 そもそもルオートニス国内にある設計図は、データディスクという“遺物”に納めてある。

 閲覧するにはパソコンなどの媒体が必要不可欠で、無傷で使えるものは研究塔、あるいはギア・フィーネ内蔵のものぐらい。

 そもそもパソコンを使うのにもなりの知識を持つ考古学者が必要。

 もっというとギギとナルミさんが暗号化して、複雑化しているから解読してデータ出せるやつは変態。

 ミドレ公国も、石晶巨兵(クォーツドール)でしか行き来できないので、うちの国と隣接しているセドルコ帝国がミドレから情報を盗むのも無理。


 ってなわけでセドルコ帝国はルオートニスからなにがなんでも石晶巨兵(クォーツドール)の情報がほしい、というわけである。


 父上曰く、セドルコ帝国の帝位争いでルオートニスの石晶巨兵(クォーツドール)が争点になりつつあるらしい。

 クソ、余計な巻き込み方をしやがる。

 今回の使者は第三皇子エドリッグの差金。

 最近かなり本性を曝け出し始めており、以前トニスのおっさんに聞いた感じとはかなり変わって来ているらしい。

 国民のために、ってのを掲げてるのは第四皇女ステファリーのみ。

 他は殺伐としていて、どいつもこいつも、って感じのようだ。

 とはいえその第四皇女ステファリーも、皇帝になるためには手段を選ぶタイプではないという。

 すでに複数の派閥が武力衝突を起こしており、難民が増えている。

 まあ、ルオートニスには一人とて入れないつもりだそうだ。

 だってスパイとか紛れ込んでるから。絶対。

 非人道的と言われようが、帝国がルオートニスにしてきたことを思えば当たり前。


 頭が痛いことだ。

 次に行く予定のソーフトレスとコルテレも戦時下だというのに。


 そうそう、ソーフトレスとコルテレも情勢が結構わかってきた。

 トニスのおっさん、さすが仕事のできる男。

 どうやらソーフトレスとコルテレの開戦のきっかけは、強力な力を持つ一人の聖女の奪い合いからはじまったらしい。

 その聖女は尊い血筋としてソーフトレス、コルテレ両国が『聖域』と呼ぶ、小さな自治区から現れた。

 両国の民を救いたい、といういかにも聖女らしい理由で、両国の結界を一人で維持していたそうなのだ。

 しかし、両国はその力を自国に独占しようとした。

 現在その聖女は逃げ回りながら結界を維持しており、時折人里に現れては結晶病の治療も行っているらしい。

 いや、お前ら喧嘩してる場合じゃねーだろ!

 ……で、ある。

 クソくだらねぇが、そういうことなら石晶巨兵(クォーツドール)で両国を黙らせることはできるだろう。

 その聖女も保護して、協力してもらえばいい。

 マジクソくだらねー話である。

 だからまあ、想定していたより早めに行けそうなんだよな。

 神無月か、霜月には行こうかな、って思う。


「ヒューバートさま……」

「ヒューバート〜……」

「おつかれ。どうだった?」


 まあ、それは……この偏りの激しい俺の婚約者と幼馴染が無事に試験を突破していたらの話だが。


「知らない問題がいっぱいでした」


 レナ、ダメかもしれない。


「勘で乗り越えた」


 ジェラルドもダメかもしれない。


「あ、あの、ヒューバート様」

「なんだ?」


 クラスメイトの顔を見るのも久しぶり。

 これは平民のクラスメイトだな。


「お茶会は開催されないのですか? その、バイトをしたい子が多いんですが」

「あーーー……お茶会ね……う、うーーーん」


 しまったなぁ、それもあったなぁ。

 母上に「できるだけ毎月開催しなさい」と圧をかけられているが、政務でそれどころではない。

 しかし国内をあまり蔑ろにしすぎてもよくないよな。

 でもランディもいないのに、一ヶ月で準備はしんどい。


「け、検討するよ」

「よろしくお願いします!」


 困った。

 あらゆる方向で困った。


「そういえば最近レナにドレスも贈ってないしなぁ」

「え! あ、わ、わたしは着られればなんでもいいですから! 今までもたくさんいただいていますし!」

「いやいや、男の甲斐性の問題だし、レナだって去年のドレスは丈が合わないだろう? ちゃんと測りにも行きたいよな」

「ヒューバートも背伸びたしね」

「お前もな、ジェラルド」


 ジェラルドもランディも本当にグンって伸びたよなぁ。

 顔立ちも青年って感じになってきている。

 それに比べて俺は……はぁ。



小ネタ


レナ「ヒューバート様、ずいぶん動けるようになっていますね」

ヒューバート「療養期間中、割とゆっくり練習できたからな」

ラウト「は? 動き回る程度のことができるようになったからなんだ? 基礎の基礎だぞ。四号機は近接戦闘型なのだがら、格闘術も学べ。あと、飛行と着地の訓練も欠かすなよ」

レナ「…………」

ヒューバート「……先は長いんだよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 将来的には四号機でかめは◯波ぐらいは出せるかもw
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