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ルオートニスへの帰還

 

 なにが?

 もういいって、お別れは済んだか?って意味?

 お別れは済みましたよ?

 え? それがなに?


「我が意の地へと飛べ。[転移]」

「え」


 ディアスが剣を一振り抜き、地面に向けると白い魔法陣が俺たちだけでなくギア・フィーネも地尖(チセン)も丸ごと消えた。

 ま、待って、これ、まさか大規模転移!?

 ハッとすると見慣れた王都の外!

 うっそだろ!

 この質量を一瞬って!!


「…………」

「なんだ?」

「う、ううん……」


 やはりディアスも“神”と呼ばれるに相応しい桁外れの魔法師だわ。

 今のを見たハニュレオの皆さんの騒めきが、ここまで聞こえるような気さえするぜ。

 [転移]魔法は魔力量もさることながら風属性、土属性、光属性と闇属性と無属性の複合魔法。

 しかもこの質量を運ぶとなると、魔法騎士団の五年分の魔力は使うだろう。

 いやー、化け物だわ〜。

 さすがは神だわ〜。

 拍がつきますねぇー。


「こほん。気を取り直して、シズフさんとデュレオをナルミさんに会わせないとな。そのあとでもいいから、シズフさんには俺の父上と母上に会ってほしい」

「ああ、構わない」

「ナルミかぁ……マジに会いたくないんだけど」

「あとはエドワードの処遇だなぁ。どうしよう」


 学院には連れてけないし、城にもあんまり入れたくないし……むむむ。


「それならしばらく俺に預けろ」

「え、ラウトに?」

「軍隊方式で性根を叩き直してやろう。この国の騎士たちも対人を想定していないせいか弛んでいる。一緒に鍛え直す」

「え」


 いつになくラウトがやる気。

 な、なんで?

 俺としてはエドワードを連れ歩かなくて済むから助かるけど。

 口を開きかけたエドワードの顔が一気に真っ青になったぞ。


「騎士団も? な、なんで?」

「セドルコ帝国から使者が来た話を覚えているか?」

「あ」


 ディアスに言われてハッとする。

 一ヶ月前のことだけど、そういえばあの使者、ナルミさんに丸投げしてそのままだった。

 悪いようにはしてないと思うけど、確かに気にはなる。


「シズフ・エフォロン。貴様もあらかた挨拶が済んだら騎士団の再教育を手伝え。隣国の帝国を想定して鍛え直す」

「帝国か……ルオートニス王国は度々侵略を受けたと聞く」

「あ、は、はい。最近の情勢も、あまりよいものとは聞いてません。世継ぎ争いが激化しているようです」


 だから父上は、セドルコ帝国との国境に壁を建設している。

 トニスのおっさんを先にルオートニスへ帰国させたのも、帝国とメリリアの動向が気になったからだ。

 なにもなければそれでいいのだが。


「へぇー、面白そう。ねえねえ王子様、俺を使いなよ。侵略が怖いなら、俺が帝国を中からそんな暇ないくらいしっちゃかめっちゃかにしてあげるよ?」

「わざわざ手も出したくないんだよなぁー」

「あー、まあ、それはわからんでもないけどね〜」


 デュレオは前科が複数あるので、やろうと思えばできるんだろう。

 でも、こっちから手を出す必要ないだろ。

 というか国境断絶して久しいので、できればこのまま関わり合いになりたくないんだよねー。


「とりあえず目先の学生生活……もとい進学試験だな」

「「う」」

「レナとジェラルドは苦手分野も多いから、復習からしたいし」

「そうだな。そうしようか」


 仕方なさそうに微笑んで、レナとジェラルドの頭を撫でるディアス。

 俺は休んでた間にディアスから勉強を見てもらったので、多分大丈夫だと思うんだけど……レナとジェラルドは偏りがすごいからな……。

 エドワードのことはラウトが鍛え直してくれるようなので手を合わせておこう。色んな意味で。生き延びてくれたまえ。

 シズフさんとデュレオはまずナルミさんのところへ。


「そのあと父上と母上に報告して、明日から学院でテスト受けて、放課後は研究塔行って新型試作機のAIシステム作って、もらってる金属配合をギギに再現してもらって光炎(コウエン)地尖(チセン)影鉄(カゲカネ)気焔(キエン)の装甲を作り直して、うちの国でも金属配合の新しい新型試作機製作に着手して、シズフさんの吐いた結晶魔石(クリステルストーン)も使ってみて……金属配合比率がわかったのはでかいな。スプリンクラーとかも改修できるってことだし、これから作るものにも適応していける」

「レナ」

「はい、ディアスさん! ……ヒューバート様! 石晶巨兵(クォーツドール)のことはリーンズ先輩にひとまず任せて、我々は勉学に励みましょう! また過労で倒れますよ!」

「うわぁ!」


 あれ!? 全部声に出てた!?

 ……確かに、また色々自分一人でやろうとしてしまった。

 頼めるものは振り分けていこう。


「……あ、ありがとう、レナ」

「はい。どういたしまして。さあ、陛下とお妃様に会いに行きましょう、ヒューバート様」

「うん」


 手を差し出されて、その細い指に手を重ねる。

 ふとした時に、レナがまた綺麗になった気がした。

 綺麗で可愛くて優しいレナ。

 あと三年。

 18歳になったら、俺はレナを追放してしまうのだろうか?

 そして、世界中から詰られて結晶化した大地(クリステルエリア)で粉のようになり崩れ落ちる。

 そんな未来は回避したい。

 でもやはり自信がないのだ。

 こんなに色々やってきても、まだ。

 こんなに、俺になくてはならない女性なのに。

 ——もっともっと、環境を変えよう。

 運命の強制力が働かなくなるぐらい、もっと。


 次は、ソーフトレスとコルテレだ。



小ネタ


ヒューバート「それにしてもデュレオは引っ掻き回すのが大好きなんだな」

デュレオ「えー、だって楽しいよー? 信頼し合ってた割に、ちょっと突くとガラガラ関係が拗れてくの。特に目先の欲に弱い人間は、ボロを出すのが早い早い」

ヒューバート「うちの国ではやめてほしい」

デュレオ「そう言わずに上手く使いなよ。セドルコ帝国だっけ? 攻め込まれたら容赦なく俺を帝国に送りな。半年くらいで穴だらけにしてあげるからさぁ」

ヒューバート「そこまでの恨みもないしなぁ!」

ナルミ「その前に聖殿に投入して膿を出し切った方がいいかもね。デュレオは膿みまで美味しく食べちゃうから、聖殿に放り込んでみようか?」

デュレオ「わあ、なんだか美味しそうな響きのする組織だね。食べ応えがありそう♡」

ヒューバート「オーバーキルやめてあげてよぉ!」


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