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事後——登録者(1)

 

 ああ、けど、降り立つ白と赤のラインが入ったギア・フィーネ二号機。

 神鎧に進化し、登録者は神格化して人の枠を越える。

 適正反応もないし、ラウトの言う通り地獄絵図が見られたけれども本当の地獄はここからだろうな……。


「ふぅ……」

『ヒューバート様? ヒューバート様!? どうされたのですか!? ヒューバート様!?』

『いかん! ランディ! ヒューバートを機体から引き摺り下ろせ! 急激なギア上げの副反応だ!』

『あ、あのヒューバート様が以前一週間寝込んだあれですか!?』

『えええええ! ヒューバート〜! しっかりしてぇー〜! ぼくが今助けるから!』


 遠のく意識の中、俺の幼馴染たちとディアスの声が通信機の向こう側から響く。

 頭が痛い。

 ちょっと前回と比べ物にならないほど……めちゃくちゃ痛い。

 もう、むり。




 ***




「……二週間……」

「はい、二週間眠っておられました」

「…………二週間……」


 思わず繰り返して呟いちゃう。

 俺、あのあと二週間意識不明だったらしい。

 前回より一週間も長いんですけどおおぉ!

 ベッドの脇に座るレナが、リンゴを器用に剥いてくれる。

 え、あ、ちょ、ま、待って、それはまさか看病のリンゴ……?

 リ、リア充すぎない? 俺が?

 包丁を使ってするする剥いていくレナが女神すぎて眩しいんだが!


「うっ!」

「ヒューバート様、リンゴ剥けましたよ。はい、あーん」

「……え、ま、待って、俺、病み上がりなんだ……そんなレナのかわいさが最大限に発揮された彼女ムーヴとかされたら過剰摂取で死んじゃう……」

「死にません。二週間も点滴で、上手に栄養が摂れていないのですから、まずはリンゴをよく噛んで食べてください。ディアスさんには『食事は粥かすりおろしたリンゴから』と言われています」

「……それでそんなにサイズが小さいの?」


 レナが差し出してきたリンゴは、剥かれたというよりいつの間にやらすごい小さくなっていた。

 早業すぎて見えなかったよ……また料理の腕、上げた?


「お粥もすりおろしリンゴも、わたしが作りますのでご安心くださいね」

「うぶぅ! レナの手作りがハニュレオでも食べられるなんて! 幸せの過剰摂取で死んじゃう!」

「死にませんからっ! んもう!」


 いやいや、レナは俺を舐めている。

 そしてレナは、レナがどれだけ可愛いのか自覚が足りていない。

 俺はレナが可愛いことをすると、レナの可愛さの相乗効果で軽率に死ぬ。

『追放悪役令嬢の旦那様』の主人公が嫁のウインクで死んだが、俺もきっと死ぬぞ。

 キュン死だ、キュン死。


「ちょっといいか?」

「うわぁ!」

「ディ、ディアスさんっ!」


 ノック聞こえた!?

 俺は聞こえなかった!

 しかし、ただ聞こえなかっただけなんだろう。

 少し呆れた表情のディアスが盆の上に薬を何種類か載せて、部屋に入ってきた。


「レナ、ヒューバートはなにか食べたか?」

「は、はい。小さくカットしたリンゴを少し……」

「それでいい。無理して食べさせると胃が驚いてしまう。粥も重湯からの方がいい。若いからすぐに固形物を食べられるようになるだろう」

「はい。では少々席を外しますね、ヒューバート様。重湯を作って参ります」

「う、うん。ありがとう、レナ」

「ヒューバート、ちょっと診せてみろ」

「は、はいっ、よろしくお願いします!」


 まずは目玉の診察、舌と口の奥の診察。

 触診と、耳の中もライトに照らされる。

 目と鼻と耳から血が出たらしいので、その影響の検査。


「頭痛は?」

「今はないです」

「俺もここまで酷い同調障害は見たことがない。一時的とはいえ登録者になって間もないにも関わらず、一気にギア3まで上がったのが原因だろう」

「そうなんですか?」

「他の原因は考えられない。アベルトでさえギア3に上がったのは半年後だったはずだ」

「え、えぇ……」


 俺とラウトが戦い、俺がイノセント・ゼロの登録者になったのが卯月。

 俺の誕生日は水無月で、今は神無月。

 なるほど、たった三ヶ月しか経ってないね。


「んっ!」


 突然鼻に違和感。

 と、思ったらディアスにティッシュを詰め込まれた。


「頭痛以外の症状も重いな」

「鼻血出たんですか?」

「出た。耳と目の方は今は問題なかったが、脳への負担が大きすぎる。最低でも一ヶ月はギア・フィーネに近づかない方がいいな」

「一ヶ月も!?」

「叫ぶんじゃない。頭痛がぶり返すぞ」

「ンム……」


 そうだった。


「かの者を癒せ。[ヒーリング]」

「……あ……楽になった」

「応急処置にしかならない。まだしばらくは安静にするように。そうだな、最低でも一週間はこのままベッドでおとなしくしているように」

「うう、は、はい」


 めちゃくちゃ暇そう!

 と、思うが、鼻血が勝手に出るのは確かに怖。


「し、死んだりは、しないですよね?」

「同調障害で死んだ登録者の話は聞いたことがないが、そもそも脳波にギア・フィーネのGF電波が侵食してくるのだから、脳への負担は計り知れない。脳への損傷は見受けられなかったとはいえ、本来年単位での同調を急速にやったことへの弊害だ。それがどれほど負担かは、身を以て経験しているだろう?」

「うう」


 はいですとも。

 現在進行形でやべーですとも。



小ネタ


レナ「デュレオ様の歌、本当にすごかったです! 同じ“歌い手”のはずなのに、こんなに違うのはなんでですか!」

デュレオ「そんなの君の歌がリリファ・ユン・ルレーンからの借り物だからな決まってるでしょ。君の言葉でも君の願いでもないんだもん。自分の歌を作って歌えば、今よりマシになると思うよ」

レナ「! …………。…………ど、どうやればいいんですか?」

デュレオ「歌詞と曲を自分で作るんだよ」

レナ「っっっ」

ディアス(さては楽譜が読めないタイプだな……?)※正解



なお、古森は歌詞を考える才能が壊滅的な自覚がある。

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