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ハニュレオ国の変化(1)

 

「ダメだ」

「は、はい」

「ディアスさん、ヒューバート様を怒らないでくださいっ」

「怒ってはいない。注意をしている」


 なんだなんだ、とランディとジェラルドが近づいてくる。

 ようやく起きて出歩けるようになったが、ディアスの判断で俺は借りている王城一室から外出禁止になっていた。

 体調はかなり整ってきたし、そろそろハニュレオの石晶巨兵(クォーツドール)開発に参加したいのだが……。


「ヒューバートの拒絶反応は未だかつてないほどに長かった。慎重すぎるぐらいがちょうどいい。相手はギア・フィーネなのだから」

「そ、それはそうかもしれませんけど!」

「いいんだ、レナ。ディアスの言うことはもっともだと思うし」

「ヒューバート様……」


 ただ、面会まで全部お断りされているのが心苦しいのだ。

 レナとスヴィア嬢とマロヌ姫の相手はデュレオ、ソードリオ王の相手はディアス、技術者の相手はジェラルド。

 ラウトとランディとシズフさんはその他雑務と俺の護衛。

 ハニュレオに来てそろそろ一ヶ月ほど経つが、結晶化津波の後始末もほぼほぼ終わり、ハニュレオの技術を取り込んだ石晶巨兵(クォーツドール)製作に取りかかる段階に入ったという。

 そんなの現場で見たくなるのは仕方なくない?

 でもまだ部屋から出るな、と言われているのだ。

 ディアスが過保護すぎなのでは、とジェラルドとレナは言うのだが、ランディとラウトはディアス派。

 デュレオはどうでもいい派。

 俺は出たい欲求と同じぐらい、登録者以外の人間がギア・フィーネに乗ると脳を破壊されて死ぬ話を思い出して葛藤が凄まじい。

 ただ、ディアスとラウトが「様子見を続けろ」と言うので説得力ヤバ、とは思ってる。

 その上シズフさんも「まだ様子を見ていた方がいいと思う」と言っていたので、俺は割と大人しくソファーに座り直すよ。

 登録者全員意見が「様子見推奨」なんだもん、ヤバそうじゃん。

 言うこと聞くべき。

 そんなのわかってる。

 だが、さすがに……飽きた!


「ディアス・ロス、お前はインテリでいくらでも引きこもっていられるからわからんだろうが、一ヶ月近く部屋から出られないことがストレスになる人間もいる。そういう人間が多い故、精神衛生のための施設が宇宙船に造られていたのは医療分野に明るいお前ならば知っているだろう?」

「むっ」


 だがそこに、思いもよらない助っ人が現れた。

 ディアス派のはずのラウト!


「……正直俺も今の城内にヒューバートを歩かせるのは……どうかと思う」

「え?」


 ラウト、ありがとう!

 そう思ったのだがラウトの表情とセリフが不穏。

 待って、待って、もしかして俺の体調以外にもなんか問題ある感じなの!?

 城内なんかヤバいの!? ねぇ!?


「だからせめてソードリオ王とマロヌ姫との晩餐ぐらいには、出席を許したらどうだ?」

「あ、あのー、ラウトさん、レナさん、し、城の中なんかヤバいの……?」

「え? ええと、わたしは別に変なところはないと思いますけれど」

「そうですね」

「うんうん」


 俺の幼馴染と婚約者は「城内問題なし」と言ってますが?

 ラウトを恐る恐る見る。

 いや、ラウトとディアスはめちゃくちゃ渋い顔してるよ!?

 なんならディアスは頭を抱えているよ!?


「異常だろう。ヒューバートは他国の王子だぞ」

「え?」

「拒絶反応が二週間以上続いたのもまずかったな。姿を見せないせいで、噂に尾鰭がついた」

「そうだな。それもまずかったな」

「え? ね、ねぇ待って、本当に待って! 部屋の外マジでどうなってんの!?」


 レナとランディとジェラルドは本気でわからないって顔してるけど、ラウトとディアスは頭抱えてるんだよ!

 一気に外が怖くなってきたんだけど!?


「……噂が落ち着けば問題ないと思って黙っていたが、ソードリオ王とマロヌ姫を反乱軍の侵入部隊から守った勇者——からの神々を率いて結晶化津波を鎮めた英雄……」

「の、上にソードリオ王の病を癒す神を召喚した大英雄——さらに結晶化した大地(クリステルエリア)を治癒する石晶巨兵(クォーツドール)を齎した救世主に、なっている」

「…………ほ、ホギョギョギョギョギョギョ……」

「ヒューバート様!? どうかされたのですか!?」


 レナが心配して背中をさすってくれるが、ど、ど、ど、どえりゃーことになっとるやないけぇーーーーー!?

 思いも寄らなさすぎて変な声出たわ!?

 地味にあながち間違ってないので、否定するのもなんかどこから手を加えていいのやら……!


「そ、それ、この国の貴族になんの得が……?」

「結晶化津波で国土が減ったばかりだったからな。結晶化津波を鎮められるような者が、マロヌ姫の後ろ盾となったのも大きい。そこにきての石晶巨兵(クォーツドール)だ。長い物には巻かれろということだろうな」

「ぅぁぁばばばばばばばばば」


 やはりやりすぎた。

 だけど、じゃあどうしたらよかったの。

 見捨てるなんてできないし、結晶化津波だって俺たちも巻き込まれて死んでたかもしれないし。

 死ぬのはやだし!

 でもまさか、まさかそんな大事になってるなんて。

 俺がきゅ、救世主!?

 とんでもなく、ハードル爆上がりしてらっしゃる……!



小ネタ〜暇人ヒューバートの療養期間〜


ラウト「なにをしている?」

ヒューバート「暇だから自分の飯ぐらい自分で作ろうと思って。俺、よく毒盛られるし料理は覚えておいて損はないかな、って」

ラウト「なるほど」


一週間後


ラウト「なんだそれは?」

ヒューバート「これ? 今日作ったカツ丼用のカツと手打ちうどん。こっちは昨日作った肉じゃがときんぴらごぼうと佃煮の余り。これは三日前に漬け込んだ味玉子と唐揚げの肉。唐揚げは今日揚げちゃおうかと思って」

ラウト(客間の簡易キッチンで作っていい量じゃないだろ)

ヒューバート「ラウト食べる?」

ラウト「いらない」



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― 新着の感想 ―
[一言] 小ネタの料理メニューが飯テロすぎて……(T ^ T)
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