ハニュレオ国とのこれからを(2)
銃、今の時代だと魔法で代用利くから残ってないんだよなぁ。
だからそのまま残ってて、しかも現役で使われてたから一丁いただいたのだ。
接合部とか駆動部分とかすごい参考になったんだよね。
これでさらに石晶巨兵の動きが滑らかになり、強度が上がる。
結晶化津波の時、光炎をあまり前に出せなかったのは、俺に魔力供給してくれていただけが理由じゃない。
ジェラルドみたいに、紙装甲でも魔力で防御力補強ができるわけではないからだ。
しかしまあ、今後はもう少し硬く、動かしやすくなる。
シズフさんの吐いた結晶魔石も核として使えるかもしれないので、今ハニュレオで建設している石晶巨兵は新型試作機の扱いだ。
設計図は光炎のものを使ったが、外装と中身はまったくの別物となるだろう。
問題は操縦性能。
AIを積んだ操縦操作サポートシステムは研究塔でしか作れないから、ルオートニスに戻ったあとにハニュレオで組み立てている新型に作って持ってこないといけない。
多分それまでは当初の操縦性能よりもギア・フィーネの操縦性能に近くなり、初期の光炎を知ってるランディでも操縦しづらかろう。
「よくはわからぬが、ヒューバート王子の役に立てたならばそれでよい。他にも役立ちそうなものがあれば、どんどん使ってくれて構わぬよ」
「ありがとうございます。しかし、新型開発のためにもそろそろ国に帰らねばと思っております」
「なんと! もう帰られるのか!」
「はい。体も回復しましたし、祖国の研究施設より新型試作機の操縦補佐をする部品を持ってこなければなりません。その時にこの国に滞在する我が国の外交官も連れて参ります」
「うむむ……ヒューバート王子はまた来てくれるのかのう?」
「いえ、国で少し雑務を行い、ソーフトレスとコルテレへ行こうと思っています」
ソーフトレスとコルテレは、現在も交戦状態だと聞いている。
本当なら後回しにしたいところだが、トニスのおっさんに結構大口叩いて行ってもらってるし準備は進めておきたい。
行くの大変そうだからね。
あともう一つ。
「ただまあ、その前に学業の方も疎かにしすぎなので……多少は通っておかねばと思っております……」
「ん? …………おお! そ、そういえばまだエドワードと同じ歳と申しておったな!」
「はい。学生なので……。進級試験も受けなければいけません。本当ですと弥生の月に進級試験があったのですが、色々理由をつけて先延ばしにしていますからね……そろそろ本当に受けなければ留年します」
と、俺が天井を見上げて目を瞑ると浮かんでくるのはレオナルド。
弟と学年が同じになるのは、まずい。
そして目を開けて隣を見ると、レナが顔面蒼白になっている。
……俺はここ一ヶ月ベッドの上で調子のいい時間を見つけては、ディアスに勉強を教わっていたからまだいいが、レナは——見た感じ勉強、してないな?
ジェラルド……も、思い切り顔を背けやがった。
うーーーん! こいつぁ絶対にまずい!
「帰ったら勉強しなければ……」
「うむ……確かに他に示しがつかぬな。引き留めて悪かった。しかし、またいつでも来てほしい」
「はい、それはもちろん」
ということで帰る許可ももらったし、準備が整い次第ルオートニスに帰ろう。
エドワードは……連れて帰らないとダメだよなぁ。
パティとマリヤを運んだ地尖の荷台に一緒に乗せて帰るか。
あとの詳しい条約の詳細は、父上が用意しておいてくれる次に来る文官に任せるとして。
えーと、あとは〜。
「では、五日後に帰ります」
「おお、そんなに早く。あまり大々的な見送りはできそうにないな」
「いえ、そういうのはいいので。ハニュレオの民と津波の復興、石晶巨兵開発に回してください」
割とマジで言ったのだが、食卓の周りを囲んでいた使用人や騎士たちが「おお……」と感嘆の声を漏らす。
俺なんか人を感動させるようなこと言ったぁ!?
もう迂闊に喋れないんですけどー!
***
と、いうわけで五日後。
「本当ならば有力貴族の中からヒューバート王子に側室を、と思って何人か城に呼んでいたのだが」という案の定なことを言い出したソードリオ王に「俺はレナ一筋なので……」と首を横に振り丁寧にお断りをした。
その答えに呼ばれたというご令嬢たちが「素敵……」「婚約者に一途なんて本当に非の打ち所がないわ」「もっと早くにお会いしたかった〜」「カッコいい〜!」と黄色い声が上がるのでちょっとげっそり。
どこの国でもヨイショ系女子って同じようなことしか言わないんだなぁ。
学院に帰ると学院の女子にもまた群がられるのか。
しまった、その現実を忘れていた。
俺なんかにキャーキャー言わなければならない女子諸君、本当に大変だと思うよ。
ジェラルドにずっと一緒にいてもらおう。
「それではまた参ります時はご連絡します」
「ああ、いつでも来てほしい」
「もういいか? ヒューバート」
「? はい? はい。え? なん——」
ソードリオ王とマロヌ姫に握手して、ランディにアイコンタクトで「あとを頼む」とお願いして振り返ると、ディアスが小首を傾げて聞いてきた。
小ネタ〜暇人ヒューバートの療養期間〜
スヴィア「ヒューバート王子、お見舞いに来てあげたわよ」
ヒューバート「わあ、ありがとう、スヴィア嬢。最近どう?」
スヴィア「デュレオに歌関係の知識を教わってるんだけど、ほとんど筋トレと柔軟体操ね」
ヒューバート(なぜ……)
スヴィア「そのあと吐くほど歌わされるの……魔力が空になるまで」
ヒューバート「な、なぜ……」
スヴィア「……聖女の魔法の威力が信じられないほど上がって、効果出まくりで毎日夜に落ち込むの。でも誰もワタシの気持ちをわかってくれない。アイツ、オズなのよ! なんで褒めるの! 確かに効果出まくりだけど!」
ヒューバート「じゃあ筋トレと柔軟体操やめるの?」
スヴィア「お肌の調子もお通じもよくなるし、体重も減ったしめちゃくちゃ寝つきと寝起きがよくなったから続けるわよ! 忌々しい!」
ヒューバート(ものすごく複雑なのは伝わってくるなぁ)