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クリステル・アース

 

 結晶大陸(クリステル・アース)

 大陸の全容は不明。

 なぜなら大陸のほぼ全域が結晶化しているからである。


「現在確認されている国家は我がルオートニス王国を含めて六つ。かつて大国と言われたセドルコ帝国は、属国をすべて結晶化した大地(クリステルエリア)に侵食され、国土面積は我が国と同等になっております。さて、ヒューバート殿下、結晶化した大地(クリステルエリア)とはなんでしょうか?」

「えっと、世界をしんしょくする、けっしょーびょーに呑まれたエリア、です。現在では18エリアに増え、結晶大陸(クリステル・アース)の約七割近くがけっしょーかしています」

「素晴らしい。正確です」


 黒板に描かれた地図は、あまりにもこの世界の詰んでる具合を表してて頭を抱えたくなる。

 隣国の元帝国セドルコ以外は結晶化した大地(クリステルエリア)に侵食され、現在の姿はわからない。

 うちの国と隣接していたミドレ公国とやらは、もううちの国の半分以下の面積。

 多分秋田ぐらいしかないんじゃないか?

 原因不明の結晶化。

 水晶のようなその謎の奇病は、人だけでなくあらゆるものを侵す。

 かつての海も、すでに結晶化に呑まれているという。

 結晶化は髪の毛が伸びる速さで、今も大地を侵食し続けている。

 我が国の国土も、年を追うごとに小さくなっているのだ。

 隣国は土地と物資、食糧を求めて幾度も我が国に侵攻を繰り返しているが、ここ十年は戦争を仕掛けられるだけの物資と食糧の確保が不可能になり、和平を持ちかけてくる始末。

 ミドレより西にあったかつての西方諸国の一部、コルテレ国、ソープトレス国、ハニュユレオ国はどうなっているのかすらわからない。


 そう、この世界——結晶大陸(クリステル・アース)は、ゆっくり死を待つばかりの終末なのだ。


 俺は——香田(こうだ)陽夢浪(ひむろ)は車に轢かれて死んだんだろう。

 客観的に考えてもキックボードに突っ込まれて吹っ飛んだだけでもヤバい。

 最後に見えたの、車のタイヤだったし。

 あのまま頭、轢かれたんだろうな……エグい死に方したな。

 なんで俺、死んだあともこんな死にかけの世界に転生しなきゃならないんだよ。

 死んだあとなんか変な声聞いた気がするけど、内容は全然覚えてないし……交差点にいた人たちの声だったのかも。

 心残りが多すぎて、無念という言葉では片付けられないぐらいあの電動キックボードで歩道走ってた奴には恨みしかないけど……それよりもだ。


 ここ、もしかして俺が最後に読んだ女性向け漫画『救国聖女は浮気王子に捨てられる〜私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした〜』の世界じゃない?


 なんかネット小説から書籍化、コミカライズしたやつで、ヒロインがめちゃくちゃ健気で美少女な聖女様なんだけど平民女と浮気した王子がクソバカのバカバカ過ぎて国外追放されて、結晶化した大地(クリステルエリア)で魔王と呼ばれるデュラハンに拾われ、彼と幸せになる話。

 聖女を追い出したことで結晶化が防げなくなったルオートニス王国は、結晶化に呑まれて消滅。

 王子は国民からも両親からも貴族からも、そりゃあもう酷い目に遭って真っ先に結晶化した大地(クリステルエリア)に放り出されて砕けて死ぬ。

 王子の名前は——ヒューバート・ルオートニス。


 俺じゃん。


「…………」


 ゲロ。


「では殿下、その結晶化を阻む重要な存在があるのは覚えていますね?」

「はい! 聖女様です!」

「その通り。生まれながら体内に結晶魔石を持つ女性——それが聖女様です」


 聖女。

 体内に結晶魔石を持ち生まれてくるレア体質で、結晶化耐性を持つ女性。

 なぜか女性しか結晶化の耐性のある者が生まれてこない。

 体内の魔石の魔力を用いて、国を結晶化から守る結界を張る。

 一応ルオートニス王国以外にも聖女は確認されており、どの国にとっても最重要な存在。

 帝国セドルコはかつて国土や物資や食糧とともに、聖女の存在も略奪しようとした。

 なんなら昔うちの国は帝国に聖女を拉致、誘拐されたりもしてる。

 それほどまでに聖女は重要な存在なのだが、俺が漫画を読んだ時、第一話でヒューバート・ルオートニスは婚約者の聖女、レナ・ヘムズリーに婚約破棄を突きつけ国外追放していた。

 アホでしかない。

 なんで追放しちゃったの?

 漫画の中では「体内に結晶魔石を持つ聖女候補は、他にも聖殿にたくさんいるから」とか言ってたけど『聖女』に認定されるほど結晶化耐性を持つのはレナしかいなかった。

 アホでしかない。

 しかも聖女と聖女候補を擁する聖殿は、反王家。

 簡単に言うと、「聖女を擁する聖殿の方が偉くて権力と金を持つべきだろ、王家要らねーだろ!」って考え方なのだ。

 そんな聖殿にころりと騙されるのがヒューバート・ルオートニス。

 アホでしかない。


 げろ……。


「……ヒューバート王子、顔色があまりよくありませんね。体調が悪いのですか?」

「だ、だいじょうぶです、先生」


 幸いなことに俺、ヒューバート・ルオートニスは現在8歳。

 まだレナと婚約もしていない。

 レナと婚約破棄したのは18歳の時のはずだから、猶予がかなりある。

 国王と王妃は結晶病を発症して早死にしてしまうはずだから、それをなんとかしてレナと婚約しなければ、俺は死ななくて済むし国も結晶化しなくて済むんでは?

 よ、よし!

 やるべきことは決まった!

 まずは両親の体調をとことん管理!

 そしてレナとの婚約をしない!

 これだ!


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